クレイドル・ウィル・ロック

　1936年大恐慌のニューヨークを舞台にした
自由を問う問題作。
自由とは何か。権力に与するものは表現を許され批判は権力をもって打ち砕かれる。
　インターネットが当たり前になり　あらゆる表現が黙認される現在、自由という本来の重さを再確認させられる。
　『ゆりかごは揺れる』のキャストが全員立ち上がってくれたことに喝采したい。

コミュニズム、３０年代ファシズムの台頭
更に大恐慌を背景とし、思想的に政治、社会が混沌としていた
時代、芸術に賭けた人々がいた。

大不況のため仕事にあぶれた芸術家支援策として連邦政府が
打ち出したＦＴＰ（フェデラル・シアター・プロジェクト）に
スポットをあて特段、主役らしい主役を配置しない群像劇に
仕立てている。

焦点の絞りにくさが延々と続く為、途中で眠くなる人も
恐らく大勢いるはずだ。

映画として観ると瞼が落ちてくるので
クレジットでも「ほとんど実話」と言っているように
ドキュメンタリー・フィルムとして観賞する事をお勧めする。

当時、西欧ほど直接的対ソ脅威が浸透していなかった
アメリカにおいて、すでに赤狩り的行為が
みられたというのが興味深かった。

作品としては尊重するが、ぜんぜん面白くない。

そもそも第二次大戦も始まっていない時代の事で、芸術、組合、表現の自由、そういったものが政府や政治によって弾圧され、それに対する抵抗、アジテーションというお決まりのパターンを映画にしています。
芸術における共産主義の弾圧にしても、マッカーシーの赤狩りよりも前のことで、それほど興味を掻き立てられません。

体制から宗教や芸術が弾圧され敵視されることは、当たり前の話です、放っておけば現体制を揺るがしかねない事に成りかねないからです。
歴史を見れば一目瞭然です。
あらゆる国や地域で時代を問わず行われてきています。

でもだからこそ、宗教も芸術も強いのです。
有史以来、迫害や弾圧と戦ってきたからこそ、人々を感動させ先導する大きな力があるのです。
もし仮にぬるま湯につかってきたとしたら、それは宗教とも芸術とも呼べるような代物になっていなかったと思います。

現代をみれば、あらゆることが認められ許されているから、宗教も芸術もただの商業主義に迎合した性質の悪い代物に成り下がっているじゃないですか。
より向上しようとするなら、常に何かと戦うべきなのです。

同時代に共通した問題を抱えつつも
決して人生が交差する事のない人々の生活が、
どこかで共鳴しあって進んでいく。
随所に笑いがありながら真剣なテーマを扱う
（そして暗くはならない）
この手の群像劇は、
なかなか邦画や日本のドラマでは見られない。
キャストも豪華。
見ごたえありますよ。

誰が主役であるか、というようなものではなく
群像劇であるがゆえにストーリーの的を絞るのが
基礎知識がなかった私には容易ではなかった。

芸術としては「演劇」（舞台）に帰結することが
多いのだろうが、「絵画」細部で言えば「腹話術」
にいたるまで時代における権力からの圧力を芸術が
反発している姿を描いている。
もちろん、権力（国）だけではなく組合（内部）から
の抗力も大きいのだが・・・。
抑えられる力が存在するからこそ、芸術の力が爆発
するような、そんな思いが交錯する。

演者にとって価値ある作品であることには間違いない。