砂と霧の家

全体の進行が、なんとなく重苦しい気がします。皆がそれぞれに悩みや問題をかかえているのは、いつの時代でも自分たちもそうなのだろうけど、そしてハッピーエンドでない終わり方も現実にはそういうケースが多いのだろうけど、娯楽として見る映画ではどうなのかな？問題提起型の作品かな？俺は、見終わって、気持ちが晴れ晴れとするようなものが、個人的には好きなので（グリーンマイルはそうじゃないのに素晴らしい作品だと思う）この作品の終わり方は好きじゃないです。移民に対する人種差別とか偏見というのは、日本人にはあまり現実感がないというのももあるかもしれない。でも、それなりに見応えはあって、見て損をしたと思う作品ではないです。

悲しすぎる映画でした。
どうしてそういう結果になってしまうのか。。。
家族を思うが為に購入した家が、不幸の元になってしまうなんて。。。
歩み寄ろうとしたのに、それさえも壊れてしまう。
これを観終った後は、悲しくなるかもしれません。
落ち込んでいる時は観ない方がいいと思います。

「なんでそうなっちゃうの!?」が観終わった後の第一声。
キャシーの怠惰とプライド、ベラーニ一家の見栄とその過去、レスターの無鉄砲さ、行政の融通のきかなさ…等、この悲劇を作るにはたくさんの要因が必要なのに、その要因が全て重なってしまったということ。
それが最悪の結末を招いてしまうんです…。

家を奪われてしまうのも、全部キャシーのせいじゃん！　とはじめは思い（いや、実際にそうなんだけれど）、とにかくキャシーが疎ましくて仕方がなかった。
でも、ストーリーが進むにつれて、キャシーだけが悪い…という考えではなくなりました。
かと言って、ベラーニ一家が悪いという考え方でもなく、行政が悪いという考えでもなくなったんです。
つまり「この人達は、いくつかの不幸な要因が重なってしまって、このような状況に陥ってしまった不幸な人達なんだ…」と。「誰かが悪い！」とか、私の中ではそういう次元の話じゃなくなってしまったんです。
誰かに責任をなすりつけることは確かに簡単で、このストーリーの事件の発端は、間違いなくキャシーにあるわけで…。
でも、彼女だけを責めることが、正論ではないという風に感じました。

しかし、この映画の出演陣、すばらしい演技を見せてくれています。
ベン・キングスレーはやはりすごい貫禄を感じましたし、
ジェニファー・コネリーは、私個人の意見としては、アカデミー賞を受賞した『ビューティフル・マインド』よりも印象に残る演技をしてたんじゃないかなと思います。
ショーレ・アグダシュルーも、アカデミー賞にノミネートされたのも納得の存在感でした。
彼らの演技を観るだけでも、一見の価値ありの映画ですね。

最後になりましたが、私がこのストーリーの中で最も憤りを覚える人物は、キャシーではなく、キャシーに惚れるレスター。
ちょっと困ってる美人（キャシー）がいるからって、すぐに惚れちゃって、自分の子どもも奥さんもほっぽりだして、彼女の元へ走り、すんごい単細胞な考えからしょうもない行動ばっかりしやがるんだから（怒）。
っていうか、そんな短時間でキャシーに惚れてしまうという、レスターの考え方には「アナタの脳みそは下半身にあるのですか？」と言いたくなるほど！
彼さえいなければ、ストーリーはもうちょっと丸く収まることができた気がしますが、どうでしょうか？

非常に重厚なヒューマンドラマです。昨年のアカデミー賞でベン・キングスレーが主演男優賞、イラン人女優のショーレー・アグダジュルー(とっても変わった名前で、こういう発音なのかどうかわかりませんが）が助演女優賞にノミネートされただけあって、演技もみごたえがあります。
父の遺産である家を手違いで立ち退かされてしまったキャシー（ジェニファー・コネリー）と、その家を競売で落札したイラン人のもと軍人ベラーニ（ベン・キングスレー）。キャシーはなんとしても家を取り返そうと奮闘するが、道路工事のアルバイトをしてまで貯めたお金でやっと手にいれた家を手放すことを、ベラーニは頑として拒否する。キャシーは元麻薬中毒者でさまざまな問題を抱えている。一方、ベラーニはイランでの栄光の日々を忘れられず、その生活を守るためかなり見栄をはっている。どちらも欠点はあるけれども、自分の幸せを必死に求めているだけで、それほどの悪意はない。それなのに何故これほど破滅的な結末を迎えないといけなかったのか？人生の不条理さをひしひしと感じる作品だった。

なんとも重苦しい作品です。とても疲れてしまいました。この作品の場合、主人公は二人と考えていいのでしょうね。ジェニファー・コネリー演じるキャシーとベン・キングズレイ演じるベラーニ。この２人がひとつの家を巡り対立を深め、気がつくと悲劇がそこに「パカッ！」っと口を開けて待っていた、とそんな感じの作品でした。オスカー俳優２人の対決ということでこの作品を見たのですが、どちらも文句なしの演技だったと言えるのではないでしょうか。お役所のミスと彼女自身のミスで父親から受け継いだ家を手放す事になったキャシーと母国イランを追われ、アメリカに亡命してきたイランの元要人ベラーニをキッチリ演じていたように思います。特にベン・キングズレイの演技は全く派手さはないのですがその静かで確かな演技はさすがオスカー俳優と思わせるものでした。彼の演技を見るだけでも価値があるというものです。

この作品を見て、僕はジェニファーのファンなのでどうしてもそっちよりの見方になって見てしまいました（＾＾ゞ。ですが結局、どっちもどっちだという結論で終わりました。どちらかが悪いわけではないという事です。人生の不条理という言葉がぴったりします。世の中のこんな不条理は日常茶飯事ではないにしろ色々あると思います。この作品ではひとつの家が多くの人たちを悲劇に巻き込みましたが、現実世界でニュースを見ていると不条理な出来事が毎日リポートされています。その悲劇の結末の多くは殺人となって現れています。

亡き父との思い出の家を取り戻したいキャシーと過去の栄光を蘇らせる資金を得る為の手段として家を手に入れたベラーニそのどちらにも譲れない理由が存在しました。さすがにベラーニが買値の４倍のも値段を要求した時には「信じられない」という気持ちになりましたが、どちらも譲れないものがある以上この作品のような結末を迎える事は仕方がなかったのかもしれません。こうなると解決手段は３つに絞られます。
１：どちらかが家を諦める
２：どちらも納得のいく妥協点を見つける
３：徹底抗戦
この作品では妥協策を見いだしたかに見えたのですが・・・。いずれにせよ、この悲劇は避けられたはずです。人間のエゴや欲の為に大切なものを見失った人達の悲しい出来事を描いた作品ですが何とも言えない後味の悪い作品でした。見終わった後も重苦しいものが心に残りました。