のど自慢

お前の作る物はこんなもんか　って批判をよく聞くが
「ガキ帝国」一本で井筒の才能は明らかだろう

これも　かなりのフィルムが回ってるはずだ　なかなかずるくて
この泣き笑いには　それにいたるプロセスを見せない　エピソード集だ

つまり　あまりにも鮮やかな編集で　人情劇をしっかり体験した気分にしてしまうのだ　これこそ映画マジック！

続編のハワイ版では印象がガラっと変わり　海外ロケの難しさがよくわかる
いろんな調整に　短時間に忙殺されて　ゆっくり構図を決める余裕もないのだ
それはそれで面白いので　あわせて見ることを薦める

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日本人であれば知らない人は居ないと言っていいほど名高い、「ＮＨＫのど自慢」。この番組の舞台裏に焦点を当てた映画です。主演の室井滋さん、そしてこの映画の着想。これだけで及第点なのに、それで終わらずこの映画はさまざまな人間ドラマが加わります。「いつかきっと大きな事を成し遂げる」と夢見て職を転々と変えている一家の大黒柱の男性。不登校の少年を預かる祖父。そして不倫の末、妊娠してしまった姉を持つ妹。ここに登場している人々はちょっと目を向ければどこにでもいそうな市井の人々。私達と等身大の人間達です。そんな彼らが１つのイベント、「ＮＨＫのど自慢」出場に向けて集まって来ます。

彼らに共通しているのは、「歌う事が大好き」。でもそれだけじゃない。今日は、そして今はつらい、大きな壁が立ち塞がっているけれども、きっと明日は、そして未来には眩しく暖かい光が差し込んでいると信じて疑わない、前向きな考えを持っている事。自分には社会的な地位も名誉も得られない。そんな事、百も承知。でもそれが何なの？だって私にはあなたが居るもの。と、かけがえの無い物、何よりもそれが尊い物だと分かっている事。

人間は欲張りです。自分に無い物を得ようと必死になってしまう。その結果、一番大切なことを見落としてしまいます。それをこの映画は強調してくれているように感じます。大衆と共に歴史を歩んできた「ＮＨＫのど自慢」を題材にコメディー・タッチに仕上げた作品です。大衆に支えられてきた番組だからこそ、「歌」が民衆の文化であるからこそ、このヒューマン・ドラマに説得力があるのかもしれませんね。

ラストは「上を向いて歩こう」の曲が流れます。「上を向いて歩こう、涙が零れないように」。この歌は単調で歌詞は簡単。でも大切な物がいっぱいあふれている歌です。この曲の良さが分かったと言う事は、歳を重ねてきた自分が「生きる」と言う意味を理解し始めたのだろうか…。そんな感慨も過ぎりました。

この映画を鑑賞するだけじゃなく、「ＮＨＫのど自慢」を題材にして、自分だったらこんな映画を製作しようと頭の中で構想を練るのも面白いかもしれません。私が生まれ変わって、もしも映画監督になったのならこの映画をリメイクすると思います（笑）。着想も出演陣も役者揃いな味のある映画です。

　個人的には泣いて笑える作品を作らせたら井筒はトップクラスの監督だと思っている。本作も笑いは勿論、ほろりとさせられた。

　どこにでもいる人物を描いている訳ではないが、キャラの描き方が魅力的なので、いつのまにか感情移入してしまう。演出はやはり巧いな。

　シナリオで見るとそんなに泣ける要素はないんだけどなぁ。笑いで感情を裸にさせられてるからか？

　泣くポイントにいきなりすっと笑いを挟むセンスも大好き。

　星★★★★☆　作品のクオリテイの話になるとまたちょっと違ってくるのかもしれんが、おいらは結構好きだなぁ。特に後半は笑って泣けた。

のど自慢は観ていない人でも知っているＮＨＫの番組であるが、それを映画にしようというのは、伊丹十三監督作品のように今まで誰も取り上げなかった企画の新鮮さがある。それだけでポイント高し。「ガキ帝国」の印象が強い監督なので、こういう人情喜劇は畑違いなのでは、と思ったら意外にも手際よくまとめられているのである。荒削りの監督だと思ってたら、こういうのも獲れるのね。
大友康平が予想を上回る好演もしている。室井滋もこの役は力入ったと思うようなもうけ役だし、他の役者も精彩がある。
　他の監督作品をボロクソに言う手前、それじゃお前はどうなのよと言われかねないのだが、この作品の質をキープ出来たら、大丈夫。立派に娯楽映画の達人だよね。

大友康平の笑いをさそう演技がはまりこの作品を支えている。
この頃の歩ちゃんはふっくらとしていて田舎の高校生っぽくて良い。
人それぞれの人生模様を描いた人情喜劇は井筒監督の十八番、良い作品をもっと見たい。