ＴＵＶＡＬＵ／ツバル

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何度観たでしょう。
観たいと思う時のどうしてが、
またその時その時で違います。
けど、その都度、
くたびれたそこを直してもらえました。
結び直したり、貼り付けたり、切り取ったり…

昨年秋やこの春、
地震で津波警報が出るたび、
その無事を、安心なこの島で願いつつ、
観たりもしました。
「ツバル」・・よい響きです。

何度観ても美しく、不思議で、わくわくする映画です。
なんで飽きないのか同じ絵本を、
繰り返し読んでと持ってくる、
幼子の気持ちを思い出させてくれる作品です。

金魚といっしょにエヴァが全裸で、
プールで泳ぐシーンがあります。
アダルト好きな同性から見ても、
エロさのない、
生まれたての命のような裸。
水の中を飛ぶ妖精のようで、
ほんとに奇麗です。
魚が何もまとうことなく当たり前に、
鱗むき出しで泳いでいる、その美しさです。

そんな不思議な世界の主人公アントンを演じたのが、
ドニ・ラヴァン。

はじける寸前のバブルの中で、
横柄に若さを満喫していた頃、
レオス・カラックスのアレックス三部作は激震でした。
ゴダールの再来との熨斗付きの中、
強烈な形相…
”ブサイク”な強面のドニ・ラヴァンが
可憐なジュリエット・ビノシュと…。

納得圏外なふたりでしたが、
観ているうちに
次第にドニのその輪郭の強さに圧倒されていきました。
獣のように二本足で疾走する彼、
しなやかで神々しく、
ポンヌフ橋で華やかな花火をバックに
ビノシュと踊り渡って行くシーンは、
圧巻ぐるぐる巻きでした。

その彼が１０年後、
その容貌に不思議なあどけなさをたたえて、
現れました。

色彩豊かなモノクロ、
ちゃんと伝わってくる音だけの言葉、
まだ見ぬこれからの未来であるのに懐かしい、
そんな素敵な作品です。

アントンとエヴァは、
あの後ツバルにたどり着き、
今頃は子供達に囲まれて、
美しい海で
もちろん、魚のように、
泳いでいると思っています。

40年の時を経て新しい無声映画が作られたと話題になったそうですが、
決して無声映画ではないんです。
みんなあまりしゃべらないけれど、ちゃんとお互いの名前は呼んでます。だけどセリフは本当にほとんどありません。
あったのかもしれないけれど、字幕がないので分からない（笑）。
初めは、自分のDVDプレイヤーが壊れてるんじゃないかと思うぐらい、字幕がないことに焦りました。
でも、セリフがなくてもなぜか理解できてしまうストーリーなのでした。
それがステキ。

ファンタジックなんだけれども、大人の狡猾さやずるさ、皮肉なども描いていて、コメディなんだけれども淡く切ない…という、大人が楽しめる映画だと思いました。

映像はとてもキレイで、青のモノトーン、茶色のモノトーン、緑のモノトーンと、
色彩がほとんどないような映像なのに、イメージとしては鮮やかな感覚が目の裏に残る感じでした。

この映画絶賛されるのも分かります。
本当に絵本がそのまま映画になった感じ。しかも、絵本の質感を失わずに映画にできたっていうイメージです。

しかし、主人公のアントンを演じるドニ・ラヴァンですが、たま〜にビリー・ボブ・ソーントンに見えました（笑）。
顔の系統が似てるよ！

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（ネタバレ、とはいえないのですが・・・・）
　　1999年製作、これを頭の片隅に置いておいて欲しい。

　　名作、というのとはちょっと違うが「良い映画」ではあると思う。
　　モノクロで無声映画の手法を使った作品だから、たしかに実験的映画ではあるが、押し付けがましさや醜悪さ、あるいは説教くささなどとは無縁だ。
　　コメンタリーやメイキングで監督が語るところによれば、台詞を排することでどこの国のひとでもわかる映画を目指したという。それが完全に成功したとは思わないが、台詞が過剰であればこの映画の持ち味が失われたことはたしかだ。

　　さて、本編を観終わって特典映像のメイキング、当たり前のことだが「総天然色」。これを観て思わずほっと息をついた。
　　このことが本作をとく鍵となった。
　　たしかに終末観にあふれた作品ではあるが、悲観的なわけでも、希望を感じないわけでもない。ただ言い知れぬ違和感、息苦しさを覚えていた。世界の終末であろうが関係なく。
　　一種の閉塞感、といってもそれは押し潰されるようなものではなく、決して覚めない夢、夢を見ている夢のような出口のなさ、歯医者で麻酔をうたれた後の唇の、感覚がないという感覚のような。

　　単純にモノクロ、サイレントという技術的なことではない。だがこの映画の監督は、色彩や台詞と一緒に「なにか」も脱色してしまった。それがためにアチキは観ている間この映画の世界から抜け出ることが出来ない。
　　そのことに気がつかなければ、結構いい映画だと思うかもしれない、何度も観たいとはまってしまうかもしれない、多少の違和感を感じながらも。
　　だが駄目だ。
　　この映画の世界から抜け出たいと切に願う。
　　別に洗脳されるだの、監督が狂っているだのとたわけたことを言う気はない。単にアチキの感性とことごとく合わないだけだ。

　　ラスト、主人公たちはまだだれも見ぬ楽園、ツバルへと旅立つ。だが到着することはあるまいとアチキは思う。この世界から出ることは出来ないのだから。


　　映画が製作されたのが1999年、まだツバルという地名が一般にはさほど認知されていなかったころ。
　　そしてこの島々はいま、最初に地図から消えてしまうかもしれぬ国として知られている。
　　なんと言う皮肉！　目的の地が消えてしまうかもしれぬとは。


PS　これだけ書いて、それでも同監督作「ゲート・トゥ・ヘヴン」を観てみたくなってしまうアチキであります。

この映画は好き嫌いがあるでしょうね。最近の映画の中で、字幕無しで外国映画を見たのは初めてになります。本当に不思議な世界観です。カラフルなモノクロタッチが映像として面白さを感じます。

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１９９９年って！こんな映画あったかな。その頃は、ちゃんと映画館で映画を見まくってた時期なので、なぜタイトルすら知らなかったんだろうって不思議に思う。配給会社は、もっとちゃんと広報してくれりゃよかったのに。もったいない。なかなかにすてきな映画だと思うんだけど。ドニを差し引いても。このジャケットもないよなあ。ほんとに損してると思う。

「愛おしき隣人」のロイ・アンダーソン監督と正反対。あの、雰囲気のある骨董品みたいな室内プールも、地下室へと続く深い階段も、ぐるぐる四角い螺旋階段もすべてロケハンでみつけてきた実在する建造物だというからおどろき。よくみつけてきたなあ。とにかく、ファイト・ヘルマー監督は、じぶんでちょこまかなんでもやっちゃう。メイキングもおもしろかった。インタビューはわたしにとって最高の贅沢だった。だいすきなドニの、動く、素の映像を見れてうれしかった。初めてスクリーンで見たのがもう２０年くらい前になるだろうか。うれしいなあ。長生きはするもんだ。たばこを吸うんだ。ふつうの人なんだ。へえ。

アントン！とか、挨拶の言葉とか、極端に台詞は排除されている。すべては身振りと表情。役者たちがほんとにうまい。アントン（ドニ）の父親役の俳優さんは、台詞もなく、サングラスをかけた盲目役。なのに、いちばん生き生きしていて表情豊かだった。すごいなあ。受付嬢（といってもでっぷりおばさん）のカタジナって女優さんもすてきだった。ふくよかな彼女は、監督のいうようにプールの魂、母。みんなを包み込んでくれる。その彼女がプールを去るうしろ姿は、ほんとにものがなしい。

中でもドニは、すばらしかった。身体能力の高い彼ならでわのシーンがたくさんあった。「ミスター・ロンリー」でチャップリンを模倣する生活を送る男の役を演じていたけれど、ここでも、さながらチャップリンのように見える瞬間があった。表情でみせてくれる。身振りで伝えてくれる。コミカルさ。悲哀。監督はきっと、ドニの演技を見て、１２００人もの中から彼を選んだけれど、大正解だったと高鳴ったと思う。

エヴァがモノクロの水中で魚と舞うシーン。
そして、アントンの父のお葬式のシーン。とてもうつくしい。特に、お葬式では、あのブルガリアン・ボイスの３人がプール脇で歌ってくれる。プールサイドにはたくさんのろうそく、薔薇。ゆっくりと父をのせて船出する。幻想的なシーン。

どこだかわからない世界。いつの時代だかわからない物語。夢をみているような。懐かしく、遠い記憶。でも、未来をみているようでもある。ツバルに向かってアントンとエヴァは漕ぎ出した。でも、べっちさんの言うように、たどりつけないかもしれない。その目的地、ツバル自身が水没の危機にあるから。ヘルマー監督は電話帳で見つけた地名だと言ってたから、今、このことをどう感じているだろうか。