ヒッチャー

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さて秋の夜長、スリラーをお探しの貴方にお薦めの作品と言えば此れ！。物語は極めてシンプルで登場人物も少ない。
優れたスリラーの条件で有る限定されたコンポーネンツを巧みに操り、稀代の作品に昇華させたRobert Harmon監督一世一代(そして唯一)の傑作。

劇中で多数のバイオレンスが展開され、そのインパクトは20年以上経った今でも鮮烈ですが、さて何人死んでるか・・・
冒頭から指折り数えれば、両手両足では足りず家族の応援を求める程だが、観客が殺人現場を確認できるシーンは、実は殆ど無い。

本作の特徴は「見せない」に尽きる。これは優れた編集と職人音楽監督Mark Ishamの手腕が大きいが、有名なJennifer J.Leighを引き裂くシーンは、実は存在しない。映画で語られるのはタイヤの効果音だけ、でも観客は「心の目」で目撃した錯覚を憶える・・・これぞ優れたスリラーの醍醐味。

ジョン・ライダーについて諸説有るが、思うに彼はベトナム帰りの軍人で、既に精神を病んでる。一方で優れたソルジャーとして生き延びる術を身に付け、放浪しながら自分を殺してくれる「男」を探してる・・・其処へ主人公ジム・ハルジーが現れ彼の眼鏡に叶う、と。
だから自分を殺すまでは、彼は生き続けなければ為らず、警察の追跡を逃れる手助けもした。そして彼が覚醒する事を信じ、見事にエンディングを迎える・・・主人公が銃でRutger Hauerの髪を撫でるシーンに作品の本質が見事に昇華される。

其処に男同士の愛情を感じる方も居れば、親子愛を感じる人も居るだろう。また殺人鬼の遺伝子の継承と捉える人も居る。
つまり「激突！」に「ターミネーター」をブレンドした作品との批評は当たらずとも遠からじ、でも本質を突いてるとは思い難い。
本作が単純に不条理を描いたサスペンスに留まらない魅力を、観客も肌で感じるから無意識に数多の作品と別モノと考える。
深夜に「煙草」を吹かしながら、1人でじっくり見るには最適な作品、masamune推奨のスリラーです。


※補足※
本作には続編が幾つか。「ヒッチャー�U」は映画で無くOVA故に質も悪いので見る価値なし。「ヒッチャー2004」に至っては紛い物で存在価値すら無い。
米国では今年の1月に正式なリメイクとして「THE HITCHER」が、 Michael Bay制作、Sean Bean主演で公開。日本でも11月に公開予定。
私はUS/DVDのFull Screen Editionを見たけど、納得いかない・・・。

この映画久々に見たいと思ったのにねえ。
けっこう怖くて手に汗握ってドキドキしながら見た覚えありです。
ホラーの怖さより、この手の怖さはリアルでゾクゾクする。
主演のＣ・トーマス・ハウウェル、好きだったなあ。
今はぜんぜんぱっとしなくなっちゃった俳優さんだけど、この人が主演したミスター・ソウルマンがめちゃめちゃ大好きだった！
ＤＶＤになってないみたいで残念(;_;)

初めて観た時のショックが忘れられない。画面を支配するクリアな空気感が心地いい反面、力強い演出で主人公を追い詰めていく容赦のなさ。この監督、この出演者たち、このロケ地、天候、まさしく奇跡的な一本だと思う。演出や計算だけでは為し得ないものが、ここには結実している。ルトガー・ハウアーはいろいろ観たけど、この作品が一番いい。オススメ！

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只今（２０１２年）６８歳のハウワー氏。
『ヒッチャー』のこの時、４０歳前後。
若い引き締まった肉体に脂がのって、水もしたたる…から汗もしたたる狡猾男盛り。
荒野でロングコートにショットガンがこれほどさまになる方はおられんでしょう。

土砂降りのあの道路わきにカフカの『変身』の主人公のごとく生まれ、生まれたからには死ななくてはならない、
その前に遊びたい…遊び相手を探して見つけて、殺さずに捕まえては放し、
いたぶり遊びしながら、最後はその獲物と正面対決し撃果てるまでの、
ルトガー・ハウワーの汗とアブラの鑑賞作品、理不尽さのない純・不条理映画です。

遊びを邪魔するものは排除。警察だろうがヒロインだろうが。
スティーブン・スピルバーグ監督の『激突！』が引き合いに出されますが、
似てまったく非なるもの、あちらはトラック、無機質物体、ジョン・ライダーは有機体。

だから獲物と会話ができて、それがまたとっても魅力的。
名のるまでのあの”間”。
何が望みなんだと聞かれての、あの薄ら笑い…！（あんな風に薄く笑えるのはあなただけでしょう。）
「あの男もそう聞いてきた。さっきの車の男だ。君の前に俺を拾った」
恐怖をそそる言い回し。
「両脚を切り取った、そして、両腕もばらばらにした。
そして、首もな。そして、君も同じ目に遭うことになる」
怖くてわくわくしてきます。
極めつけはレストランでの会話。
ずっと疑問に思っていたことを獲物のジムが聞いてくれます。
「なぜ僕をつけまわす？」そう、なんでジョン？なんで殺さない？
コインをジムの目に押し付け、答える。
洗練された不条理な返答。80年代と言わず、屈指の不条理名シーンと思います。

時々、自ら獲物にやられながら、獲物を成熟させていくところもよいです。
ジムの態度と表情がどんどん変わっていく。
ジムにツバを吐きつけられた時の満足げな顔…究極のマゾヒストが行き詰めてどんでん返り、
最強のサディストになって生まれ落ちてしまったごとく。

ラストの夕陽の美しいこと。
立ち上がり、きちんと殺されて、エイリアンでもサイボーグでもジムの幻覚でもないと証明し、
美しく汚れた体をさらして不条理体の実在感をしっかり持たせてくれました。

ルトガー・ハウワーを満遍なく鑑賞できる名作です。

この映画を観てルトガー・ハウアーが大好きになりました。
あと味がとてもわる〜い映画なのですが、
胃にキリキリ来る、神経がやられるような恐怖を味わえる映画です。
ホラーかサスペンスかアクションか、よくわからないけど兎に角怖い。
私はすでに観ましたが、また借ります。
未見の方は是非・・・。