北陸代理戦争

　文太兄い降板、渡瀬恒彦が撮影中ジープで事故に遭い降板。予告編と本編が違う。

　撮影後に三国事件というのが起きて、編集も混乱。話のつじつまも無茶苦茶。

　なのに、妙にまとまったヤクザ映画と比較して、どんだけおもしろいか！

　高田脚本は崩壊する方がおもしろいのか？うーん、手口の問題のように思う。多分、三作分の金を会社が渡していたら、アイディアの凝縮が可能だった。のだろうか？「極道の妻」シリーズも原作なくても出来とったんじゃねーんのか？と思う「新仁義なき」でも出てきた野川由美子姉さんののし上がり図。

　〈雪の中の生き埋めリンチ〉がおもしろいだけに、そのアイディア使い回し過ぎの感が否めない。

北陸のうらぶれた街並み・暗い日本海・凍えそうな雪景色、この３つが田舎やくざの寂寥とベストマッチ。
登場人物のえげつなさでは同監督の「仁義なき戦い」と並ぶのでは。実録やくざ路線の隠れた秀作。

でもこれ北陸の人が観たら怒るんじゃないの？ラストのナレーションとか特に。

「映画の奈落」というノンフィクションの本によると、主人公のやくざは実際に殺されてしまいます。映画の公開後ですが。つまり映画のストーリーより後の展開。殺されたのは一度助かった喫茶店でです。あの滅茶苦茶な関係の姉妹兄弟も実在です。この本を読めば、わざわざこの古い映画を観たくなります。事実は小説より奇なり、です。撮影やキャスティングなど大変な苦労の末できた映画のようです。時代劇と同じように、もうこういった映画（実録やくざもの）は作るのは難しいでしょうね。（古典的な任侠ものももちろん無理）

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オープニングから、西村晃が雪に生き埋めにされてジープにひかれそうになるというアドレナリン出まくりの映像で一気にひきつけられます。
雪景色のヤクザ映画というのも、珍しく観ていて飽きないです。

主人公が、何度か。絶体絶命のピンチになりますが、ギリギリのところで助かるのが凄いです。
あんだけ、何人同時に襲われたら。ボクだったら、１２０％の力で命乞いします。

暴れまわる主人公と同時に女性たちが生き残りに必死になる姿も描いていて、面白かったです。

やくざ映画新参者としては、昨年出版され話題になった本「映画の奈落」で、遅ればせながらこの作品を知りました。
本は読んでませんけど、映画を観た後に書評を読むと、いろいろ興味深いですね。

書評ではこの作品を、東映のドル箱が70年代「実録路線」から80年代「女性やくざ映画」へと変遷する蝶番のような存在と
評していましたが、なるほどなと思いました。
野川由美子さん、高橋洋子さんの存在感が、男性陣と同等に強いからです。
他のやくざ映画で顕著な「虐げられ踏み台にされる」女性像ではなく、
男と同等に渡り合い「のし上がっていく」女たちです。

野川さんと松方弘樹さんの関係には釈然としないものも感じたのですが、現実の男女関係はむしろこんなものかもしれません。
若き日の高橋さんが演じる一途な村娘役も鮮烈。
現実の「事件」との関連性ばかりが取りざたされるのは仕方がないにしても、
女性を軸に観ると、また違った作品像が浮かび上がるのではないでしょうか。

高田宏治さんの脚本作品を観るのは多分今作が初めて。
「実録路線最後の作品」ということを知った上で観ると、若干
「親分子分の義理人情など屁とも思わない」自己模倣に陥っている気がしなくもありませんでしたが、
機会があれば他の高田作品も観てみたいと思います。

個人的には、西村晃さんとハナ肇さんのコミカルなヘタレっぷりが結構ツボでした。北陸の荒涼とした雪景色も雰囲気たっぷり。