さゞなみ

と、思ってしまいますが、まさにそんな作品なのです。深い森の奥の苔むした石、河のせせらぎ、木漏れ日の間から射す日の光、そして小鳥のさえずり・・・そんな背景の中で、娘と母のそれぞれの思いが、淡々と綴られて行きます。そぎ落とされたセリフ、少ない出演者、話の展開がありそうで、なさそうで・・・マニアックな作品なんでしょう。絵画を鑑賞する様な、そんな感じでした。母親役の松坂慶子、娘役の唯野未歩子、そして何ともいえない役の豊川悦司　それぞれが、淡い存在感で今も心に残っています。不思議な作品でした。

自分をそして互いを思いやるために　決して口に出されることのない父親の存在。
父親が消えて17年、不在という存在感は母と娘の間に不自然な間を残す。

映画を見るという感覚ではなく　鑑賞するという感覚の作品でした。
面白いというより　趣があるというか。娯楽性は　ほとんどありません。

この作品の特筆すべきは　視点の美しさ。色彩で見せるというよりは
構図の美しい作品です。皆さんのおっしゃる通り　米沢の田園風景。
静かに泉湧く水紋。こんな微細な光景を　どうやって見つけたのでしょう。

贅沢を言わせてもらうなら　もう少し作品に生気が欲しい。
どうしても本当に生きている感じがしないのです。

ひとり暮らしをして　テレビがあるのにテーブルがない。
（稲子は殺風景なスチール机で一人食事をしている）
そのたたずまい。声。どこかしらに　もうちょっと情熱のかけらが欲しい。
車がほとんどない立体駐車場。誰一人歩いていない繁華街。
駅員も誰もいない駅（これって本当に駅?）
これがまた逆に　不思議な余韻とはなるのですが。


不快マニアは　ちょっとお休み。まとめて観るとさすがに飽きます（当たり前だ）。
オテサーネク、鬼畜大宴会は近い将来レビューすることになるでしょう。
まずは　いろいろ散策してみることにします。

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まずどっしりとカメラを据えた映像が素晴らしい。ひとつひとつの場面が絵画のように計算された構図で捉えられている。その映像に合わせた静謐なドラマ展開がいい。稲子（唯野未歩子）の思いが台詞でなく映像から強く伝わってくる。

後半の母娘の凌雲峡への旅行が印象深い。小津安二郎監督の「晩春」（１９４９）を思い出す（こちらは父と娘だったが）。夫、または父の不在でどこか欠落感のある二人であったが、この旅はそれを乗り越え新しい生活へ進んでいく機会になったのであろう。

豊川悦司が好演。どこか崩れている男の哀しさと優しさが見事に表現されている。

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音も少なくセリフも少なく、起伏のない展開。
何を言いたいのか、何を訴えたいのか全然わからない。
主人公が想いを寄せてる感が薄く、全然伝わってこない。

松坂慶子・豊川悦司のある程度の重みが無かったら、
薄っぺらで一枚の紙切れのよう。
眠くて仕方なかった。

縦長のアングルが多すぎて飽きる。

米沢の田園風景の美しさ。また行ってみたくなる。山と渓谷の中で生活を離れた自分を見つめる時間を感じる。画面の構図やバスや電車での移動が線となって象徴的。その線を繋ぐ「間」の取り方が印象を長く残してくれる。すばらしい作品でした。