遠雷

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

さる２月８日、立松和平氏の訃報を聞いた。
そこで立松氏を偲ぶ意味から、この映画をしばらくぶりに見直してみた。

時代は今から３０年近く前、バブル少し前の不動産神話がまだまだ当たり前の頃。
舞台は都会化の波が徐々に押し寄せてきた北関東のとある農村。
そんな中、懸命にハウスのトマト栽培に打ち込む青年、満夫（永島敏行）とその友人、広次（ジョニー大倉）の対照的な生き方を中心に、彼らを取り巻く家族関係、恋愛、社会状況といったものが生々しく描かれている秀作である。

見所は一言では言えない。
永島敏行と石田えりの大胆なラブシーンはもちろん大きなウエイトだろうが、
私はあのクライマックスの広次役のジョニー大倉のカエデとの逃避行からショッキングな結末に至る話をするシーンの、延々と長回しのカメラワークが印象に残った。
満夫が最後に「何か俺にできることはあるか？。」と聞かれ、「稲刈りを頼む。」
と言った台詞の所では思わず涙が出た。

それとは対照的に、選挙違反容疑で連行される父親（ケーシー高峰）の「チョット旅行に行って来っから。」の台詞、私も実際に、同じような場面を見たことがあったので笑ってしまった。

この８０年代から９０年代の前半にかけては、東京近郊の農村では、どこでもこの映画の中での状況と同じだったと思う。私の住むこの田舎でも当時は、農家の跡継ぎが家を継がず会社勤めになり、農業をする人手が無くなり止む無く土地を売る。そしてそれまで萱葺屋根だった古い家をアルミサッシと瓦屋根の新築にする。一方、売られた土地は田んぼや畑が潰され、マンションや一戸建ての建売住宅となる。田園風景は市街地にと変わっていった。しかしそんな様相もここしばらくの景気低迷で一段落したようではあるが…。

この映画はそんな都市化の波が押し寄せる中で、そこに生きるさまざまな世代の人々の人生模様、愛、悩み、挫折、といったものが生き生きと描かれている。
私自身、丁度この時代がこの満夫たちとの同年代だったこともあり、この映画は時には感情移入しながら見たものである。

改めて、立松和平氏のご冥福をお祈りします。合掌。

都市化の波に　ビニールハウスの隣に団地が　そのトマト農家の青年を　永島敏行がまさに好演　

その見合い相手　石田えりが　可愛いだけでなく　けれんみなく大胆に　その魅力につきるような映画

仕事/恋愛/友情/セックス　自由奔放に楽しみ　バイタリティに溢れた生きかたを

石田えりと結婚できた永島敏行は　しあわせもん
いっぽうは結婚を・・・その親友は　ことなる　明暗わかれる青春を　リアルな生活感覚で描いた秀作
　
そうなのだ 「釣りバカ日誌」 みち子さんは　石田えりのほうがいいニャ！

オタク系、茶パツ、ひきこもりとは無縁の、土着のひた向きな青年の姿は素敵です。
お見合い、農業等人気のない道を選びながら生きがいを見い出す満夫はむしろカッコイイ。
永島敏行さんが好演。ジョニーさんも熱演。
脇役たちそれぞれが個性的で、どこか憎めない、愛すべき人々を演じている。
石田えりも魅力的でかわいい。

ジャンクフードが氾濫するなか、玄米茶で一服した気分になりました。

あの頃、人生の目的が判らなくて、とりあえず大学に入り、とりあえず卒業し、とりあえず就職し……。
日々残業に次ぐ残業、いびつで非常識がまかり通る企業組織社会。
こんなとこで俺の人生は終わるのか？俺は何のため生いきてんのか？俺の人生って何？と、青臭くも純粋に悩んだりして、そのくせ、女や酒で結構紛らわせたりして……。
そういう宙ぶらりんで中途半端な、それでいてエネルギッシュな、あの時代の雰囲気が懐かしく、楽しめました。
余談まで、私の田舎にはまだまだあういうモーテルが健在です。というのは、今は、無人だろうが有人だろうがフロントを通る形のモーテルしか認可されなくて、車で入ってそのまま2階へのパターンのとこは、改装に次ぐ改装で未だに生き残っているんです。なんせ田舎では誰かと鉢合わせになったら相当ヤバイですから。

自宅で行った披露宴で、新郎、新婦、友人たちが「わたしの青い鳥」を合唱するシーンがある。
桜田淳子のその後の人生を思うと、この歌を聴くと切ない気持ちになる。

ラストでは威勢よく、土地を売ってくれと頼みに来た業者を追い返す満夫だが、マジな話をすると、この都市近郊で、この先農業をやっていけるのかどうか。この先バブルがあり、農業政策も変わった。
満夫の父(ケーシー高峰)も、土地が高く売れたため小金ができ、愛人をつくって家を出てしまったのだろう。
この映画を見ても日本農業の変化がうかがえる。

原作者の立松和平が農協職員で出演している。
標準語で話すとアクセントがおかしい立松和平だが、栃木弁のセリフはさすがにうまい。