ウエディング

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

　結婚というものをシニカルに笑いのめしたコメディと記憶していたけれど、久しぶりに見直してみると、意外にドタバタもあり、むしろこれはナンセンスコメディと言ったほうが近いのかもしれないと思った。
　なにしろ、結婚パーティは新郎側の老当主（リリアン・ギッシュの瞳は相変わらず大きくて可愛い）が死ぬところから始まり、花婿は花嫁の姉とデキていて、花嫁の母はパーティ中に口説かれてよろめき、親族の多数はマリファナか麻薬に溺れており、医者はアル中で司教はボケており、花婿の友人はマザコンかホモで、招待した客にはみな断られ一人だけしか来ない、警備担当者は誰彼かまわず殴りつける。
　もう滅茶苦茶だ。
　みんなどこか壊れている。
　けれども（自分の経験でもそうだけど）結婚パーティというものは、つつがなく続いていく、いかなければならないのだ。だからこの宴は、脱線にむかって突っ走る列車のようなものである。
　であれば、パーティがはねるラストには、盛大なカタストロフが期待されてしまうけれど、映画は花婿の父が楽しげに故郷イタリアに向け逃亡するという静かな幕引きを選択した。よろめき妻のキャロル・バーネット（好演！）も、結局家庭を壊すことはなさそうだ。
　このあたりは、評価が分かれるところだと思う。僕はちょっと予定調和に感じられて、やや残念。ただ、このラストだから本当にドタバタに堕ちることもなかったといえるのかもしれないけれども。
　ともかく、『ポパイ』以前、『ザ・プレイヤー』以前のアルトマンは、こんなにも一作に過剰な笑いを詰め込むことが出来たのだということを再発見。
　ほんの少し設定に共通項のある『ゴスフォード・パーク』のような端正さはないけれど、観るものの神経にピリリとくるような、凶暴なコメディなのだった。８０点。

『カミュなんか知らない』のレビューを書いたことをきっかけとして、『ザ・プレイヤー』などの彼の旧作を見直したり、新たに観たりしているのですが、改めて彼の力量と彼の作品の独自性に感心しています。アメリカ映画(界)って、愚にも付かない作品を量産する一方で、アルトマンだとかカサヴェテス、ジャームッシュと言った極めて独自性が高く、映画史的にも重要な作家を生み続けているんですよね。さすが、追従するもの(国)を許さない世界随一の映画大国なだけはあります。もっとも、上記に上げたような観るべき作家達って、ハリウッドからの脱落者(アルトマン、ニコラス・レイなど)とか、東海岸(の連中カサヴェテス、ジャームッシュ)だったりするんですけど・・・。

今現在はアルトマンにすっかりいかれちまってるので、何を書いてもファンの戯れ言になってしまうのでしょうし、書き出したら止まらない気がするので敢えて、傑作である、と言うに留めておきます。よふかしさんの的を射たレビューに詳細が記されていますから、これ以上駄弁を費やす必要もなさそうですし。

確かに、断片化され、収束することなく、であるが故にまとまりが感じられないとは思うのですが、実はこの散漫な様こそがこの作品の、いやアルトマンの特筆と言えるのですからこれはもう慣れるしかないのです。慣れるというと我慢すると同義のように聞こえるかもしれませんがそうでなくて、より多くのものを得るために多少の努力は必要だと言うことに過ぎません。スポーツだってそうでしょう? テレビ・ゲームですらそんな要素はあるのですから、映画には何の努力も不要だなんて理屈はないはずなのです。

---------------------

と言うことで、またまた私信的な書き込みになりますが、『三丁目の夕日』で過分なコメントを頂きありがとうございます＞よふかしさん。以前、『アラビアのロレンス』のレビューで揶揄されたことがあるので(笑)、嫌われていると思いこれまでコメントすることはありませんでしたが、実はよふかしさんは、ラヴァ様、オタエ様と並び、素直に敬意を感じていたレビュアーでした。いつも楽しくレビューを拝見させていただいいます。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

スポットレンタルチケットで、アルトマンの「ザ・プレーヤー」とこれを借りました。
こちらは初見。ミア・ファローがものすごく若いのでびっくりしのですが、１９７８年と結構古い映画だったのですね。

「ザ・プレーヤー」と違って、こちらは完全な群像劇。慣れるのにちょっと時間はかかりましたが、登場人物がどんどん増えてゆくのに不思議と混乱することはなく、半分すぎた頃から俄然おもしろくなってしましました。
かなりの上流家庭だと思うのですが、家族も結婚披露宴の出席者もみんな滅茶苦茶な人たちです。
だいたい花嫁が全然かわいくない。花嫁の姉は「花婿の子供を妊娠している」と言い出すし、花嫁の母は言い寄られて簡単によろめいてしまう。新婦はボケ老人（言葉が悪くてごめんなさい。）だし、花婿はゲイだったり。
登場人物の行動に呆気にとられながらも、楽しくみることができました。

今年もいろんな映画をみることができました。
特に、自分ならきっと選ばないだろうという映画を教えてくださったレビューアーの方々に、お礼申し上げます。
来年もよろしくお願いします。

　アルトマンは自分にとってやや不思議な映画作家で、好きなのか嫌いなのか良く分からないというポジション。アンチ・ハリウッド的な作風は間違いなく「好き」なのだけど、映画自体にものすごく惹きつけられるかと言うと、そうでもなくて、ＤＶＤ鑑賞だとすぐ眠くなってしまう。んで何度も中断してちょこちょこ巻き戻したりしながらようやく最後まで観て、いつもいつも思うのは「ああ、アルトマンだなぁ」と。

　ｐａｒｏｌｅさんが「慣れる」「我慢」「努力」という言葉を使っていらっしゃいましたが、まさにそんな感じで、「より多くのものを得るために」という結論に大きく頷いてしまうのでした。

　例えば、純文学なんかを読んでいると、遠まわしでまだるっこしい言い回しが延々と続くばかりでお話がなかなか進まなくて、だんだん訳が分からなくなってきたりする。ところが、我慢して読み進めていくうちにフッっと視界が開けたかのように物語の“世界観”が突然イメージとして広がったり、或いは、言葉の魔術とでも言いたいような見事な比喩、表現に打ちのめされたりと、感動的な読書体験を得られたりする。映画でもそういう類の作品があって、私にとってはアルトマンもそういう中の一つかなと。この映画では、パーティ会場になるお屋敷の馬車回しに、車が次々と乗りこんできてグルグル回る俯瞰ショットにちょっとやられましたね。

　結婚式＆披露パーティの１日を描いたこの作品、祝祭事＝「ハレ」＝「聖」のはずが、フタを開けてみれば登場人物たちみ〜んな壊れてて、インモラルなエピソードのてんこ盛り。「ケ」＝「俗」にまみれた世界をこれでもかと見せつけられる。でも、そういう愚かしい人間のあり様を笑いのめすとか浮き彫りにするとか、そんな切り口ではない感じ。よふかしさんが「ナンセンスコメディ」と評されていたように、単純にフレームの中の騒々しい出来事を面白がればいいのかな、とそんな風に思いました。

　あとは、お屋敷の中で繰り広げられるドタバタの恋愛模様という点で、ジャン・ルノワールの「ゲームの規則」（３９）が思い出されて。カメラの動き方とか、人物紹介の手さばきとか、アルトマン節のルーツはここにあるのかなぁと思ったり。いや、この辺は勉強不足でちょっと自信ないのだけれど。

　遺作の「今宵、フィッツジェラルド劇場で」（０６）も、ワクワクとか、感激・感動〜とか、そういう感慨ではなく楽しんだ。「あぁ、アルトマンだなぁ」という、独特の作品の手触りを慈しむ感じ。
　嫌いではないから、やっぱり好きなのかな、たぶん。

結婚式、というか、セレモニーのあとのパーティーというのは
そもそも滑稽な騒ぎではないか
それを軸に、結婚式と結婚そのものの滑稽さをアルトマンの冴えわたるユーモアがおもしろおかしく痛烈に描き出す

この映画を観て、結婚式（披露宴？）、やりたくねーなぁ
と思うのは私だけなのだろうか　
そもそも結婚式になんの夢も抱いてはこなかったけど

あれこれ言うより観たほうが早い　で、楽しんでください
ユーモアのない人は見ないでね