ハンナとその姉妹

　主演がミア・ファローだったし、ず〜っとレンタル待ちになっていて、いい作品に違いないと、またうっかりウッディ・アレンを見てしまった。

　ハンナとその姉妹を取り巻く込み入った人間関係を素材に、俗悪とは縁のない芸術作品創ってみました、という映画。苦笑や皮肉を交えながら、確かに、さりげなく技巧を凝らして精巧なフィクションに仕立てている。喜怒哀楽はまるで額縁に入った絵のようで、とても知的だ。時間の扱い方もさすが。

　なぜプライド過多の、ひとこと多い、嫌みな奴ばかり出てくるんだろう。偽悪ぶって、愛なんて信じないふり。そしてそのポーズが高じて、愛を冷笑してしまうんだ。斜に構えて笑いとばすふりをしているが、インテリ体質の実に悪い見本のよう。趣味はよく、それが高尚に見えてしまうので、なおのこと始末に負えない。

　要するに、ウッディ・アレンとは相性が最悪だということ。敬して遠ざけるに限る。（ファンの方、ごめんなさい。）

繰り返し観るほどに良い映画だなあ〜と思う。ウッディアレンが真面目に作ったらこうなる。

ニューヨークで暮らす三姉妹を取り巻く人間模様を描いた、シニカルな人間ドラマ。

女優として成功しているハンナ（ミア・ファロー）は三姉妹の長女。父（ロイド・ノーラン）と母（モーリン・オサリヴァン）も元俳優という芸能一家に育った。そして、夫エリオット（マイケル・ケイン）との家庭生活も大切にしていた。彼女の妹ホリー（ダイアン・ウィースト）は売れない女優で、末妹のリー（バーバラ・ハーシー）は年の離れた画家フレデリック（マックス・フォン・シドー）と同棲している。身内一同が集まる感謝祭のパーティで、エリオットはリーに夢中となり、強引なアタックを開始した。ハンナのことを気にしつつ、２人は密会を重ねる。一方、ホリーはハンナの前夫ミッキー（ウディ・アレン）と親しくなり、女優をあきらめて作家に転向するが．．．

三姉妹に関わる男たちとの、いわば「ややこしい関係」が描かれるが、最終的には落ち着くところへ落ち着く．．．という感じ。

アカデミー賞の作品賞にノミネートされた本作は、助演男優と助演女優の両部門でオスカーを獲得している。
女優志願の陽気な次女ホリーを演じたダイアン・ウィーストが助演女優賞。元々は舞台女優で、ウディ・アレン監督作の常連でもある。ホンワリとした温かみのある表情と演技が惹きつけられた。
そしてマイケル・ケインが、いつもながらの軽妙な演技（且つ、存在感がある）で助演男優賞を受賞している。

ハンナの母を演じたモーリン・オサリヴァンは、知る人ぞ知る「ターザン女優」。
かつて、ターザン役のジョニー・ワイズミューラー（古い！）と共演した彼女も、本作出演時は７５歳。そして本作主演のミア・ファローの実母でもある。

ウディ・アレン映画は、一般的に好き嫌いが分かれるといわれている。
それはともかく、更なる共演陣には触れておきたい。
上述の数々の名優に加え、キャリー・フィッシャー、Ｊ・Ｔ・ウォルシュ、ジョン・タートゥーロ、リチャード・ジェンキンス、ダニエル・スターン、さらにノン・クレジットながら、サム・ウォーターストーンまで出ている。

三姉妹、みな個性的でいいが、個人的には、やはりダイアン・ウィーストに投票してしまう。

うーーん・・・これ面白いんだろうか。三姉妹にからんだ恋愛劇を描いているんだけど、特にこれといった面白さのない展開。意外性があまりなく、そして、そこから派生する事件があるわけでもなく。ただただ男と女が好きになった、嫌いになった、ということだけを描いています。

いや、現実だったらもっとドロドロしているだろ、特に中年になったら、こんな感じの話が穏便に済んでいくわけがない、と思ってしまうのですが、ウディ・アレンは彼なりの世界観で淡々と描きます。

ですんで、観終わっても何も残りません。三姉妹の誰かに感情移入して「幸せになれてよかったね。」なんて思って終わるのが、恋愛劇の定番だと思うのですが、そんなのがないんだなぁ。

裏側とかを知らない恋愛を、となりの家のおっさんが眺めているそんな感じの映画でした。ただ現在の繁栄になる直前の、ちょっとくたびれていたNYの雰囲気は良かったです。

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アレンの最後の長回しのセリフの一節。

神はいなくても人は生きて死ぬだけだ
人生を楽しめばいいんだよ
何も深刻に考える事はない
だから暗い人生を送る事はやめて
ないものねだりの答えも求めず
命の続く限り楽しむんだ
その後の事は誰も知っちゃいない
そんなあやふやな事で悩まなくていい
今が大事なんだ