デルタ・フォース

もう２０年前の作品なのでＣＧとかは無し、全て実写の正統派アクションです。そのため、現代レベルで比較すると全体的にアクションが少々地味で物足りない感じがするかもしれません。

でも、リー・マービンの渋い演技が観られただけで私は満足。
やっぱり往年の大スターは貫禄が違います。チャック・ノリスがいくら派手にカッコ良く決めたところで、彼の前では霞んで見えます。

それから、この作品には「エアポート」シリーズではお馴染みのジョージ・ケネディおじさんも出演。あの巨体で乗客の神父役として登場。きっと、元ＣＩＡ工作員とかの設定で中盤あたりからデルタフォースと協力してテロリストをやっつけるんだろうな・・・とか思ってたら、何と最後までただの神父さんでテロリストの言うなり。期待してたのに拍子抜けでした。

でも、チャック・ノリスは強くてカッコ良すぎ。全体の演出が割と渋めなので、彼の派手な活躍ぶりが何だか浮いて見えました。

しかし、なかなかの力作。全編を通じ、緊張感は保たれてるし、この後、実際に激化した中東戦争を暗示してるようでそれなりの重みも感じさせてくれます。

冒頭からの航空機ハイジャックシーンが強烈で、アラブ系ゲリラのアブダル（ロバート・フォースター）とムスタファ（デヴィッド・メナハム）が凄まじい‘悪’を演じて、機内は緊張感に包まれます。
乗客がみな著名俳優ばかりで、ユダヤ系のカプラン夫妻（マーティン・バルサム／シェリー・ウィンタース）、ゴールドマン夫妻（ジョーイ・ビショップ／レイニー・カザン）をはじめ、神父役でなんとジョージ・ケネディが登場。
これでもう満足なのに、キャンベル機長にはボー・ソヴェンソン、チーフパーサーのイングリッド役にハンナ・シグラと、もう言うことない布陣です。　この顔ぶれをみると、これからどういった展開になるのだろう．．．と期待感でいっぱい！！
人質となった乗客を救出する為、米ワシントンのウッドブリッジ将軍（ロバート・ヴォーン／さらに期待感膨らむ．．．）が、アレクサンダー大佐（リー・マーヴィン／更に更に．．．の大期待感）を呼び出し、人質救出任務を行う対テロ特殊部隊デルタ・フォースを招集し出動させるよう命令するのです。　アレクサンダー大佐と、彼の直属の部下マッコイ少佐（チャック・ノリス／あまり興味なし）を中心としたデルタ・フォースと、テロリストの壮絶な闘いの始まりです．．．．
．．．．とまあ、ここまでは相当な期待感で観ていたのですが、あれっ？　何かおかしい．．．肝心なアクションシーンに何か物足りなさを感じたのは私だけでしょうか。　とにかくアクションが単調で、迫力や臨場感がまったく感じられないのです。
７０年代に多く製作された‘エア・ポート’シリーズ＜７０年「大空港」、７４年「エアポート’７５」、７７年「エアポート’７７／バミューダからの脱出」、７９年「エアポート’８０／コンコルド」など＞をみて眼が肥えたせいでしょうか．．．
やはり、これらのシリーズものにあるシリアスな感じがよく出ている作品には遠く及ばないと感じました。　
冒頭の機内の緊張感が素晴らしく、充実したキャスティング（特にＨ・シグラの表情が魅力的）なだけに、チョット残念な気がします。
某誌によれば、本作は１９８５年に起こったトランス・ワールド航空（ＴＷＡ）８４７便テロ事件を元に製作され、ほぼ全てがイスラエルで撮影されたそうです。　ベイルート空港、アルジェ空港、アテネ空港、テルアビブ空港のシーンは全てイスラエルのベン・グリオン国際空港で撮影されたものなのですね。
アラン・シルヴェストリの勇壮なテーマ曲は印象深いです。　また、ノンクレジットながら、リーアム・ニーソン、ケヴィン・ディロンがデルタ・フォースのメンバーで出演していますが、殆ど確認できません。
そうそう、人質となる乗客の中にエレン（ナタリー・ロス）という女の子がいましたね、本当に可愛かった。

ハイジャック事件というと日本では「よど号」などが有名で、テレビが報道特番組んで人質交渉がいつ始まるのか、飛行機をずっと撮り続けていたという記憶があるのですが、そんな中、テロとは交渉しないという欧米各国の態度には人質を見殺しにするのか、という感覚があったのですが、テレビには写らないこんな隠密部隊が人質救出のために動いていたのですね。

この映画は２５年も前の映画ですが、ハイジャックに対して、憲法上の制約とはいいますが警察力しか発動し得ない日本と、国家的危機管理事項として軍隊が関与する諸外国との差を描いてもいます。

そのような現状の制約から逃れられずに憲法を改正できない日本は現実的対応として「攻殻機動隊」で知られる公安九課みたいな超法規的軍隊を組織せざるを得ないのかなあ、と感じていると、この古い映画で描かれたデルタフォースに”バトー”や”少佐”とよばれる人物がきっと存在したのではないか、などと空想してしまいました。

しかし、そういった現実をテーマとしつつも娯楽作品として十分成り立つ出来栄えの作品で、アクションシーンに流れるＢＧＭは耳にこびりつく感じで、つい口ずさんで「カッコいい！」なんて感じちゃいます。

チャック・ノリスのアクションも本格的でカッコいいし、スカッとくるおなじみの爆破シーンも満載です。

感想･総評：ハイジャック･人実救出･カーアクションなどふんだんに詰め込んだアクション作品。変な捻りもなく素直に楽しめる

対象年齢：小学校高学年以上（字幕なので。多少残酷な場面あり。Ｈ場面なし）

食事中に見られるか：無理ではないでしょう

エクスペンダブルズ２を見ると、とても楽しめます。

その頃映画が、まだ戻ってきた・・・やっぱ最強親父軍団の元になった映画は最高です。