ｂｌｕｅ

　思い出してしまいます。数十年前の自分の青春時代を。　
　淡々と、学校生活や、友達との生活が、描かれています。　
　女子高校生二人の友情の芽生え、心の変化、そして深まり。　
　少ない台詞の流れに、最後までついていけない人もいるかも。　
　演じる、市川実日子は、テレビでも、映画でも活躍。　
　ぶっきら棒な中に、なんともいえない存在感があります。　
　小西真奈美は、さすが舞台出身です。　
　二人の醸しだすハーモニーが、とても良かった。　
　　
　相手の事をもっと分かりたい！分かっているよ！　
　そんな二人に、時間の流れが訪れ、大人になって行く・・・　
　ラスト近く、静かに頬を流れる涙は、過ぎ去った、　
　　自分の青春を思い出させてくれたから。　

　

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自分自身を分かって欲しい、もっと砕けたいい方をすれば、仲良しこよしでいたいと願う女子高生の心理ですね。しかしこれは女子高生というモチーフの姿を借りていますが、根底にあるのは人間のエゴの部分で、自分自身を理解させたい、理解させることで相手を支配したいという本能なんですよね。ここらあたりがテレビの底の浅い上辺だけの青春物などとは大きく違います。

遠藤(小西真奈美)の中に漂う大人っぽさに憧れ、桐島(市川実日子)は遠藤と同格になろうと精一杯の背伸びをしますが、遠藤の気持ちを縛りつけておくことはできません。すり抜けていく遠藤を吹っ切ろうと絵画に執着する桐島ですが、それもまた遠藤の家にあった画集からの影響ですし、さらに描く物は鈴生りになっている葡萄ですから、本当の意味での脱却ではないんですよね。
しかし自分自身を見つめた桐島は確実に変化しています。デッサンにより物の形を捉えることは、葡萄の一粒一粒が集まりあって葡萄という形が出来上がっていることを認識したんじゃないでしょうかね。決してパンツは共有できないけど、それが当たり前であることを知ったんじゃないでしょうか。
救急車で運ばれる一人の人間を見るような好奇心、さらには遠藤に求めていた心の重なりからは脱却し、二人の関係が微妙に変化(ある面では逆転)しているクライマックスだと思います。

遠藤(小西真奈美)と桐島(市川実日子)というキャスティングでの対比が冴えているのは言うに及ばず、この二人を配置する風景が秀逸な映画だと思います。たとえば、たびたび登場する海にしても、彼女たちとは距離を持ってそこに存在していますし、その大きさに揺り動かされているのが彼女たちなんですよね。家の中で寝そべっている二人にしてもどこか重なり合うことのない距離を絵は表現していると思いますし、ワンショットも寂しげな雰囲気を作り出すことを十分考慮しているんじゃないでしょうか。
テレビ的な切り返し切り返し、確かに観客の緊張感を切ることはないかもしれませんが、そんなカット割りでは表現できない物、もっと人間の奥底にある物を表現していくのが映画じゃないかと思います。

とあんまり褒めまくって終わると誤解も生みそうなので、ちょっと貶すところも書きますが、演出も脚本も少々荒削りな感がありますね。たとえば押しておかなければいけないところ、伏線である夜中の電話だとか、そういった物の押しが弱いんですね。脚本もシーン尻が重要でないところの話に零れていったりもしてますし、故に肝心な部分の印象が薄くなってしまうんですよね。
全体的には鋭く人間に切り込んだ良い映画だと思いますが、もうちょっとメリハリ的なことに配慮して欲しかったように思います。

「桐島、お酒強そうだもんね」
「…そんな事ないよ」
「じゃ今度飲みにいってみる？」
「いい、いい。アイスでじゅうぶん」
二人の高校生の女の子がアイスを食べながら会話する。
二人の間にあるのは、恋愛感情だったり、友情だったり、あこがれだったり、安堵感だったり。感情は言葉にするとややこしいけど、感情が望むカタチはいたってシンプルなものだ。
遠藤は自分が着ない服を桐島に着てみないかと勧める。
松の木に囲まれた中で、二人は身体を寄せ合いお互いの背格好を比べ合う。

防砂林に使われている為、新潟の海岸付近は松の木が多い。
そして海。
晴れた日には海の向こうに佐渡島がハッキリと見える。
風が強く、寒々しい日本海の前では、人はあまり口を動かす気にはならない。海の前の二人はジリジリとした不安を感じつつ、同時に安心もしている。同じ海を見て、同じ波音を聞いている間は。しかし、いつまでもそうしてはいられない。

私は、あの海がすぐ近くにある高校に通っていた。
エンディングクレジットで、リコーダーのあやふやな音色が柔らかいメロディを奏で出すと私は泣いてしまった。
あの海への行き方は知っているけど、もう戻る事はできない。

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アイスクリームで満足できた頃・・・

ひとつ年齢が違うだけで大人に思えた。
何か知らない世界に憧れた。
何かに近づきたかった。

輝いていたものへの失望。

分かち合いながら、残酷に選んでいる。
何が必要なのか、不必要なのか。何が大事なのか。

絶対なんてものはない。

でも、絶対を信じられた頃・・・。

今一つインパクトに欠ける。
片手間に観れてしまう。
あまりにも整理したものを作ろうとしすぎているように思える。

ときどき青春物をみて思うことは、
「そんなに整理されてないよ」ということ。
外側から見て、もしくは記憶の中でみるようには
若者というのは整理されていない。
もっと乱暴で不安定な存在。
見ててどきどきしなかったら若者じゃない。

そこいらへんが描ききれていない。
外面的な描写で終わってしまっている。
セックスシーンはあるけど描写しない、どろどろの喧嘩も描かない。
あたりさわりのない映画は結局どこにもたどりつかないのでは？

内面では葛藤があるというのであれば、
それを観客にもストレートに表現すべき。
整理された青春物は、それ自身への裏切りだ。

自分は「客観的に捕らえた整った青春を映画にする」という行為に反対です。

別の人生を経験できないと意味がない。
あくまでも人間の内面、主体に興味があるのです。