ジャスティス

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邦題「ジャスティス」という作品はDISCASだけでも3件登録されていて、他の2つはアル・パチーノとブルース・ウィリスですから、レビューもそれぞれ18本、38本掲載されているんですが、このＢ．Ｂ．ソーントン主演の「ジャスティス」は六衛門さんというレビュアーさんの短いレビューが1本載っているだけです。私はたいていショップに行って棚を見て歩きながら目に付いた作品を借りるというパターンなんで、他の方のレビューも自分が書くときに初めて参照させて戴くことがほとんどですから上記のことも先ほど分かってかなりビックリしましたね。邦題が同じのが3本もあっていいのか？しかも3つとも原題は「Justice」じゃない。アル・パチーノ版は「And Justice For All」、ブルース・ウィリス版は「Hart's War」、本作は「The　Badge」です。内容的にはアル・パチーノ版が一番邦題にフィットしてるでしょうかね。
他の2作もそれぞれに面白い映画でしたが、本作は不人気にも拘らず私は結構気に入りました。面白さで他2作に遜色無いと思います。何たってB.B.ソーントンがイイです。製作は2002年、「バンディッツ」「バーバー」の直後に撮ったはずですから油の乗り切った頃の作品なのに、何でこんなに不人気なんだろ？共演がパトリシア・アークェットで、ちょっとクセがある女優だからかな？
オハナシはアメリカ南部ルイジアナ州の田舎町で同性愛者（正確には「両」性愛者）が殺され、保安官ダール（ビリー・ボブ）が事件を捜査していく過程を描いたサスペンスなんですが、この「保安官」という役職、西部劇ではお馴染みだけど日本には存在しないし、アメリカでも都市部には公安警察制度が整備されていて、地方の郡部にしか存在しないんで今イチ我々には理解し辛い。要は住民の中から腕っ節の強いヤツが立候補して選挙で選ばれる治安職ですからほとんど「田舎の顔役」なんです。必然的に地方政界の権力者たち（知事、判事、議員など）との癒着も当り前のことで、決して清廉潔白な正義の味方とは言えない胡散臭いイメージが一般的なようです。そういう存在の象徴として「胸に輝く保安官バッジ」がある。この映画の原題「Badge」というのはその意味なんですね。そこを理解してからこの映画を観ると、よくある「刑事もの」とは全然違う面白さが分かるし、主人公ダールの独特な「正義」感の面白さも見えてきます。ダールの父親もかつては保安官で今は飲んだくれの半狂人ですが、「バッジ」への執念だけで生きて来たような一種のモンスターです。ダール自身、そして母親や弟も、その父親の特異な職業の持つ魔力によって破綻した家庭の犠牲者でもある。
そういう主人公の特異なキャラ設定と「事件」の性的異常性、そして政治の暗部に漂う酷薄な匂いがアメリカ「南部」の田舎独特の濃密な空気感の中で織り成す「ムード」がこの映画の魅力だと思います。ミステリー（謎解き）としての面白さは大したこと無い。
ビリー・ボブはハマリ役です。「捜査官」としての正義感や有能さ、「顔役」としての保身欲や品の無さ、「男」の優しさや幼児性、「父親」、「夫」、そして「子」としての家族愛や倫理観など、一人の男の様々な側面をあの一見茫洋とした表情の微妙な変化で演じ分ける演技は素晴らしいと舌を巻きました。名優ですね、このヒトは。パトリシアも私はあまり好みの女優じゃ無いんですが、この作品の彼女は良かったです。華奢な身体つきのようですが、すごいプロポーションしてますねぇ。ビックリです(笑)。
良い映画だと思います。少なくともこのような低評価に甘んじる作品では無いでしょう。

いまいちな作品です。