ザ・ドライバー

監督：ウォルター・ヒル（1978年・米・91分）

犯罪者の逃亡を助ける“逃がし屋”と、それを追う刑事のお話。
本作を観て既視感を持ったのは、物語の設定が『ドライブ（2011年・ライアン・ゴズリング主演）』に似ているからだと思う。
本作の主演のライアン・オニールは、ただ“ドライバー”と呼ばれるだけで、固有名詞（本名）は明かされない。
彼を執拗に追う刑事もまた“ディテクティブ”とだけ呼ばれる。
ドライバーは、銀行を襲うギャングや強盗を逃すのが仕事で、彼のドライビングテクニックは超一流。
仕事を請け負ったからには、車がボロボロになろうとも巧みにパトカーの追跡をかわし、路地から路地を抜け、必ず依頼人を逃がしきるのだ。
ドライバーを逮捕することに異様な執念を燃やすディテクティブ（ブルース・ダーン）は、強盗に取引を持ち掛け、ドライバーを罠にかけようとする。
“プレイヤー”と呼ばれるミステリアスな美女を演じるのはイザベル・アジャーニ。
劇中、自分の感情を出すのは専らディテクティブだけで、ドライバーもプレイヤーも台詞は少なく殆ど無表情だった。
見どころは、パトカーや強盗とのカーアクションシーン。
終盤、プレイヤーを助手席に乗せてのカーアクションも見せ場の一つだが、彼女がここでも叫びもしなければ騒ぐこともせず、無表情なままでいる。
甘いマスクで寡黙なライアン・オニールが新鮮だった。

いまとなってはカーアクションの決定版というほどでもないし、フィルムノワールというほど黒くもない。ただ、この淡々とした空気感、ライアン・オニール演じるドライバーの無表情、ラジオから小さく流れるカントリーミュージック。そういったもののなかにとてもプレシャスな何かを感じます。プレ80's的な虚無と70's的なぬくもりのはざまにあったLAの夜。その夜は自分のなかにも確かにあった。いやまだ消せずにそのままになっているのかもしれない。そんな夜の、自分だけの映画。

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『アデルの恋の物語』を観て思った。イザベル・アジャーニをはじめてスクリーンで観たのはこの『ザ・ドライバー』だったような気がする。寡黙でスタイリッシュなカーアクションの佳作、ウォルター・ヒルという名前を覚えたのもこの映画だった。
　ほとんど夜のシーンばかりだったと覚えていたが、見直してみたらそれは誤りだった。案外、昼間のシークエンスも多かったのだ。けれど夜の街を疾走する黒いトランザムというイメージが強烈だったのは、夜道でのカーアクションというのが新鮮だったからだと思う。『ブリット』も『バニシングポイント』も『バニシング６０』も『フレンチコネクション』も『ザ・セブンアップス』も、大概カーアクションは昼間のイメージだ（きっとスタントの危険度も違うのだろう）。後に『リーサル・ウェポン』あたりから、夜のカーアクションもあまり珍しくなくなったような気がする。
　主要な登場人物に役名がないというのも、ストイックなハードボイルド世界に憧れる中学生男子には嬉しかった。ただドライバー、プレイヤー、ディティクティブ、コネクションというだけ、ここでは個性より役割というか機能が大事なのであって、つまり（裏の）プロの世界のお話なのである。
『ある愛の詩』の印象が強いライアン・オニールが演じるのは、凄腕のドライバー、つまり強盗等の運転手役を専門にする“逃がし屋”だ。どんな危険そうな場面でも、ほとんど表情を変えないハンドルさばきが格好いい。冷静に見えて、随所でほんのりと熱を帯びている気配が見て取れて、よい演技。
　アジャーニはプレイヤー、やはり裏の世界に生きる寡黙なギャンブラー。ちょっと漫画的な役柄なのだが、この役をとても印象的なものにして、ひいては作品全体を印象的なものにしたのは、彼女の存在あってのことだと思う。とはいえ、ハリウッド進出の意味はあったのかもしれないけれど、彼女にとってはあまりいい作品ではなかったような気がする。
　黒いパンツスーツにつば広の帽子、言葉を発さず無表情、ちょっと猫背ぎみ。夜の街をふわふわと歩く存在感はなかなかのものでも、アジャーニの魅力を十分引き出す役とは言えない。何しろクライマックスは、疾走するピックアップトラックの助手席で必死に耐えるしかないわけだから。
　以上ふたりがアメリカ映画らしからぬもの静かさで粋で緊張感のあるムードを作るが、ひとりアメリカンなブルース・ダーンのがちゃがちゃした芝居が、何だか気になって困った。
　でも渋いカーアクション映画として、ラストきちんと対決するところ、オニールが相手の運転手をじっと見据えるあたり、やっぱり大好きだ。６０点。

早いもので、劇場公開されてからもう３０年近くも経つんですね〜。若い世代は多分知らないと思いますが、もしカーチェイス好きなら一見の価値はあるというか、観ておくべきだと思います。

最近はワイルドスピードをはじめ、ストーリーや俳優の演技は二の次で、ただただクルマが激走するだけのものが多いですが、やっぱり映画なんだからそれだけじゃ作品としてはどうなんでしょう。その点、この作品はキャスティング良し・映像カッコ良し・カーアクション良しの揃い踏み。

あと、個人的に好きな旧い作品としてはマックイーンの「ブリット」があります。確かにロスを激走するシェルビー・マスタングとダッジ・チャージャーの死闘は凄いですが、残念ながらその時間が少々短く、他のシーンは少々退屈な感じも・・・
その点、この作品はＲ・オニールがいろんなクルマをとっかえひっかえぶっ潰すので退屈してるヒマはありません。特にアメリカン・マッスルカーのファンなら涙モノでしょう。

特に、地下駐車場でオニールがドラテクを誇示するかのように、メルセデスをまるでミリ単位の正確さで柱や梁にこすり付けるようにぶつけ、ドアもミラーもすっ飛ばし、ルーフやボディの膨らみをも潰して、ただの箱状態にしてしまう実写シーンは凄い！！
の一言。「ブリット」とセットで見比べてください。

、.....ってどこかに書いた記憶が。

やはり時代は感じさせ、幾分ちゃちな感じがつきまといます。
メイキャップのせいかイザベル・アジャーニがいささかブスに見え、またはっきりしないそのキャラも余り感心しません。

しかし冒頭から無駄なく90分程度にうまくまとめあげている点、冗長な映画は見習って欲しいものです。

イザベル・アジャーニに目撃され面通しされるあたり、「サムライ」に似ていますね。