ハピネス

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…という台詞が時々出てきます。
ほんとそう思います。
そう思うこと、思えることがハピネス。

登場人物はみんなとても,
不幸です。
だのに、次から次へ不幸が降りかかります。
というより、内側からポコポコと湧き上がってくるといった感じ。
不幸の上へまた不幸。
不幸の中からまた不幸。
たっぷり不幸です。

でも、見ていて不愉快にはなりません。
ウンウンと頷きながら、馴染める不幸です。
たくさんにっこり苦笑いできて、
生きてるって＝不幸
もっともっと、生きて生きて
不幸にならなくっちゃって
元気になれます。
他人の不幸を見て、
まだ自分はましと安堵する優越感的幸福感とは違います。
不幸な中でアップアップしながら、
それぞれが、身勝手に
自分だけのしあわせを求めながら、
「あなた」の幸福を願っています。
そして、
さわやかにすっきり（ピュッと・・・）と（イッて）
ハピネスエンド。

いつも、なりっぷり素晴らしい、
名優フィリップ・シーモア・ホフマン。
若い彼、この度もすごいです。
体重増やして、
たるむ寸前の浮腫んだお腹。
ずり落ちたズボンから覗くお尻。
金色に輝くまつ毛。
喋り方も笑顔も、
ねっとりとした気弱な変態、
お見事な気持ちよさです。
つぶらな瞳のカムリン・マンハイムとの食事シーンは、
有無を言わさぬ不幸ど真ん中。
チョコサンデーにイチゴアイスのトッピング、
美味しそうでした。

トッド・ソロンズ監督の台詞は、
刃の上を這っているようです。
冷や汗かきながら
でもくすぐったくておかしい、
ヒヤヒヤムズムズな快感とぎりぎりな不快感。
息子が連続レイプ犯の父に
真意を問う、
短い言葉の質疑応答シーンは
まさにそれ、その極めつけ。
吸った息を吐くのを忘れて、
苦しくなって、悲しくなって内側に
涙がこぼれてきます。

影も声も体も薄いジョイの
弾きがたりが胸に…でなくて、
神経に響きます。
（エンディングは男性が同じ歌を
　明るく軽快に歌っています）

　ハッピネス　なぜこんなにも
　遠いの？私から
　つらくて苦しい時もあるけど
　幸せをさがす旅はやめないわ
　幸せはどこ…
　ずっとさがしてるの

半年後、少しふっくらしたビリーくん
「ぼくイケたよ」って、
幸せな微笑み満面で家族に報告。

『あなたが幸せでよかった』…

ほのぼのしているのに、内容はかなりかなりぶっ飛んでブラック！
実際は全然笑えない内容なのに、どうしても笑ってしまうところが、この監督の手腕なのでしょうか。

結構ダークでシリアスにもなりうる話を、かなり痛快にコメディとして描いてしまうところにスゴさを感じました。
最後までブラックなのにくすくすと笑いが止まらない映画。

題名が“Happiness”っていうのも、これはある意味、笑いを計算されてつけられたのではないでしょうか…。
きっとそうだ…。

これと全く同じ話をラース・フォン・トリアーが撮ったら、また全然違う、笑えない映画になってると思います（笑）。

まあ最近ちょっと自分の感想に食傷気味なんだけど、
やっぱり他の人のレビューはしっくり来ないので書いてみる。

んとね。
主役と思われる３人姉妹の末娘の女の人。
彼女の扱いが乱暴なんだよね。
なんかいろいろ経験するだけで、明るい兆しが見えてこない。
エピソードもまあありきたりというか、
はじめのシチュエーションからは想定される範囲の展開しかしない。それは確かに順当なんだけど「現実にありそう＝映画としておもしろい」ではないんだよね。
役者にテーマとキャラクターだけ与えて、自由に動かせて作った感じ。
物語に創作者としての魂がはいってないんです。

一つのセッションとして映画を作っている。
そういう方法もあるとは思うけど、ちょっと食傷かなあ。
作り手の意思を感じないよ。

それに君たちは恋愛にこだわりすぎです。
一切恋愛しなくても幸せに生きていく人も世の中にはいるのでは？
「幸福とは人間関係がすべて」ではないと思う。
世界観がウェットすぎるかな。
みなさんはそういう映画がみたいんですか？

映画アメリカンビューティーがメジャーコードだとすると、
それをマイナーコードにして、演奏しなおしたのが、このハピネス。かも。

どうしようもないくらい、小粒で、
生きてる意味、なんてものが、誰がみても見出せないような登場人物たち。


ハピネス？
そんなものを探したって、
一生みつからないかもしれないね。

生きるって、悲しい。

悲しすぎて、笑っちゃう。

それでも人生はつづくんだなぁ。と、
シニカルに笑うしかない、映画。

私はすごい好き。

好き、嫌いが別れるといわれる映画で、
自分が「好き」と思えたときには、
自分内映画ランキングでもかなり上位にくる気がします。

「ウェルカム・ドールハウス」がとても面白かったのでこちらも鑑賞。三姉妹という設定にも興味津々で・・・。私も三姉妹なので。
だけど、濃いキャラがたくさん出てくるだけで、三姉妹の面白さって全然でしたね。
何となく病んだ人たちと、その病みに巻き込まれる姉妹たちの不幸せ感は伝わってくるんですが、その面白さがさっぱりわからない。息子の友達を犯す父親とか・・・楽しめないですよ・・・。
病んでる世界は大人だけで十分。
ソロンズ監督はもう観ないかな・・・。