キング・オブ・キングス

　イエス・キリストの生涯を抑制を効かせた演出で、淡々と追った作品である。面白いかといえば、そう面白くはない。かといってつまらないわけでもなく、バラバの反乱をめぐっての大アクションなどもあり、長丁場も退屈はせず、新約聖書の世界を知るテキストとしても悪くないだろう。とはいえ、ニコラス・レイの作品と考えると、拍子抜けしそうになるのも事実だ。
　本ページの「解説」はやや贔屓が過ぎる気がするのだけれど、なぜレイのほかの作品から感じられるような、ぎゅっと心臓をつかまれるような緊迫感が感じられないのか、よく分からない。
　貴重な翻訳資料である評伝「ニコラス・レイ」（キネマ旬報社）を繰ると、答えは製作過程にあるような気もするのだが、さらに痛感するのはこちらの教養のなさである。一通りキリストの物語を知ってはいても、その解釈に敏感に反応できるほどではもちろんない僕には、この種の映画は決して分かりはしないのだ。
　それを承知であえて映画としてのみ観るなら、登場人物のほとんどは精彩がなく、魅力に欠ける。演出面でも、取り立てて観るべきものはないが、至極真面目な大作である。
　カトリック系の学校の授業などに使えそうだ。４５点。

メル・ギブソンのパッション観てから、「最後の誘惑」とこの「キング・オブ・キングス」を観ることになりました。
パッションが、キリストが拘束されて磔に至るシーンを中心的に描いているなら、この「キング・オブ・キングス」はイエスが産まれる前から、拘束されるまでを中心に作品化されています。
大衆を集めて説教を説くシーンは圧巻です。
「最後の誘惑」は磔されてからのシーンが印象的でした。
３部それぞれ視点が異なりますが、見比べてみて下さい。お勧めします。
それにしても、今から30年以上前？に製作された映画ですが、イエスを題材に、よくここまで作り上げたものだと関心しました。付録になっている、メイキングや、当時の発表会も時代を考える上で見逃せません。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

この映画、殆ど忘れられていたような映画ですけれど、観てみようと借りました。
一応、キリスト教徒でないけれどプロテスタント系ミッションの高校出なので聖書やキリスト教習いましたが、これ、かなり省いているし、バラバの扱いに比重がかかり過ぎて、どっちが主役が分からなくなってしまっています。

「パッション」がリアルに描いてノンフィクションであることを、あたかも、フィクションのように人に印象づけることに成功しまさかのヒットとなるまでは、イエスの拷問を描くギリギリの線はここまででした。今となっては、生ぬるくあれでは三日死ぬまでかかるという十字架刑でたった六時間しかもたなかったという悲惨さは出ませんね。

なので、訴えるイメージも湧きませんね。

大体、カソリック系の映画なので奇跡に重点を置き過ぎていますね。プロテスタントは全く無視しますので、それをかわして万人向けにした「パッション」の方が利口な演出です。

なんか、全体的に広く浅く描いたというような印象を受けますね。バラバをかなり重要な役回りにしている意味も出てませんね。それは「一般民衆」がいないからでしょうね、結局、「一般民衆」はてっとり早く助けてくれる「剣をもったバラバ」を選んだのですから。「悪の連鎖を止めるべき」というイエスは笑い物になって、過ぎ越しの祭りのイベントの一つである死刑にされたということになるのですが。なので「神の子羊」と言われるのですね、神に対する生贄という意味です。

この映画は「パッション」よりも聖書を知らないと観られない映画になってしまっています。脚色が多すぎるし、かったるいし、これが聖書にあるイエスだと誤解すると大変です。

復活祭の度に、「血潮したたる　主の御頭」と歌った私にとって、血だらけのイエスの方が見慣れたイエスです。こっちではイメージが湧かない。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

サロメがかわいいです（役どころはほとんど悪魔ですけれど）。
なのでダンス・シーンがもうちょっと長くてもっとエロい演出にしてくれていたらもっと良かったんですけれど。
もっともそんなことをしたらヒンシュクを買ったかもしれないし、そこばっかり目立ってしまっておかしなことになったでしょうけれど。
実際のところ、そうでなくてもサロメの部分は妙に印象に残ってしまいます。
作品全体としては、神の子イエスの生涯と人々のドラマを融合させようとしたのでしょうけれど、焦点がボケてしまった感じで、中途半端な印象が残ってしまいました。
周辺の人物たちのドラマを描くなら、イエス自身については人々の前に現れたところだけを描いて、もっと謎めいた存在に描いた方が良かったでしょう。
オムニバス方式を徹底させることで逆に神の子たるイエスの存在を浮かび上がらせることもできたのではないかと思います。
もしかしたら本当はイエスを人として描きたかったのかな？　違うかな？