フランケンシュタイン対地底怪獣（バラゴン）

怪獣・怪人の身長をゴジラの半分以下の２０ｍに抑え、精緻さを増した美術を始めとして、本編の絵柄との融合を第一に撮影された特撮場面が必ず話題になりますが、それよりも特徴的なのは、人物描写の細かさとリアルさ。
これまでの東宝特撮映画に登場する人物は、どちらかといえば類型的で甘く描かれていたのですが、本作ではがらっと変わり、フランケンシュタインが自分の管轄外に出たと知って思わず安堵する警官や、小心で官僚的な研究所長、主人公たちに批判的な台詞を吐く新聞記者、怪獣の存在を頭から否定する高名な学者、そして資金繰りを心配するヒロインなど、登場人物たちの行動や台詞に現実感があり、臨場感を与えることに成功しています。
明らかに大人の観客を意識した作り方で、ファンとしては是非ともこの路線を推進して欲しかったのですが、子供たちから反撥をくらってしまい、興行成績を優先せざるを得ない映画会社としては、次作の「サンダ対ガイラ」でリアル路線を打ち切らざるを得なくなってしまいました。
米国版の大蛸の登場は合作映画ならではの珍事でしょう。
欧米人が蛸に抱く恐怖心は日本人には理解出来ないほど深く「テンタクルズ」などそのものズバリの作品まであるくらいです。
合作相手のベネディクト・プロとしては、怪獣以上の恐怖としては蛸しか思いつかなかったのでしょうね。

この映画は映画館では見ていませんが、当時、散髪に通っていた床屋で漫画の本で見た覚えがあります。「冒険王」「少年」といった雑誌が置いてあったので、それらの別冊付録だったのか、それとも単行本だったのか、なにぶん４０年も前の記憶なので定かではありませんが、もしご存知の方がいらっしゃればレビューに書いて頂ければ幸いです。

他にも「モスラ対ゴジラ」「ガメラ対ギャオス」「マタンゴ」などもそこで漫画で読んだ記憶があります。誰の作画かはわかりませんが石ノ森章太郎先生のタッチのような絵でした。

映画版は以前、テレビ放映されたときに見ましたが、今回このDVDをレンタルしてラストが二通りあるのが興味深かったです。テレビ放映ではタコの怪獣が出てこないほうのものでした。

日米合作とはなっていますが、殆どが東宝で製作されたもののようで、ニック・アダムス、ピーター・マンといった外国の俳優が出演しているので「合作」と銘打っているのでしょう。しかし、外国での上映を意識してか、富士山や安芸の宮島など日本の名所が随所に見られるのが単なる怪獣映画とはまた違った見所でもあります。

このころになると、特撮技術もかなり進みフランケンシュタインが徐々に大きくなる過程が自然に描かれていて、違和感なく見られるのがいいです。

子供の頃、テレビで見たときは怖かったです。
今見ると、「命」に対する深いメッセージを秘めたストーリーと感じました。
キャストも素晴らしいです。
特にフランケンシュタインを演じた俳優さんの怪演に圧倒されました。
水野久美さんの色っぽさもですが、母性本能を感じさせる演技も良かった。
ニックアダムスは子供の頃、最も身近に感じた外国人でした。
リメイクしてもらいたい作品の�ｂPですが、現在の俳優では不可能でしょう。
続編のサンダＶＳガイラよりも生身の人間が巨大化する、この作品のほうがリアル感も、悲哀感もあって好きです。
地底怪獣も子供の頃は怖かった（ロッジを襲ったシーン）
生物的な動きがあって、以外に素早くて良かったです。
今の子供に見せたい作品です。

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フランケンシュタインがバラゴンを倒した後たこと戦うバージョンと，そうでないバージョン（劇場公開版）が２本はいった至れり尽くせりのＤＶＤ。ただし，劇場公開版は画像が荒い。どちらのエンディングも唐突だが，たこなしバージョンの方が，エンディングの絵としては美しい。
冒頭，東宝マークとともにプリペアドピアノ，タイトルの後は，アルトフルートの陰鬱なメロディ，伊福部音楽も絶好調。物語も暗く暗く進んでいき，フランケンシュタインが研究所を逃走するあたりまでは息詰まる展開。ただ，研究所逃走後のフランケンシュタインのやってることが結構おちゃめ，極悪非道のバラゴンも顔面はおめめがまんまるでかわいらしい。それで，後半は，ちょっとほのぼのしてしまいます。

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っても高島さんが冷血漢なのではなく、本作で彼が演じる川地博士のことなんですけど。まぁ、随分前に観たっきりだったので、陰惨な話くらいの印象しかなかったのですが、ＣＳでやってたので再見してみました。
　陰惨なのは、原爆とフランケンシュタイン博士の造り出した人造人間の話が絡んでいることが大きいのですが、本作で”フランケンシュタイン”と呼ばれている人造人間が終戦間際にドイツから密かに広島の衛戍病院に運び込まれた不死身の”フランケンシュタインの心臓”から育った存在であることも重要な要素だと思います。
　彼を偶然、保護したボーエン博士（ニック・アダムス）、川地博士（高島忠夫）、助手の戸上（水野久美）それぞれの彼に対する姿勢の違いも物語に影響を与えています。母性的に彼を保護しようとする戸上、科学者としての理性と倫理のバランスを取ろうとするボーエン、放射能に耐性を持つ彼の秘密を知ることに執念を燃やす川地。
　とにかく、川地の言動が今だと「ドン引き」のレベルなのですが、当時はどうだったのだろう。例えばドイツで、腕を切り落としても生きているようならそれはフランケンシュタインに違いないと言われると実行しようとするし、研究のために「指の１本でも欲しい」などと口走るものだから、これは冷血漢としか言えないでしょう。
　川地が彼の腕を切り落とそうとする前に、強引なテレビ局のクルーが彼を撮影しようとライトを浴びせた結果、興奮した彼が脱走することになり、川地の行為は未遂のままになるのですが、実行していたらどう物語が展開したのかなどと意地の悪いことを考えたりしました。
　間の悪いことに彼の脱走と同じ時期に地底怪獣バラゴンが出現し、家畜や人間を食ってしまうもので、それが全部、彼の仕業にされてしまうのですが、このあたりの特撮が芸コマというか、鶏小屋のニワトリのアップからバラゴンが小屋を壊すカットのあとで口からハラハラと舞い落ちる羽毛というような直截な描写はなくても何が起こったかが分かるように撮られています。
　ラストについては３種類あるみたいで、以前に観た版では大蛸が出てきて彼と一緒に湖に消えるというものだったので、今回、観たものはバラゴンの首を折った後に地面の陥没に呑まれるという終わり方で一瞬「あれ、蛸は？」と思ってしまいました。
　この幕切れも哀しさを増す要因だったと思います。第１作の『ゴジラ』と同様、戦争の影が見える真摯な作品であるのは間違いないでしょう。