妖星ゴラス

この作品の制作された1962年の世相は

ケネディ米大統領が、ソ連のキューバにミサイル発射基地を建設中と発表したのに対し、キューバ海上封鎖を声明。所謂、キューバ危機が起こった年で、前年には、東西ベルリン間に壁が設けられ、東西の冷戦が深刻さを増すと同時に、ベトナム戦争も泥沼化の様相を呈し、米国内外で反戦活動が活発になり始めた年です。
その他、
マリリン・モンローが死亡し、
「アラビアのロレンス」「007は殺しの番号（DR. NO）」「史上最大の作戦」などが、上映され、
国内では、植木等・クレージー・キャットが大活躍。
「キューポラのある街」「椿三十郎」「座頭市物語」前年には「モスラ」が出現し、この年、ゴジラが復活しキングコングを招き「キングコング対ゴジラ」が制作された。

日本は、二年後の東京オリンピック景気に沸き、東京都の推計人口が1,000万人を突破した。
前年には、ソ連が世界初の有人宇宙船を打ち上げに成功。

この「妖星ゴラス」は、そう言った世相をバックに、東宝特撮映画が油に乗り切った時代の傑作と言えます。

なんたって、スケールがソンジョそこいらの話と違います。

冷戦もなんのその、世界は一つ。みんなで力を合わせて、地球の軌道を変えましょうや。って話。

土星探査船・隼の隊員は、最後まで、仕事を全うし、日本の政府・学者は、ソ連・アメリカを説得。南極で、ぐっすり眠っていたところを今回の騒動で無理やりたたき起こされた、爬虫セイウチ「マグマ」も簡単に一蹴してしまいます。

最後、池部良扮する田沢博士のお言葉
「しかし、推力機関は南極より北極の方が設置はやっかいなんだぜ。足元は海なんだからな。」

ム〜〜ン　　ヤッパ、北極の方が大変なんだ！

天体衝突ＳＦ映画自体は，そんなにめずらしくはありませんが，天体を攻撃して壊すとか，一部の選ばれた人だけ宇宙に逃げるとかいうのではなく，地球ごとみんなで逃げちゃいましょうという発想が驚天動地で，実にユニークです。そして，このユニークな発想が，大まじめに映像化されているのにはただただ感心させられます。冒頭いきなり白川由美と水野久美が，服を脱いで泳ごうとしたり，水野久美の入浴シーンがあったりと，お父さんのためのサービスもちゃんと忘れないのもえらい。ただ，東宝ですから，とても上品です。一癖ある役をやることの多い水野久美が，最初から最後まで，ほんとうにかわいらしいお嬢さんを演じているのも見所ですね。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

　東宝特撮のＳＦの方であります。しかも、割と昔から作られている地球滅亡テーマですから王道的ＳＦといってもいいでしょう。でも本作がユニークなのは、その設定であります。大っきな星が地球に衝突するので地球に大っきなロケットを取り付けて、その星をよけてしまおうという古今東西、他には誰も発想しなかったアイディアを映像化してしまった極めてユニークな作品であります。
　つまりバカ話なんですが、これを錚々たる俳優陣と円谷特撮の脂の乗り切っていた時期のミニチュアの力でリアリティを与えることに成功しています。少なくともレヴュアーはそう見ました。同じような設定で題名も『地球最期の日』というアメリカ映画がありましたが、あちらはロケットで選ばれた人だけが地球を脱出するというノアの方舟的な解決法でした。それに比べると本作の方が相当スケールはでかい話になっています。
　ただ、本作にも残念ながら瑕疵があります。科学考証のことではありません。だいたい地球の６千倍なんて質量の恒星であれば、たとえ衝突を回避したとしても、地球の近傍を通過する訳ですから、その巨大な重力だけで地球に相当な被害が出ることは明らかだし、そもそもでっかいロケットを南極に設置して加速するだけで地球の重力の具合があちこちでおかしくなるのは高校程度の科学知識で分かることですから今更そんなことをあげつらう気はありません。
　最大の瑕疵は途中でロケット建設基地に怪獣が出現することです。トドを巨大にしたような怪獣が基地を破壊しそうになり国連の垂直離着陸機がレーザーで退治するというエピソードが挟まれるのです。木に竹を接いだようなプロットは多分、東宝の上層部あたりが押し付けたのではないかと推測するのですが、レヴュアーとしては不協和音のように感じました。でも、ご愛嬌と取ることもできるので、ちょっと微妙ではあるのですが。
　で、ここからは余談なのですが、さるところで本作を『プロジェクトＸ』の番組として編集したものを見まして、いやぁ笑いました。腹を抱えて。それから山本弘氏がＳＦマガジンに連載していた「地球移動計画」という小説が、本作に対するオマージュになっていますので、このレヴューを読んで興味を持たれた方は是非、ご一読下さい。という具合に本作に愛情を持つファンは多いようなのです。

すばらしかった！
そう若くもない僕でさえリアルタイムでは観ていません。一度だけTVで放映されたのを子供の頃に観て、かなり強烈に覚えてていつか機会があればもう一度観たいと思っていた作品です。
この手の作品は、荒唐無稽さとチープ感を味わうのがひとつの楽しみ方ですけど、俳優陣も一流ドコロがそろっていて、全体的に妙な高級感が出ています。半世紀近く前に制作されたことを考えると、さらに味わいのある作品だと思いました。「空想科学特撮映画」なんて響きがぴったり来る、そして、当時のファッションセンス、酒場でフォークダンス的に踊るシーン（しかも音楽は”♪うちゅう〜の〜パイロット、ヘイ！”みたいな・・）、何もかもがスタイリッシュで驚きの連続でした。

ひとつだけ、僕が子供時代に見たときに勘違いして覚えていたことがあって、田沢博士を演じたのが船越英二さんだと今日の今日まで思っていました。実際には池部良さんだったんですね。これもやれやれと思いながらも子供の頃の記憶って面白いなぁと妙に感慨に耽ったりしました。

万人にウケるかどうかお約束はできないですけど、僕にとっては思い出深いすばらしい作品として楽しめました。

地球をロケット化して動かすなど、あまりにも奇想天外・超現実的でびっくり。それをやってのけるから、さすがＳＦ映画さすが東宝。
しかし、本多監督は東大の天文学の先生のところに通ってかなり勉強して作った映画らしいです。
地球を実際に動かせるかどうかは別として、推進力の理論値は計算できるようです。映画の中でその計算式が黒板に書かれたものが出てくるのですが、東大の先生が実際に書いたものらしいです。素人目にはちんぷんかんぷんの計算式ですが・・・。