フューネラル　流血の街

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　恐ろしい映画である。秀作。
　鑑賞後に暗然とした気持ちになることは請け合いだ。
　タイトルが示すように、「お葬式」である。なぜそのマフィアの若者は死ななければならなかったのか、過去と現在を行きつ戻りつしながら描かれてゆく。不況下の労働争議の背後に蠢くマフィアという、必ずしも目新しいわけではない物語なのだが、素晴らしい演技陣の魅力が息詰まる、濃密な人間ドラマとなって、次第にギャングもの、バイオレンスものというジャンルから映画は乖離し始める。
　フェラーラの映画は、いつも傍役まで役者の顔がいいけれど、この作品はほんとうにうっとりする。ヴィンセント・ギャロはどんな映画でも大抵魅力的でないが、この映画ではなかなか素晴らしい。ベニチオ・デル・トロ、クリストファー・ウィーケンは当然というべきか。大学出のギャングの妻という設定のアナベラ・シオラが深夜に悪態をつく長い場面などほれぼれしてしまう。
　しかし圧巻は、クリス・ペンとイザベラ・ロッセリーニの夫婦だろう。緊迫感溢れるふたりのシーンには、一見不可解な本作の衝撃的なラストのヒントが隠されていると思うのだが、愛情ゆえに暴発を抑えきれなくなっているペン、彼を恐れながら慈しむロッセリーニの見事な演技には、ほんとうに心を揺り動かされるのである。７５点。

　新年明けましておめでとうございます。

　２００８年最初のレビューはよふかっさんのレビューで興味を持ち観てみた重厚な本作『フューネラル／流血の街』。
　けっこうお気に入りの『ボディ・スナッチャー』（よふかっさん評はイマイチでしたか）のアベル・フェラーラ監督に、クリストファ・ウォーケン、クリス・ペン、ベニチオ・デル・トロ・・・ああ、何でこれまで観逃してたんでしょう。
　これもよふかっさんレビューで知ったタイトル『フューネラル』のとおり、葬式の場面から始まる本作は、呆然とする結末に至るまでダレることなくじっくり魅せてくれます。で、間違いなく暗然とした気持ちになります。
　それはともかく、これまであんまり気にしていなかったヴィンセント・ギャロを含め、先の３人はもちろんアナベラ・シオラ（ゆりかごを揺らす手）、イザベラ・ロッセリーニら俳優陣が皆とても良かったですね。惚れ惚れです。なかでも、クリス・ペン（本作でヴェネチア国際映画祭の助演賞を受賞）。３兄弟（ウォーケン、ペン、ギャロ）の次兄という役どころで、とりわけ兄弟に対する思いの激しい男を好演。終盤は特に独壇場。・・・けれど、彼はもうこの世にはいない人なんですね。もし存命なら個人的に屈指の名バイプレーヤーだと思っているジョー・ペシになり得た人なのにと一人ブルーな気分に陥ってしまいました。
　なにはともあれ、よふかっさん、ありがとうございました。

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ビリー・ホリデイのヴォーカル「Gloomy Sunday」をバックに
一台の棺を乗せた車が近づいてくる。
街路の情景、車の型など古き時代感（'30ｓ後〜40頃）が漂い
既に何やら傑作という名の香気がしてくる。
屋敷に運びこまれた棺の主、若い男の人生の終焉から始まる物語。
長兄は復讐を口にし、血生臭い抗争が火蓋を切るかと見守れば見当違い、
末弟を殺され、一気に吹き上がる家族内の壮絶な精神の闘争であった。
そこにはキリスト教的象徴が絶えずつきまとう。
信仰と家業の矛盾（或いは符合）それゆえ生まれながらに
苦悩を背負い続けた人間とその家族の悲劇を綴る。

イタリアンマフィアの伝統的やり口に暗殺前、見逃してやる旨の免罪符を
口頭で渡すというのがある。（Godfather seriesにも再三みられた方法）
一番の狙いは相手を油断させる（防御を軽減させる）事にあるが
殺害前に本音を吐かせ、念には念を押す為でもある。
慈悲と勘違いした被暗殺者は真実を明かしてしまう。
神父の包容力にも似た、その威厳が成せる説得力で。

その場面ではC・ウォーケンもなかなかの貫禄であった。
当時は数多と存在したであろう群小ギャングの長であるが
その一家を本質的に支え切れていない弱点も痛々しく演じている。
更に、そういう隙間から微妙に突いてくる妻（アナベラ・シオラ）との葛藤、
対照的に対峙する次兄（C・ペン）と妻（イザベラ・ロッセリーニ）、
この夫婦間の運命共同体としての憂いに満ちた空気が、やがて膨張の極に達する。

鬼気迫るラストシークエンスは圧巻というほか無く、ロッセリーニの
腰が抜け、もはや這い回るしかない仕草に至っては鳥肌が立った。
この暗澹たる光景後、エンドロールにJazzyな音楽という表現センスに、またやられる。

ベニチオ・デル・トロ、クセのある敵役が奏効していると思う。
クリス・ペンを遺された作品でしか観られないのは非常に残念。
くせ者揃いの本作だが（家族内の）主要人物の誰もが主役になりうるように
解釈の幅があり、その度量も並じゃない事は確かだ。

イケメンのVincent Gallo 、セクシーなBenicio Del Toro 目当てに借りました。NEW YORKマフィア一家の物語で、暗〜い話やなぁと思いつつみてましたが、「極道の妻」役の二人はゴージャスだし、ラストの大どんでん返しはなかなか見ものでした。次男役のChris Pennはショーン・ペンの弟なんですねぇ。おデブちゃんです。

クセの強い俳優が何人も出てくるマフィア映画。

ただ、犯罪行為の起承転結を映しているのではなく、命のボーダーラインのあたりでフラフラと悩み苦しむマフィアの姿を追っている。
「葬式」という意味の題名のとおり、黒っぽい画面と湿っぽいストーリーの中で悩む男たちがとにかく渋い。

死と隣り合わせの立場にある恐怖感が、強面たちの顔の中で鈍く光っている。
命について深く想うＣ・ウォーケンが秀逸だったが、凶行に及んだ後、子どもみたいな表情で泣きつつ微笑むＣ・ペンの姿は、胸をえぐられた。

個人的には「ベニチオ・デル・トロ」がＭＶＰです