ロード・オブ・ウォー

何とも後味の悪い作品だと思った。いま現在も南アフリカは内戦が多く行われ、今もイスラエルとレバノンで戦争状態になり今日何人死んだ？何人怪我をした？と言う報道が後を絶たない。イスラエルとレバノンの戦争は停戦の方向に向かいつつあるもののその根底にあるものは根深くそう簡単に決着しそうにない。そんな世界情勢の中、この作品を見てしまった結果、とても後味の悪い、嫌な感じが残ってしまった。特に南アフリカの民族紛争はひどい状況にあり、日々虐殺が続いている。この作品の中にもそんなシーンが度々描かれている。その度にこの作品を見るのをやめようかなとも思ったものだ。でもこの様な商人も実際にいるのだと言うことから目を背けずしっかりと見なければと思い最後まで我慢しながら見たのだが、法に触れずギリギリの灰色の部分を狙って（法の穴を利用して）商売をする主人公ユーリーに同情の念は一切持てなかったし、間違っているという怒りにも似た感情を抑えきれなかった。

後味の悪さを最高潮にしたのはエンディングに表示されるテロップだ。「本作は実際の出来事に基づく」「個人経営も繁盛しているが、最大の武器供給者はアメリカ、イギリス、ロシア、フランス、中国である。この５カ国は国連安保理の常任理事国でもある。」がそれである。ここに戦争や紛争がなくならない原因があるのだと言わんばかりに強烈なインパクトを見るものに与える。ほんの数秒間の表示だけれど・・。これが真実なのだ。この作品で言われなくても軍事に感心のある人ならばこんなことは誰でも知っている。悲しいことだが戦争・紛争が起これば武器商人達が暗躍し沢山の罪もない人々が死んでいく。この作品はそれをキッチリと武器商人の視点から描いている。

映画特有のエンターテイメント性からすればつまらない作品だがメッセージ性はとても強い作品だと思う。主人公ユーリーは実在する武器商人５人を基にキャラ設定されているらしいが、そのユーリーをニコラス・ケイジが見事に演じていた。彼の演技力は素晴らしい。どの作品を見てもそう思う。それだけによりリアルに武器商人の素顔を見れたような気がした。この作品は決して楽しい作品ではない。明るい作品でもなく逆に暗く深い作品だ。映画特有のエンターテイメントを期待するのならば見ない方がいい。絶対に後悔することだろう。

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いや〜〜驚きでした。こんな商売が、真に堂々と、国家規模で行われている、という現実。
映画や小説の世界のお話では、ないというこの怖さ。
実在の商人の実話を基に作られたという、このまるで、冗談でしょと、言えない説得力。
『トゥルーマン・ショー』、『シモーヌ』に共通する、面白くも哀しい世界が、迫って来た気がしました。
インターポール役を演じた、イーサン・ホーク、渋くなってきました。『ガタカ』の頃とは、随分赴きが違ってきています。
ニコラス・ケイジ作品、久々に観ましたが、肩の力が抜けた？と、思える好演をしていました。弟役のジャレッド・レイ、人間の弱さ、良心との闘いに負ける姿を演じ、ちょっと切なかったよ。

家族にも秘密にした、この死の商売、ラストのインターポールの追い込みも、結局は、影の存在に依って保護されてしまう。
銃規制を高らかに叫んでみても、この地球上から、６億丁近い銃が無くなることがない、という恐ろしい現実に心が痛みます。

　まー、皆さん、この映画の内容を忘れてしまうのが早すぎません？　＞ラヴァーズさん、パープルローズさん

　では思い出していただきましょう。
　
　この映画はウクライナからの移民ユーリー・オルロフの回想によって展開するブラックユーモアたっぷりのアクションドラマ。エンタメ的にはたいへん優れている。アンドリュー・ニコル監督のセンスのよさがこのアクション映画のスタイリッシュな演出にも存分に発揮されている。

　ユーリーの独白で進むこの映画、観客はついつい彼に感情同化してしまうだろう。彼が扱う武器はヤクザの抗争用のちゃちなものではない。戦争に使用する兵器だ。国家間の闇取引にも深く関わるような仕事で巨利を得るとんでもない悪徳商人なのだが、スピーディでコミカルな展開についつい映画の世界に引き込まれ、気が付いたらこの悪徳商人に肩入れしてしまう気持ちになっているから困る。

　悪徳密輸商人ユーリーを追いかけるのがインターポールのバレンタイン刑事。この正義感に溢れるバレンタイン刑事が鬱陶しくて仕方ない。どう考えても悪者はユーリーで、それを取り締まるバレンタイン刑事は正義の味方なんだけれど、観客の気持ちは逆だ。このしつこい刑事め、いい加減に諦めな、と思えてきてしまうのだ。大泥棒ルパン3世に肩入れするファンの気分か。
　
　ところがそのユーリーが売った武器によってアフリカの貧しい国では内戦が激化し、罪のない子ども達が虐殺されていく。「自由の国リベリア」の大統領と「お友達」になったユーリーは、残虐非道な大統領親子の要求のままに武器を売るのだ。この親子が信じられないぐらい戯画的な極悪人で、この映画はとにかくキャラクターがはっきりしすぎるぐらいはっきりとわかりやすい。

　夫の仕事に無関で贅沢な生活を楽しむ妻エヴァ、難民を虐殺する武器を売ることに良心の呵責を覚える弟ヴィタリー、正義に燃えるバレンタイン刑事、「金のためじゃない、才能なんだ」と開き直るユーリー、気にくわない者達を平気で殺す「革命国家」の独裁者、ソ連崩壊後のモラルハザードを地でいくようなユーリーの親戚将軍、彼らに与えられた人物像も役目も実に明確で、だからこそ見ていて痛快爽快にわかりやすく、まったく退屈しない。

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強烈な衝撃は無いものの、ジワジワと効いて来るそのテーマはなかなかに考えさせられる内容でした。

この作品の監督と脚本はアンドリュー・ニコル。彼は「ガタカ」で遺伝子操作の危うさを描き、「トゥルーマン・ショー」などではメディアによる情報操作を独特のユーモアを盛り込んで表現してみせました。これまで彼が携わってきた作品は、設定がこれから起こりうる近未来的な発想が多かったのですが、今回は現代社会に視点を集約させています。一見、荒唐無稽に思えるテーマも彼の手に掛かれば真実味が増してきます。

さて、そんな彼が手がけた今回のテーマは「死の売人」。武器商人の世界を調べ上げ、一人の男の物語に仕立てました。
武器商人を扱った映画自体、私には大変めずらしくショッキングな内容を想像していたのですが、ショッキングな題材を扱っている割には肯定も、否定もせず、絶妙のバランスを保っています。そのバランス感覚は「シンプル」という言葉に変換されて物足りないと思われる方もおられるかと思います。

では、こうしてはどうでしょう。世界の軍需部門で15位以内にある企業が日本に存在する事はご存知でしょうか？その会社で、この部門にお勤めの方はニコラス・ケイジ扮する主人公と同じく「人殺しの道具」を販売している考えを常日頃からお持ちではないと思います。あくまでも、戦車は自動車。戦闘機は飛行機。このように「商売道具」として扱っていると私は思うのです。武器商人といえば、冷酷、無慈悲な人間と思われるでしょうが、すぐ隣にいる血の通った一（イチ）、営業マンに過ぎないのです。この様に考えると武器商人が特殊な人たちとして成立しているとは言い切れないのです。

そして、この主人公は国連常任理事国の下請け、つまり個人投資家であるというラストが待ち受けています。政治力は大きく、彼らは使い捨て、つまり利用価値のある人材を表舞台に放ち、その裏では肥えて、その挙句、吐き出す物と言えば、どこかの国で行われている「官から民へ」の腑に落ちない構造がいつの間にか出来上がっていくのです。

主人公は巨万の富を築きあげますが、手に入れているものは実は何もないのです。こう考えると、傷つき、命を落とした人間の怒りの矛先は決して姿を表すことの無い巨大な「彼ら」であり、また、彼らをつくり上げているのも我々と同じ人間なのです。皮肉ですね。

映画って何を求めるかによって評価がわかれますよね。
これはそれのいい例では？

個人的にはとても面白かったです。
この面白いという言葉が曲者ですが(笑)
エンターテイメント的な面白さではなく確実にひとつの
世界を映像で描ききってます。
しかも普通の人間がもつ戦争というイメージの裏の世界を。
実際問題、アメリカは戦争特需ってやつで数々の経済復興を
行ってきているわけで。
でもおおっぴらに武器を輸出などできるわけがない。
となればこういうブローカーが存在するわけです。

こういう世界を知ることによって初めて平和などを語れる
ような気もした作品です。

観終わった後は、言葉で表現できないような気持ちになりました。一度、観て損のない作品だと思います。