恋人よ帰れ！わが胸に

ジャック・レモンとウォルター・マッソーの名コンビ誕生となった記念すべき作品です。
レモンは毎度おなじみの、心は優しいが気の小さい男を演じ、マッソーはその義兄の、悪徳弁護士と呼ぶにはあまりにも小者すぎるうだつのあがらない男に扮しています。
取材中に事故に遭ったカメラマンのレモンをマッソーが重体に仕立て、１００万ドルの損害賠償請求をしようとするのですが、レモンは納得していません。そこでマッソーはレモンが金持ちになれば、彼を捨てた妻が戻ってくるに違いないと、レモンをそそのかすのですが．．．．．
とにかくレモンとマッソーの、息のピッタリ合った名演技は最高で、才人ビリー・ワイルダーといえども、彼等２人に演出はいらなかったのでは．．．と思えるほどのコンビぶりです。

ビリー・ワイルダーのコメディは、女性が魅力的だといつも面白いが、この映画では嫌気がさして別れた元夫が受け取りそうな賠償金を目当てに戻ってくる元妻という設定のジュディ・ウェストがとっても魅力的だ。

夫（ジャック・レモン）は真面目だがつまらない男だというのが彼女の登場ですっかり分かる。頭のめぐりも悪いこんな男に、この賢い女がいつまでもくっついているわけがないな、という説得力がある。

コメディの面白さと言うのは、人間の真の姿を映し出すところにあると思うのだが、この映画に息吹を与えているのはこの憎めない悪女、ジュディ・ウェストだ。きれいな人だが出演作がほとんど無い。

最後はどうなるのか、ビリー・ワイルダーは飽きさせずに引っ張ってくれる。
典型的金髪美人悪女映画だ。ジュディ・ウェストを観たい人には超お薦めする。

※邦題は恋人よになってるが、実際は元妻よ、だ。だからロマンチックなストーリーを期待したら大ハズレです。

40年前の話とはいえちょっと道徳的すぎるお話には正直余り乗れなかったのですが、ジャックレモンの体技、ウォルターマッソーのマシンガントークと十八番はたっぷり見れますし、細かいギャグも沢山詰め込まれていて2時間5分見飽きません。安心してお楽しみいただけます。

1966年　アメリカ映画
原題：THE　FORTUNE　COOKIE
監督：ビリー・ワイルダー

ジャック・レモンとウォルター・マッソーがコンビを組んだ第一作目。
笑わせながらも、大事なものは何か？をきちんと描いていて、ビリー・ワイルダーはこういったほのぼのコメディ得意ですね。

アメリカン・フットボールのTV中継中にカメラマンのハリー・ヒンクル（ジャック・レモン）は黒人選手のブーン・ブーン・ジャクソン（ロン・リッチ）にタックルされて病院に搬送されてしまう（ここ、思わず日大のタックル事件を思い出してしまった）。
幸い軽傷で済んだが、ハリーの義兄で弁護士のウィリー・ギングリッチ（ウォルター・マッソー）はこの件で巨額の賠償金を手に入れる事が出来るとにらみ訴訟を起こそうと言い出すのだった。ハリーが脊椎を傷めて、体のあちこちが麻痺した事にしようというのだ。
始めハリーは、そんな事は嫌だ！と首を縦に振らないが、元妻サンディ（ジュディ・ウエスト）と寄りを戻せる絶好のチャンスだと言われ、渋々その気になるのだった。
元妻のサンディもハリーを心配して現れるが、本当の目的は・・。

序盤ジャック・レモンに対してウォルター・マッソーの有無を言わせない圧倒的な長台詞に驚く。その後の展開も私立探偵と対立する悪徳弁護士っぷりが板についていて面白かった。アカデミー賞助演男優賞を受賞したというのも頷ける。
レモンとマッソー、この２人の掛け合いはアドリブじゃないのかと思わせる程息が合っていて、これがコンビ第一作とはいやはや恐れ入りました。ハリー役のジャック・レモンは相変わらず人が良い小心者な感じが上手い。彼の本音が最後の最後に爆発して観終えた後味は気持ちが良い。ハリーを心配して病院に訪ねてくるアメフト選手ブーン・ブーン・ジャクソンを演じたロン・リッチは実際にオハイオ州クリーブランドに本拠地を置くNFLチームに所属したアメフト選手だった様です。
私は「恋人よ帰れ！わが胸に」という邦題タイトルから、ラブコメかと思っていましたが、そうでもない感じです（ラブコメ的な雰囲気は確かにありますが）。
この原題“フォーンチューンクッキー”が出てくるシーンを探しながら観るのも面白いかもしれません（コメント欄にネタバレしています）。

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小気味好く、章仕立てになっていて、好感がもてる。但し、笑える場面はあまりなかった、。マッソーは年をとってからの方が何かいい。うまくまとまっているという感じ。しゃれた感じはいつも通り。ただ、傑作とは言えない。ジャック・レモンは、もっと笑わせる使い方ができそうなのに。