エゴイスト

地味な映画ですが、内容はしっかりしたなかなかの秀作です。　売れない作家バイロン・ティラーを演じたアンディ・ガルシアの‘抑えた演技’が良く、ピューリッツァ賞受賞３回の作家トバイアス・オルコットに扮したジェームス・コバーンの深みのある演技も実にいい。
ストーリーの概要．．．売れない作家バイロン（A・ガルシア）は妻ディナ（ジュリアナ・マルグリーズ）と子供をかかえて苦しい生活だったが、バーで知り合ったルーサー（ミック・ジャガー）という男と知り合い、彼の経営するエリジャン・フィールズで働くことになる。仕事はエスコート・サービス（つまり出張ホスト）で、あまり乗り気ではなかったが、一流作家のトバイアスの妻アンドレア（オリヴィア・ウィリアムズ）が相手だと聞いて心を動かされる。　バイロンは妻に嘘をついて外出し、アンドレアとオペラ鑑賞や前衛舞踏を楽しみ、遂にはアンドレアの自宅に招かれ、関係をもってしまう。（この場面でアンドレアの夫役、J・コバーンが部屋に入ってくるが、動じる様子がまったく無く、老体の身とはいえ何かおかしい感じ．．．）　バイロンは妻への罪悪感でいっぱいになるが、翌日トバイアスに招かれ、トバイアスから自身が病身であることを告げられる。さらにアンドレアに‘男をつくれ’と命じたのはトバイス自身であったことも。　バイロンは、トバイスが１２年かけて書いたという本の評価を求められ、正直な感想を述べると、トバイスは激怒する。だが、共著での書き直しを依頼され、バイロンは快諾、これがきっかけとなり、彼の生活は楽になる。ところが家庭を顧みなくなった夫の生活ぶりに、ディナは不安を募らせ、エリジャン・フィールズの名刺から、夫が何をしていたかを悟り、ディナは激怒して出ていった。　やがてトバイアスが死に、アンドレアは‘彼の作品からバイロンの名を外す’と言いだす。　口約束だけのバイロンには打つ手がなく、一杯喰わされたバイロンは自分に腹を立てるしかなかった．．．１年後、バイロンは妻との別れを描いた作品「転落」でベストセラー作家の仲間入りをした。　深い後悔の刻まれた作品は大ヒットし、著作の朗読会にはファンに交じってディナの姿があった。彼女は‘本の内容を直接聞きたかった．．．’と涙し、二人の‘これから’が想像されて幕を閉じる．．．．
出演シーンは少ないながら、M・ジャガーの‘お客’ジェニファーに扮したアンジェリカ・ヒューストンの出演や、冒頭の「ヒトラーの息子」という売れない本を手にとり、実は作家本人だったガルシアと会話を交わす女性役、ロザリンド・チャオの表情もユニークでいい。　作品タイトルは内容にそぐわない気もします（アンドレアの役柄がタイトルの象徴なのでしょうか？）が、日本未公開作品というのは残念です。