ルネッサンス

　平沢薫という方が「eiga.com」などに「近未来都市、謎の女を追う男、巨大企業の陰謀と、まんま近未来SFの名作「ブレードランナー」の設定で新たな世界像の創造に挑むという、大胆不敵な企み」というような文章を寄稿していますが、その3点をもって「ブレード・ランナー」のアップデートと言うのはどうでしょう。現在のＳＦの多くが良く似た設定をモチーフにしており、今更「ブレードランナー」を引き合いに出すのには無理があるように思います。逆に言えばその3点以外に類似がありません。

　この映画の一番の特徴はもちろんモノクロームの映像です。なぜモノクロームなのか？という点に関しては様々な理由があるでしょう。
　リアリティあるＣＧを制作する際にはモデリングやモーション以上に質感を出すための「テクスチャー」がとても重要です。そしてこの「テクスチャー」制作にかかる時間が半端ではありません。当然費用も掛かります。しかしハイコントラストのモノクロにすればこの「テクスチャー」の呪縛から開放されるのです。
　そして重要なのはこの映画がアニメーション作品だということです。アニメは実写以上に様々な表現アプローチが可能です。
　クリスチャン・ヴォルクマン監督は「表現主義」という言葉をインタビューで用いています。確かに極度にコントラストを上げて、表情や質感を飛ばし、そうした視覚情報をカットした上で観客に質感や色、感情を感じさせようとする試みは表現主義的と言えるのかもしれません。
　この監督の試みは一定の成果を上げているように思います。私自身はこの映画の随所に色を感じましたし、いくつかのシーンではとても美しいと感じることも出来ました。またこれまでの実写やアニメでは見たことの無いハッとするようなシーンもあり、監督の映像センスの良さを感じます。私は真上から降ってくるシャワーの水の描写に痛く感動しました。

　難点といえばビジュアル的なインパクトが強すぎ、ストーリーに置き去り感を覚える事だろうか。監督の狙いはシンプルなストーリー展開し、その上でビジュアルによって心理や情感を観客に汲み取らせようという狙いだと思うのですが、ストーリーの複雑度が少し中途半端だったのかもしれません。もっとシンプルにしてしまうか、あるいは複雑にしてしまうか。いずれかの方が一般的にはウケは良かったのでしょう。

　ストーリーの素晴らしさに唸る映画もあれば、ひとつのシークエンスの美しさに心を奪われる映画もあります。私はそのどちらに優劣をつけるつもりもありませんし、また明確に分析する能力もありません。
　この映画に関しては監督の映像センスとともに、なにか新しい表現を生み出したいという監督の気概を大いに感じました。こうしたチャンレンジ精神のある映像作家の存在は今後の映画にとっても必要なことだと思います。まだまだ甘い演出部分や「何故そこで色が？」という意味不明な部分もあって荒削りな作品ですが、私自身は大いに愉しみました。

　


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　みみさん、私の方こそDISCAS利用開始当時からレビュー拝見し参考にさせて頂いています。はじめはリナさん、みなさん、そしてみみさんで2文字ＨＮでちょっと混同しそうだったのですが（笑）。そういえばみなさんがお休みしているので寂しいですね。

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本作の世界観は私の生涯BEST「ブレード・ランナー」に酷似してる。(略して)ブレランは、視覚効果の凄さで無く「近未来」と言う世界観が見事に立脚した点が支持された訳で、物語がフィルム・ノアールとか音楽なども秀逸だ。
そのカルト化したブレランに正面から挑戦する作品は意外と少なく、数多の近未来SFでも異彩を放ち続けた。そんな4半世紀に渡って君臨するブレランに、意外な挑戦者が現れた・・・私はアニメ・オタクの友人から「お前に、ピッタリな映画が有るぜ」と促されて劇場に赴いたが、友人の言葉に嘘は無かった。

本来のC.Gとは、アニメーションを実写に近づける事が主眼。しかし昨今は、実写をアニメーションする作品も散見される。これもテクノロジーの先進性が生んだ所作で、表現力の多用途性を目と肌で感じる。
私は本作のチャレンジ精神は大いに評価するし、マットなモノクロームで描かれる新生「ブレラン」はSF好きなら見る価値も有るが、作品が成功したとは言い辛い。

どんなに視覚効果が優れても物語を語らねば、それは映画と言えない。本作は肝心の脚本が単に「ブレラン」の構成を微妙に模様替えしたに過ぎず、其処に新たな作家性は見出せない。
同じPhilip K.Dickの「スキャナー・ダークリー」は、麻薬の幻覚を原作に忠実に表現したいから、ロトスコープなるペインティングを駆使した、つまり必然性も有った。
しかし本作は単にテクノロジーの進化を見せるだけで、其処に高尚なユートピアを得ては居ない。日本のアニメは人物の設定とか物語の奥行き感が、世界に冠たるモノだから支持される。大友克洋や押井守が海外で評価される由縁を考えれば、本作の志は高くは無い。

私は本作を見て「シン・シティ」を思い出したが、モノクロの制限の中で世界観を構築しただけでも一見に値するし、これを劇場で見たインプレッションは鮮烈だった。アニオタの友人は随所で日本のアニメのオマージュを見たと言ったが、細かい点は専門家にお任せしたい(笑)。

但しモノトーンを106分間も見せられると目の弱い方は辛いかも。単に「ブレラン」のオーバー・ライトで終わった脚本を横へ置くなら、それ以外は良く出来てる。パースペクティブを見直し、次の挑戦にも大いに期待したい！滲み出るセンスは素直に評価したい。

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　しばらく観てると、瞼の奥がぐうっと痛くなってくるような映像。これ、暗闇で観たら、目がヘトヘトになるんじゃないかな。

『スキャナー・ダークリー』とは似て非なる技術で描かれた世界。惜しいのは、モーションキャプチャーを使うまでもなく、実写映像のコントラストを最大に高めれば、たいして変わらない映像が出来るんじゃないか？と思ってしまうところだ。　
もちろん、この映像自体を否定はしない。特に背景が図形化され、まるで立体設計図の様な画に変換されるのを観るのは、楽しい。微細な造りのリトグラフを見るようだ。

しかし何より残念なのは、これほど斬新な画面を作ったにも関わらず、ベースになる映像や、ストーリー自体がステロタイプに終わったこと。最後のカラス刑事の決断に、脚本の苦心が集約されているのだろうが、インパクトは弱い。
だいたい、危機感が足りないぞレプカ（っぽい人）。イローナを確保するかどうかで、運命が天国と地獄ほど変わるんだから、もっと必死に追跡せんかい。
ともかく、それぞれのキャラが予想通りの行動をとり、予想通りにストーリーが進む。それゆえ安心感はあるのだが、あまりドキドキはしない。まあ、確かにこの映像で、あまり込み入ったプロットにされたら、キツいかもしれないけど。

ダニエル・クレイグの吹き替えも悪くは無いが、思ったより軽い。案外、小杉十郎太の声の方が合っていると思う。日本の声優のアフレコ技術は、高いなぁ。

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確かに斬新だし、モノクロの世界は「スキャナー・ダークリー」を嫌でも引き合いに
出すしかないが、出来自体はスキャナー・ダークリーの勝ち。
しかもこの斬新は映像はモーション・キャプチャーを使っているらしいが、この映像
だったらモーション・キャプチャー使わなくてもって気がするし。

肝心のストーリーはといえばまぁよくある話。可もなく不可もなくってところか。
この斬新さはクールなのかもしれないけど、目が疲れる。これって単純にそれだけ
で映画としては凄くマイナスだと思うけどね。私には連続鑑賞時間は３０分が限界
でした。

見所は斬新な映像。モノクロの世界。
息をのむほど美しいシーンが随所にちりばめられている。

でもそのモノクロが見にくいことも確か。
あれだけ白黒はっきりコントラストつけなくていいんじゃない？
好みの問題かもしれないが、
墨の濃淡を活かして描く日本の水墨画に対する
しっかりキャンバスに色をのせて描くヨーロッパの油絵のような感じ。
ちょっと疲れた。
民族の気質も表れてるようで興味深いが。。。

内容は「ブレードランナー」よりは「攻殻機動隊」。
生死を扱うテーマ、ディテールに目を移せば、
光学迷彩や擬体化された（詳細はわからなかったが）目など
士郎正宗の影響を感じる。

一見の価値あり。