ワンダー・アンダー・ウォーター／原色の海

　美しい４５分間だった。
　映っているのは見たことのない生物ばかりで、色彩豊かで、まるでアニメーション。子どもが描いた想像上の生き物のようにも思えた。
　水槽の中でみたらきっとグロテスク。海の中だからこそ彼らは美しく奇跡的だ。

　レニ・リーフェンシュタールの監督作品でなければ、きっと手にしなかったであろう作品。そういう私はもともと動機が不純だ。
　でもこんな世界が、本当にこの地球上に存在するということを、こんな私に教えてくれたレニに感謝したい。

　時々だが、美しいという気持ちは、どこからわきでてくるんだろうと考えることがある。たぶん、それは遺伝子の奥深くに刻みこまれた人間の動物としての原体験から来ているものではないだろうか。すなわち、もっとも地球本来の自然体に近い体験であって、人間はそれを五感で感じる時に、素直に美しいと感じるのだろう。
　作品中、魚などについて何も解説がないんだけど、まあ、そんなことは気にせず、ゆったりのんびりヒーリングしましょう。

冒頭の監督のメッセージを除けば、美しく癒されるの一言です。ぜひご覧ください。冒頭のメッセージ以外は一言の言葉もない、いらない珠玉の一品です。

年齢を偽り７０歳でライセンスを取得し、２０００回にも及ぶダイビングで膨大な映像を撮影後、これまた１年余りの月日をかけて編集したらしい。
「映像は言葉より雄弁」とナレーションもなく、BGMだけが静かに流れ、彼女の徹底した美意識が窺える作品になっている。
冒頭、監督自らが出演し、サンゴ礁を開発から守ろうと訴えていらっしゃる。
しかし、そのお顔を見て驚いた。
年老いた顔に隅々までしっかりと施された整形の跡。
深く刻まれた皺を除けるように存在するくっきりとした、目・鼻・口。
若い頃は美貌の持ち主だったのであろうが、歳をとれば誰しも衰えるのが自然の成り行き。
顔に刻まれた皺も美しい年輪でありうると私は思う。
それをいつまでも若いころのようでありたいと、無理やりの手技で作り上げた容貌
その顔で自然を守ろうと訴える彼女。
一体それのどこが自然なのか？彼女の美意識とは？
漁業を禁止して公園にし、そこでダイビングを楽しみましょうとの事。
しかし、サンゴ礁の開発を進めているのは、そこに集まる人々目当ての観光業者ではないだろうか。綺麗なモノを見たいという我儘だけで、自然に対して一番脅威である人間が近づくことによって、かえって自然は破壊されるのではないか。
ある長編アニメ映画で熱帯魚を主人公にし、そのあまりの可愛さ故、皮肉なことにそれ以来その魚が乱獲されるようになったという事を聞いたことがある。

どうか、自然をそっとそのままにして遠くから見守ってあげて欲しい。
グロテスクなまでに美しい海の中の映像を観ながら、そう願わないではいられなかった。

正直、期待したレベルには全然達していなかった。

アトランティスやディープ・ブルーのつもりで見ると
がっかりすると思います。
（自分がそうだった）