真夜中のカーボーイ

アンジェリーナ・ジョリーの父ちゃん、
ジョン・ヴォイトがめちゃめちゃ若い！
ついでに言えば、もちろん、ダスティン・ホフマンもめちゃめちゃ若い！　
さらに言えば、2人ともごっついええ演技してはります。

全編通してすごく印象に残ったのは、
ジョン・ヴォイトの顔の演技です。
困ったような、切ない顔をよくするんですが、ほんまに捨てられた子犬みたいな顔で、感情移入してしまいます。

で、主題歌聴いてびっくりしたんですが、
この有名な曲が、この有名な映画の主題歌だったとは！
って感じでしたね。

アメリカン・ニュー・シネマの傑作と言われる作品ですが、
ストーリーは少しあやふやな部分も。
ラストには2人の友情がうかがえるのですが、どの時点で2人が友情を見いだしたのかが私には理解できずで…。
とにかく2人の演技が見どころっす！

っていうか、ジョン・ヴォイトとアンジェリーナ・ジョリーは似てない親子だなぁと思ってましたが、
若い頃のジョン・ヴォイトは、ちゃんと娘さんに似てました。
これも新発見！

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１９６９年、アメリカではまだヴェトナムにアメリカ軍は駐留しており、アポロ11号の月面着陸成功、日本では東大で安田講堂占拠代表される学生運動まっさかり。中国とソ連で国境紛争があっており、ジョンとヨーコがベットインで平和を訴えたのも、この年であったようです。
いやあ、すげえ。
それから、７年後に生まれた私でも、その時代を象徴した事柄として、すぐ思い浮かぶものばかりです。
でも、事柄を後から知るっていうことと、その時代を知るっていうこととは、まったく別のものです。この映画を観て、それをつくづく感じ、その時代を思う存分堪能できないことを残念に思いました。

カウボーイスタイルできめたジョン・ボイド扮するジョーが、ＮＹ行きのバスへ乗り込むため歩く後ろに、ニルソンの「うわさの男」が流れています。あーこれかーと感動。オープニングから悩殺されました。

ジゴロで成功しようと目論見、テキサスからＮＹへ意気揚々と向かうものの、逆に娼婦にふんだくられ、道端で人が倒れていても、誰一人足を止めないＮＹで戸惑うジョー。
ダスティン・ホフマン演じるラッツォ（リコ）と出会い、斡旋人を紹介すると言われるが、それも騙され金をふんだくられ、滞在資金も底をつき、街をさまようだけになってしまうが、またラッツォと再会し、ふたりで廃墟で暮らすようになります。お金がたまったら、フロリダで暮らすラッツォの夢を聞いたりして、都会で寄り添い暮らすふたり。そのうち怪しげなパーティで出会った女性をきっかけに、ジョーはジゴロへの成功をつかみかけますが、ラッツォに病魔が襲い出して、ジョーが強奪した金を元手に二人へフロリダへ向かい・・・。

ストーリーはわかりやすいのですが、映画の中では多くを語られません。主人公ですら、自分の気持ちを吐露するシーンはほとんどありません。観ているこちら側が察するだけです。彼らの過去や未来への思いも、彼らが見る寝ている時の夢や想像の中から思い図るだけです。
ラストもこれは、ハッピーエンディング？それともバッドエンディング？？
答えがない気がするのです。そういう映画？それとも、やはりその時代を知らない私には、わからないのかしら？
ああ、その時代に生きていれば、ああ、せめてその時代を知ってさえいれば、その答えが出てくる時がくるのでしょうか。それがわかるまで、何回も、この映画を観てしまいそうです。

わたしにとっては、アンジェリーナの父ちゃんであり名バイブレーターであるジョン・ボイドですが、ただのカウボーイ姿の田舎者をあれだけ含羞ある人物と演じる姿は圧巻。すごいの一言です。今も名俳優でトップスターのひとりであるダスティン・ホフマンですが、今まで観た彼の作品の中で、これが最高だと私は思ってしまいました。ごめんね、ダスティン。でも、「卒業」もこの勢いで観ますから。

時代のエネルギーって、すごいな・・・いや、映画のエネルギーのすごさを今までないほど感じました。

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好きだ！なぜかわからないけど。

牛皮のトランクが、刺繍の入ったシャツが好き。
ラッツォの部屋の壁の、オレンジのイラストみたいなのが好き。
パーティでサラミを持って帰ろうとするのが好き。
昔の服をゴミ箱に捨てるのが好き。
アロハシャツを着せてあげるのが・・・ん、ここからは涙。

その涙もなぜかわからない。
友情というほど大げさなものでもない。
誰が見てもバカなやつらだ。
でも、映画は道徳の教科書でもなければ、数学の計算でもないのだ。
正しく、納得できる答えがいつも用意されているわけではない。
そして、好きというのはたいがい理由などないものだ。

この二人が、この映画が大好きだ。

このゲイっぽいアメリカ映画でいちばん気になったのは、ベッドシーン中にテレビで「ウルトラマン」が放映されているコト。ジャミラたち怪獣が暴れる一方で、男女の身体も激しく暴れる。そのたびに、リモコンを背中かお尻で押してしまい、チャンネルが次々に変わっていくんです。必見。

　過去この賞を受賞した作品は「赤ひげ」「鉄道員」「カビリアの夜」「サクリファイス」「大地のうた」等々。
「ジャンヌダルク裁判」などブレッソン監督作品は４作が受賞。ぜひ見たいと思っているのだけれどまだ機会がない。
「奇跡の丘」「テオレマ」はわかるが「男と女」のどこかカトリック的なのか、疑問もあるけれど、共通の水脈からこれらの映画群が流れ出ていることは、なんとなく察せられる。
　貧しく、愚かで、惨めで、卑小で、社会の底辺を這い回って生きなければならない人間でも、「愛」さえあれば幸せになれる、逆にそういう境遇でこそ、まことの「愛」は輝く。愛は絶望を乗り越える。まことの愛とは、神からの賜り物ではないかと、との思想の泉からくみ出された映画かと。

　取り壊される寸前の廃墟のようなラッツォ（ダスティン・ホフマン）のアパート、もちろん不法占拠、で電気もないから細々と紙など燃やして、ジョン（ジョン・ヴォイト）と二人、暖をとる姿は、世の中からは見捨てられても、見捨てない人間が、一人でもいればいいじゃないかという気持ちにさせる。
肺病が重くなる一方のラッツォに対するジョンの献身は、映画が進行するにつれてより深いものになる。大事なラジオを質入れし、自分の血まで売り、せっかく軌道に乗りかけたジゴロの仕事もフイにし、最後はきらいなはずの暴力に手を染めてまで・・
　二人の間にあるのは性愛としての同性愛かもしれない。似たもの同士傷を舐め合う?もちろんそれもある。でも、ゲイものなんて範疇に括りたくない、気高さを感じないではいられない。とくにラスト、有名なバスの中のシーン、愛の昇華が映画の昇華に重なったような名場面で忘れがたい。精一杯の看取りを受けてフロリダという天国に旅だった男の顔は安らかだった。
　どう見ても賢いとはいえないジョンは、まるで「白痴」のムイシュキン公爵のよう、天真爛漫、空気の全く読めない能天気な男を演じたジョン・ヴォイトの、表情の自然な照り翳りはすばらしかった。いかにも演技というホフマンのリアリティよりも私はそちらを買いたい。

　本作、特異なのはアカデミー作品賞をも受賞していること。普遍的な愛をうたっているだけではない、６０年代後半のアメリカ社会のひずみをも鋭く突いている。
ジョンが意気揚々とやって来たニューヨーク、ティファニーのビルの前の路上に、男が一人、倒れ込んでいても、誰も見向きもしない。見ないふりして通り過ぎる。資本主義の本拠地は生き馬の目を抜くような厳しいところ、田舎者など瞬時で丸裸だ。カウボーイ姿が象徴する鷹揚なアメリカンドリームなどもはやない。だからドロップアウトして浮かび上がれない連中もたくさんいる。片足引きずり病身のラッツォはそちらの象徴的表現か。
　そしてみな孤独である。孤独な人間たちが街をさまよっては行きずりの恋の相手、同性でも異性でも、を探している。
宗教の狂信者もいる。社会のはみ出し者を集めたドラッグパーティーなんかも開かれる。
「毛皮のエロス」のダイアン・アーバスは、６０年代半ば、アメリカ大陸を横断する旅に出て、フリークスやヒッピーや性的倒錯者や、各地の自称「預言者」や、ヌーディスト村の住人、怪しげなパーティーの参加者など、社会の周縁にいる異端者、少数者たちをたくさん写真に収めた。
このジョンとラッツォも、きっと彼女の被写体として選ばれただろうと私は思う。
ジーン・ハックマンとアル・パチーノの「スケアクロウ」７３年は兄弟のようによく似た映画。７９年の「タクシードライバー」になると似ているようで違ってくる。トラヴィスにあるのは肥大化した自我だけ、愛は知らない。