女と男の名誉

お得意のちょっと、とぼけた殺し屋を演じています。一目ぼれした相手が、これまた殺し屋。Ｊ・ニコルソンにＫ・ターナー。もう、お互い怪演者同士、わくわくする面白さです。そこに、これまた、Ａ・ヒューストンが絡み、頂点を極めてくれる。２０年ほど前の作品ですが、一向に色あせていません。ラスト、それぞれの名誉を守るための戦い、スリリングの一言！！もう１度、見直す価値、大いにあり。しかし、ニコルソンの顔の表情は、すごすぎ！！！

「Mr.&Mrs.スミス」のレビューを見ていて、「女と男の名誉」を思い浮かべるというコメントを見つけました。それで、「Mr.＆Mrs.〜」を観る前にこちらの作品をチェックした次第です。男と女、お互いに殺し屋だったなんて、おまけに自分の名誉を守るために
最後はお互いに殺しあう羽目になるなんて！
マフィアの世界の事なんですが、金よりも何よりも「ファミリーの名誉」が一番大切で、その名誉のためならば妻さえも殺す。妻を殺さなければ、自分の命が危ないということらしい。ストーリーの最後の場面は、一瞬のできごと。凄まじい一瞬でした。日本の「やくざ」の世界にはありえるかもしれない。そんな恐い話も
ジャック・ニコルソンとキャサリン・ターナーの中年コンビがサスペンス・コメディにして、やんわりと見せてくれました。とても20年も前の作品とは思えません。ちっとも古臭さはないですね。

先日「愛と追憶の日々」（83）を観たときにも思ったけど、ジャック・ニコルソンの存在感は
ホント凄いというか、あの顔が反則というか（笑）。
出てくるだけで場の空気を一変させてしまう人であります。
（ジェームズ・Ｌ・ブルックス監督のコメンタリーが可笑しかった。曰く「ジャックの酔っぱらい
演技の秘訣は本当に酔っぱらうこと」なんだと）＾＾

ほんでこの作品では主役なのでほぼ出ずっぱり、あのクドイ顔と２時間強つき合うのは
さすがにシンドイかと思えばそんなことはなく、なんと言ってもお相手が当時は
こんなに美しかったのねーと今更ながらビックリのキャスリーン・ターナーなので
とにかくこの２人を見てるだけで「ああ、映画を観てるなー」という感慨で
お腹いっぱいになってしまう。

それにしても、製作時ニコルソンは48歳で堂々たる中年男だからあの貫録は分かるんだけども、
キャスリーンはまだ31歳なのですね。今どきの女優ならまだまだ“女の子”路線で
やってる年齢だろうに、この人のこの“大人の女”っぷりったら半端ない。
かっこいいな〜。

オハナシもとっても洒落たコメディで楽しい。
80年代の作品にしてはクラシカルなムードが漂うのは監督が大御所のジョン・ヒューストンだからか。
個人的にはこのノンビリしたトーンは嫌いじゃありません。
セリフの応酬で息もつかせないような、軽妙なリズムのコメディも良いけど、
この作品の場合は飽くまでも“マフィアもの”の重厚感に徹しているのがイイと思う。

クライマックスがやけにアッサリしていたのは拍子抜けだったけど、ここドロドロにしちゃうと
ラストが後味悪くなっちゃうので仕方ないかな（苦笑）。
悲劇と喜劇の配分がなかなか難しい脚本だと思うのだけど、上手いことさばいたナという感じです。

ホントは女の執念は恐ろしいって話なのに、ラストカットは少女のように可憐で一途な女、
みたいにアンジェリカ・ヒューストンを撮ってしまう、ジョン・ヒューストンの親ばかぶりも
なんだか微笑ましい（？）。最終的には娘に花を持たせたかったのだね（笑）。

ジャック・ニコルソンの演技・表情は見ていて飽きません。キャスリーン・ターナーも綺麗で不思議な魅力があります。アンジェリカ・ヒューストンもいい味を出しています。
でも豪華キャストの割りに、脚本がどうも、、、、。

愛しあった殺し屋同士が、お互いを殺しあう依頼をうけるという設定はおもしろいし、男を描いたらピカイチのJ・ヒューストン監督、そして、名優J・ニコルソンのいぶし銀の演技。一見の価値あり！！