ナイト・アンド・ザ・シティ

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リメイク作品が往年のオリジナル作品を凌駕するのは至難の業。
時代に迎合しちゃいけないし、かといって現代的感覚で勝負しなけりゃ意味なし。
その加減が本当に難しいと思う。それでもオリジナルの良さをスポイルする事なく
独創的に仕立て直したものに面白いものがあります。

それらの作品の共通項は何かしら最低限度の引用ルールを踏まえた上で再構築してた事、
と改めて気付かせてくれた本作には鷹揚な心で感謝こそすれ非難など・・・
が、エンドロール、目を疑ったDedicate to Jules Dassinの文字。酷い作品を自ら貶めた格好。
こんなん捧げられた日には、もう笑うしか無かっただろうと思われ・・・

元来、ジェラルド・カーシュのピカレスク小説の映画化、20世紀FOXのフィルムノワールですが
赤狩りで米国を追われるジュールス・ダッシンが欧州へ渡る寸前、ロンドンで撮ったのが
「Night and the City」（邦題「街の野獣」)であり特に終幕など差し迫るものがありました。

ソーホーの暗黒街を舞台に一人の男の破滅を描いたフィルムノワール、
それが何故、無責任男シリーズの様な喜劇になるのか。
テムズ川での悲劇がどーして、スーダラ節的Ｃ調エンディングなのか。
いったい何をもってリメイクと謳っているのか理解不能。パロディだって笑えない虚しさ。

無責任男シリーズは（ＴＶで1,2本観ただけで大きな事は言えませんが）
高度経済成長期のサラリーマンの悲哀を（植木等さん演じる平均・たいらひとしを通し）
笑いに昇華させたものと心得ますが本作の場合、環境がそうさせるのではなく
主人公の性根（商魂でもいいが）そのものが更生の効きそうもない無責任。
ただ口八丁の薄っぺらさのためヘマをしでかしても同情し難い。

オリジナルのハリー（R・ウィドマーク）が憎みきれないろくでなしだったのに対し
デニーロのハリーは真のろくでなし、この違い。
彼女役ジーン・ティアニーの健気さと薹が立ちすぎたジェシカ・ラングの違い。
（デニーロとの路上sexシーンも汚い物に触れたような後味。「郵便配達は・・・」と勘違いしている演出）

アーウィン・ウィンクラーの人物描写に深みが無いのは、ある程度予想していた。
プロデューサーとしてのキャリアにはちょっと目を見張るけど
自らメガホンとりこれで２作目、やはり主役にデニーロを配した「真実の瞬間」同様
いやそれ以上に首を捻ってしまう結果。

容易には察せられないシガラミというのもあるんだろうけど
デニーロには、こういうへなへなしたのには出て欲しくないです。
ほんとに「ハイそれま〜でよ」と思いました。