白い嵐

ある人が言う。「映像の美しさは映画へ評価とは言えない」と。
またある人は言う。「CGで映像を誤魔化している」と。
本当にそうなのだろうか？私はそのようには思わない。ただその評価の基準の違いがどこから来るのかを考えてみると映像のリテラシーから来ているのではないだろうか。
例えば文章で考えてみよう。私達は映像に較べると文章を書くというリテラシーは学校教育もあって備わっている。そしてそのリテラシーが備わっているからこそ自分には書けない素晴らしい小説やエッセイなどに対して称賛し、その価値を認めることが出来るのだ。しかし映像の場合はこれまでその制作は撮影から編集備まで含めると数億円にのぼる機材投資が必要で誰でもが手軽に行えるというものでは無かった。それがこの10年ほどの間でデジタル技術による民生機カメラの画質向上とＰＣでのノンリニア編集の普及により、一般でも優れた映像を作り出せる環境が整って来た。ようやく誰でもが映像のリテラシーを身につけられる状況が整って来たのだと思う。

多くの人が映像のリテラシーを身につけるようになれば、映画への評価は大きく変わるだろう。「映像や美術の美しさ」や「CGで無ければ実現不可な表現」というファクターも映画の重要な要素として再認識されるのは間違いない。
映像なのでその連続性や脚本などの要素も重要なのは当然だが。

さて本作、美しい映像を紡ぐことには定評のあるリドリー・スコット作品の中ではとてもマイナーな存在。
リドリー・スコットは『光と映像の魔術師』などと呼ばれているが、この映画の中でもその魅力は十分に発揮されている。そしてこの作品で監督は人物の描写に関してかなりの気を配っている。どちらかと言うとリドリースコットは人物描写に関しては弱いと思われてきた。確かにそうした傾向もあるのは事実だと思う。しかしこの作品もそうだが『テルマ・アンド・ルイーズ』でも、その苦手と言われる部分を克服しながら常に前進する姿勢には感嘆せざるを得ない。安易に泣ける映画をつくろうと思えばそう難しいことでは無い。しかしリドリー・スコットはその安易さに走らずに、映像の力で人に感情を喚起させようと常に試みている稀有な存在だと思う。
リドリー・スコットの描く美しい映像はいつも見ても素晴らしい！

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レビューの総論は、私が尊敬するJUCEさんと同見解。
ある意味Ridley Scott監督で一二を争う地味作品。当時は「1492・コロンブス」が駄作と一方的に決め付けられ、出来に賛否は有るが「グラディエーター」で復活するまで、随分と年数を擁した。
そんな停滞期の佳作と言える本作は、大作には無い静かで厳かな感動が味わえる好篇。

ご注意願いたいのは、本作はディザスター・ムービーでは無い。DISCASのイントロダクションでは「パーフェクト・ストーム」？と思うが、本質は全然違う。レンタル店でもパニックの棚に並ぶ事も多い。凡骨な区分けだが、人間ドラマとしてお薦めしたい。

物語は前半が大海原の航海編、後半が法廷劇の2部構成。実話をベースに語る割に御仕着せな感動作に留まらないのが魅力。青春ストーリーに不可欠な、勇気有る行動とか友情の大切さ、訓練を通じた人としての成長など、過不足無く描かれる。
少し演出的に弱い気もするが、其処は監督がRidley Scottなので(笑)。描かれる人間模様は結構熱いが、カメラがCoolに冷めてる気配も感じる。パニック映画(では無いが)を描く上で何時も問題と為る、スペクタクルとヒューマン・ドラマのさじ加減が本作はバランス良く配分されてたと好意的に評価したい。

強いて言うなら、もう少し登場人物の掘り下げを深く描いて、感情移入し易くする工夫は必要と思う。とは言え監督らしい、ダイナミズム溢れるカメラも一見の価値が有る。
但し今なら動物虐待で抗議が来るかも(笑)。

本作の良い点は始めから「感動作を作って観客を泣かせる」と言った後ろ暗い(笑)根性が感じられない点だ。其処を突き放した視点と見るか、客観的に描いた演出と見るかは人其々。私は本作のスタンスは嫌いじゃない。


※最後になりましたが、私の2007年Best-10です。

1位　BLADE RUNNER/The Final Cut
2位　SICKO
3位　PAN'S LABYRINTH
4位　THE LIVES OF OTHERS(善き人のためのソナタ)
5位　TSOTSI
6位　SHOOTING DOGS(ルワンダの涙)
7位　VOLVER
8位　THE SECRET LIFE OF WORDS(あなたになら言える秘密のこと)
9位　INLAND EMPIRE
10位 THE UNKNOWN WOMAN(題名のない子守唄)
次点 PARADISE NOW

2007年はメジャー・スタジオの凋落振りが顕著でした。

実話を元にしているだけにラストに関しては好き嫌いがあるだろうし、大きく盛り上がるという話でも無い。
『いまをいきる』と類似を指摘する声も多く聞かれるので、彼の映画が好きな人には必見か。
また海洋物としてなかなか素晴らしかったラッセル・クロウ主演の「マスター・アンド・コマンドー」と同じく、ガラパゴス諸島が舞台となっているが、秘境の美しさを描いた点ではこの映画の方が優れている。
派手さは無いが青春群像劇としてなかなかの佳作。
難を言えば群像劇にありがちな、個々のキャラクターの描写が薄い部分。ぼうっと見ていると誰が誰だかわからなくなってしまう。逆に際立っていたのがジェフ・ブリッジス演じる船長。さすがに名優と言われるだけの熱演を披露している。

ラストを飾るスティングの「ヴァルパライゾ」という曲が素晴らしく、映画にマッチしていている。それもそのはずでスティングがこの映画のために書き下ろした曲だ。船員が島での記録にサインするシーンに使われているが、とても感動的な場面だ。

でもなんでこの映画が「アクション」に分類されているんだろう。「ドラマ」ですので皆さんお間違いなく。

　個人的にこういう映画が大好きなんです。青春というか友情というかこういう熱い映画は、本当にいい。すばらしい。いろいろな悩みを持つ少年が船長の厳しさの下、大人になっていく姿にジーンときました。彼らがつかんだ経験とそこで起こった体験は、周りの人には到底理解できないものかもしれません。TRUE STORYであるので亡くなられた息子の親の気持ちもわからないわけではないが、船長を許してやってほしい。
　この映画が好きな人は、『いまを生きる』も観てほしい。（ちょっと似ている。）
【注意】このDVDにchapterがないので途中で止めてしまうと大変なことになります。

って「海猿」に恨みがあるとかではなく、海猿も好きなんですけど、この作品の方が感じるものが大きいなぁと思いまして。

少年達の困難を乗り越えて結ばれた絆。
信頼し合えた時に生まれた師を尊敬する気持ち。

白い嵐が起きたその後には・・・

観終わった時には、心が震えるような感動と、大事な何かが心に残ることでしょう。

実話ということもあり、中学生の時に観てすっごく感銘を受けたので、もしも自分に子供ができて中学生くらいになったら、絶対見せてあげたい作品です。