エド・サリヴァンｐｒｅｓｅｎｔｓ　ザ・ビートルズ

「ビートルズマニア」を自称して４０年になろうとしているが、これほど生き生きと演奏している「動く」彼等を見るのは始めてである。

３０年ほど前に日本テレビで「たった１度の再放送」と銘打って１９６６年の武道館ライブを放映したが、そのときの彼等はコンサート活動を停止する２ヶ月前ということもあり、表情には明らかに疲れが見え、笑顔も社交辞令的なものだった。リンゴなどは終始うつむいて黙々とドラムを叩いているだけで笑顔を見せてのは自分の持ち歌である「アイ・ウォナ・ビー・ユア・マン」を歌い終わった時だけであった。

この６４年と６５年の「エド・サリバンショー」の彼等は文字通りリバプール出身の４人の不良少年達が、世界のトップスターとなった瞬間でその表情は輝くばかりの笑顔で演奏も実に楽しそうに見える。

ジョンのリッケンバッガー、ジョージのカントリージェントルマン、ポールのヘフナー、そしてリンゴのラディックから紡ぎ出されるサウンドに彼等の歌声が重なった時、彼等の上にはもう誰もいなかった。そう、彼等こそがトップスターだったのだ！このＤＶＤを見ればそれは一目瞭然である。

フィルムからビデオテープ、そしてデジタルへとそのメディアは変わってもそこに残る彼等の姿、彼等の演奏は未来へと残るであろう。

ビートルズをリアルタイムで知らない若い人達に一言、あなたたちがが今夢中になっているロックやポップスは全てビートルズから始まったのです。現在のような優れた音響機材が無かった頃に野球場でのライブまでやってのけた彼等は今のアーチストたちの数倍、数十倍のエネルギーがあったのです。ビートルズを無理に好きになれとは言いませんがそのことだけは知っておいてください。

ビートルズのライブ活動の全盛期の演奏と歌が見られ、ファンにとって
感動ものです。最近のＭＴＶの口パクとは違い、実際に演奏して歌って
います。（ジョンレノンはヘルプ！で歌詞を間違えて歌っている）
ただ残念なのは画質があまり良くないことです。だいぶ以前にビデオ
で出た「ビートルズ・ファーストＵＳＡ」の方が上だと思いました。
でも、他の出演者やコマーシャルなども含めてノーカットのため
ビートルズ以外のシーンも結構興味深く見ました。
一つ思ったのは、司会のエドサリバンが、当時の知識人にありがちな
ビートルズを単なるミーハーアイドルとして蔑んだ見方をしているの
ではなく、音楽的才能を持った英国のロックグループとして敬意を
抱いて接していたのが非常に印象的でした。

映画、音楽は欧米より２年位遅れて発売されていたようです。このグループがピークを迎えようとしている頃、世界同時発売になりました。　当時かなり重要なアメリカのテレビニュースでさえ1ヶ月遅れていたそうです。　気軽にワールドカップ観戦にいけなかった時代のお話でスイマセン。

私は洋楽に最初に魅せられたのはエルヴィス・プレスリーだったため、彼等がデビューしたころは、違和感を感じていました。しかし優れたものは、かならず人の心を虜にすると言うことを彼等によって実感しました。この作品は今の時代と比べると音質も映像もかなり劣るなかで、あれだけの存在感をみせているのはロックの世界ではもう現れないのではと思ってしまいます。それとエド・サリバンもいいですね。ポール・マッカートニーはエド・サリバンショーに出演したときのギターを今もライブの時等に使用しているそうですよ。

私が生まれた年の、私が生まれる前月に放送された番組です。

エド・サリヴァン・ショーという番組にビートルズが出たという
事は知っていましたが、これで初めて観る事が出来ました。

いきなりマジシャンが出てきて、ミニミュージカルにモノマネ。
あ、そうか、これってバラエティー番組なんだ、と思い
ビートルズの演奏部分だけでいいか、他はスキップだな、と
思ったのですが、何となく観ているうちにスキップする気には
なりませんでした。とても新鮮な番組に思えたからです。

司会者が次に流れるＣＭの前フリをするというのも新鮮です。
私が物心ついた頃に見た記憶のあるバラエティー番組も、
たしかこんな感じでした。
歌あり、お芝居あり、笑いありのバラエティーだったと
記憶しています。生コマーシャルなんかもありました。
生放送ならではの心地よい緊張感もあって、テレビ番組という
よりも、サーカスを観ているような楽しさがあります。
（「冷水で洗濯が出来る画期的な洗剤ができました！」という
ＣＭも時代を感じさせるもので、懐かしい思いです。）

現在で言うところのバラエティー番組とは全く違うものです。
「バラエティー」という言葉の本来の意味からすると、
このような多種多様な「芸」を楽しめる番組こそバラエティー
ショーの原型なのでしょう。
そして、それぞれの「芸」が本物である事が現在のバラエティー
番組との決定的な違いだと思います。すごい芸のオンパレード。
私は今で言うバラエティー番組というものをほとんど観ません。
日本人向けの、日本語で話している番組になぜ「字幕」が
入るのか理解できませんし、何かというと「ピー」が入る番組
では笑えません。

おそらく、この回の観客のほとんどがビートルズ目的の若い
女性だっただろうと思いますが、マジックやモノマネに大ウケ
しているあたりも、古き良き時代を感じてほのぼのします。
（モノマネの方のネタは私よりも１世代上なのでよく分かり
ませんでしたが分からなくても笑えました。上質な笑いです。）

かく言う私もビートルズ目的でこの作品を観たのですが、
ビートルズ以外の部分でもたっぷり楽しめたので思わぬ拾い物
をした気分です。伝説のバラエティーショーと歴史に名を刻む
のもよく分かる気がします。
ビートルズの演奏については何も書く必要はないでしょう。
観てもらえば分かります。初期ビートルズらしい演奏です。

当時「キリストより有名」だったであろうビートルズがゲスト
で、７２％という驚異的な視聴率を叩き出す放送だったにも
関わらず、ビートルズを他のアトラクションとさほど特別扱い
せず、マジック・お笑い・モノマネなどの多様な娯楽のうちの
一つのアイドル部分として扱っている事が、この番組として、
ビートルズの音楽を本物の「芸」の一つとして扱っている事を
証明しています。

６０年代生まれの方でしたらビートルズにさほど興味がなくても
たっぷり楽しめる、本物のバラエティーショーです。
ちなみに、ビートルズ演奏部分での若い女性ファンのノリが
「後ノリ」（バックビート）ではなく「前ノリ」であるのも
非常に興味深い所です。
（"She Loves You"の拍手が前ノリって想像できますか？）