海底軍艦

ものすごく昔、テレビで見たことある。しかし、最近渋いのＤＶＤにするよなぁ・・・笑

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　本作の原作は明治期の作家押川春浪の軍事冒険小説であります。レヴュアーは原作を読んだことはありませんが、明治維新から富国強兵を旗印に帝国主義国家群への仲間入りをした日本の青少年を鼓舞する内容であったようです。
　その海底軍艦を戦後世界に登場させるにあたっては、かなりのアクロバットが必要であったことは推測がつきます。まず、太古の昔に海底に沈んだムウ帝国が海底に大都市を建設し、地上を狙っているという設定が用意されます。これで地上の平和を守るためという大義名分が成立します。
　次に、その危機を救うために出現するのが、旧海軍の神宮司大佐を指揮官とする秘密任務部隊です。彼らは戦局逆転の秘密兵器「海底軍艦」の開発を命じられ、南方の孤島で戦争の終結も知らないまま開発を続けていたのです。そして、完成した海底軍艦は世界の危機を救う切り札となった訳です。（まぁ身も蓋もない言い方だとご都合主義ということですが。）
　最初は大日本帝国のための兵器だとムウ帝国相手の戦争を渋っていた神宮司大佐も、実際のムウ帝国の脅威を目にして、あっさりと海底軍艦の使用に踏み切ります。
　あとは東宝映画全盛期の特撮による海底軍艦対ムウ帝国潜水艦＆怪龍”マンダ”との対決が描かれます。子供のときはスペクタクルに夢中になっていましたが、長じて見直してみると地上の側は随分、無慈悲なことをやっているのに気がつきます。次々と敵を打ち破った海底軍艦がムウ帝国の海底都市に突入してから、戦闘員、非戦闘員の区別なく冷凍銃で氷漬けにし、海底都市を破壊し、最後は炎上爆発させてしまうのですから、ジェノサイドであります。
　この辺りを深く分析すれば、戦後日本人の屈折した心情とか見えてくるような気もします。レヴュアーは、そこまでする元気もありませんが、そうした突っ込みも含めて東宝特撮の名作だと思います。特に主役メカの海底軍艦のデザインの秀逸さはご覧になった方はお判りだと思います。

１９６３年公開の東宝特撮作品。製作:田中友幸、監督:本多猪四郎、特技監督:円谷英二、音楽：伊福部昭というお馴染みの最強スタッフによる渾身の力作。そして忘れてはならない小松崎茂デザイン最高傑作（と思う）「豪天号」の雄姿。

ぐだぐだ解説すればするだけ野暮になる。高度経済成長の真っ只中にあった当時の日本と、日本映画界の勢いをまざまざと感じさせる作品です。

なぜにムウ(ムーではないのです)帝国が突然に襲ってくるのか、なぜに彼らの体は熱く蒸気シュウシュウなのか、なぜに高い文明を持ちながら南方の蛮族のような情けない姿なのか、よくよく見れば突っ込みどころ満載のトンデモＳＦ映画なのですが、そんなことはドウでもいいと感じさせる圧倒的なパワーに満ち満ちています。

んなこと言ったって４０年以上前の作品でしょ、懐かしい以上の何か見るべきものがあるのかね？という疑問も当然ですが、豪天号が海中から姿を現すシーンや、ムウ帝国の攻撃を受けて東京の街が陥没してしまうシーンなど、最新ＶＦＸを見慣れた目で見ても決して引けをとらない、超絶のミニチュアワークスにあふれています。

「地球防衛軍」「宇宙大戦争」そして本作と進化してきた東宝特撮路線。同じく絶頂期を迎えていた昭和ゴジラシリーズの影に隠れがちですが、日本のＳＦ映画を語る上でハズせない作品。「続・三丁目の夕日」を見た後（！）続けてどうぞ。

海底軍艦といいながら、羽もないのに空をマッハ２で飛ぶって、どういう科学力なんだ。いったい、重力や空気をどう制御してるんだよ、と言ってもしかたないんだけど、あまりに突拍子もないストーリーで、途中で観るのが疲れてくる。
それにしても、後の『マイティジャック』やイギリスの『スティングレイ』(特撮人形劇)、あるいは『謎の円盤ＵＦＯ』に出てくるスカイダイパーなど、この時代に“特殊な潜水艦”がブームになっているのはなぜなんだろう。みんなプラモデル化されて、あの頃憧れたんだよなぁ〜。貧乏で買ってもらえなかったけど。
’６０年代から’７０年代の日本では、自衛隊が軍隊か否かで揉めたり、違憲訴訟が起きたりと、武力に対する国民のアレルギーが強かった時代で、話には当時の世情がだいぶ反映されてますね。

ストーリーは今の電撃文庫のようなものを、東宝はまじめに、全力を挙げて作っていました。だから今見ても結構面白い。このＤＶＤでは、２パターンで作品がご覧になれます。昔一度だけ見た人なら、もうひとつのバージョンが楽しめます。両方のバージョンを知っているひとは、結構すごいかも！！？