けんかえれじい

「パッチギ」や「ビパップ」などの喧嘩する男子の映画の源にあるのがこの「けんかえれじい」　確か俺の清順初体験であってびっくりしたものです　なにがすごいってその映画にしか実現できないリアリティなのですね　まったく荒唐無稽なお話で馬鹿な旧制中学生達が　性欲の捌け口のかわりにけんかばかりしてる　日常を描いているものなのですが　ナンセンスなエピソードを楽しんでいるうちにその時代その世界にたちまち入り込まされてしまいます

それは山田風太郎や夢野久作の歴史活劇のように　血わき肉踊る感じで映画館の大画面で観ていると　キロクと同じように学校や竹やぶの中で大喧嘩をしてる気分になるのです
そしてそこに　一筋の叙情がくっきりと流れている様は　清順は自らの青春の追憶として撮っているのが良くわかるのです

波乱万丈なストーリーが　まるで語りつくすことの限界が訪れるようにしての　唐突なエンドマークに　お〜い何でここで終わるんだようもっと映画が続いてくれよとさけびたくなるのですが
実際この「続けんかえれじい」は具流八郎によって脚本が書かれているのですが　もう清順おじいちゃんで映画化されることはないでしょう

血気盛んな喧嘩にすべてを賭け「喧嘩道」にあけくれる　
きつめの制服がよく似合う　若き日の高橋英樹はまさにバンカラそのもの

荒唐無稽なまでの喧嘩の連続で　熱血　純情　マドンナによせる想いも　ナンセンスなユーモアに　才気溢れるカットや構図その映像の美しさ
ラストシーン近く　一瞬だけ出会う初老の男が北一輝（２・２６事件の思想的指導者）　そして第二次大戦で　主人公たちの世代のもっとも多くが戦死した

鈴木清順監督の作品はチョト・・と敬遠している方でも全編楽しめる　傑作なのだ！！
可憐なマドンナ役浅野順子は　本作出演の翌年なぜかあの大橋巨泉！と結婚し芸能界を引退　もったいない

主人公と同じ年頃　この映画が好きで原作の小説「けんかえれじい（鈴木隆著）」を読んだらとっても面白く　いま復版されているようで　また読んでみようかと

だい好きな映画なので　オススメじゃニャ！！

芯は反戦であるけれど、のどかで自由。あの頃の若者（私たちだけど）はこんなに良質の映画を見られて幸せ者だったよなあ、

昭和初期を舞台にしたモノクロ青春映画ですが、今はともかく、当時はかなりハイカラな作品だったのではないでしょうか。
高橋英樹演じるキロクの、喧嘩っ早いが純情な役柄は、きっと人気を博したのでしょうね。
喧嘩にとり付かれた息子に手を焼きながらも、穏やかさを失わずに見守っている父にほのぼのしました。
いつもは暴れ放題のキロクでも、恋した下宿先の娘には、デレデレと腑抜けになってしまう。。
そんな緩さが楽しいアクションコメディ。
恋愛に熱くなればなるほど、喧嘩で発散しなければ治まらないキロクは単純明快。
この年頃の男子とは少なくともこういうものなのかもしれませんね。
きっと男性により好まれる作品ではないかと思います。

キロクに喧嘩を教えた先輩のスッポン、タクアン団長、OSMS団にカッパ団。
脇役陣にもこんな楽しいネーミングがついています。
岡山そして会津若松。…繰り広げられる喧嘩バカたちの青春が爽快でした。

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残念ながら、高橋英樹といえば「桃太郎侍」のイメージしか浮かばない人には、この傑作映画の世界には入り難いのではないかと、懸念します。血潮がたぎる青年には喧嘩が似合います。世間が何と言おうと情熱のままに突き進む。それでも、父親には弱い。憧れの浅野順子さんにも弱い。二人で歩いた桜並木の見事な散花のシーン。これは大きなスクリーンで観ないと分からないでしょう。戦争が近付いて来る。物憂い美人が居るカフェに鋭い目付きの中年男が居た。東京から来たと言う。「北一輝」と名乗った。軍隊の行進に順子さんは巻き込まれて倒れる。彼女の運命の暗喩です。高橋英樹は彼女を待たない。「東京で大きな喧嘩が始る」東京へ行くぞ！・・・　東京での第2部の制作予定はあったのですが、ついに実現化されませんでした。残念です。