うる星やつら２　☆ビューティフル・ドリーマー☆

　実に楽しい映画です。
　アニメ映画と言えど昨今の『恋●』などどは違いソフィスティケートなファンタジー。ギャグも「ありおりはべりいまそがり」などが出てきてなんとなく高尚です。当時私は大学生だったのでアニメはほとんど観ておらずこの作品も観ていなかったのですが、アニメも当時からこんなに深い内容のものがあったんですね。
　物語としては荘子の「胡蝶の夢」をテーマとした話だと思いますが、作品全体がなかなか見事なループ構造となっています。その他にもエッシャーのトリックアートを取り入れるなど、からくりと遊び心に満ち溢れた作品なのです。
　もしこの作品を観て会話が理解できないという若い人がいたら由々しき問題ですね。娯楽を楽しめない（理解できない）ようじゃ、人生勿体無いですよ。「勉強はさせられるものでは無くて、人生を楽しむために必要なもの」そういった考えを教育現場で教えていければ学校教育もかわるような気がするのですが。・・・かなり話が横道にそれてしまいました。
　
　ひとつ気になるのは『うる星やつら』のキャラクターを知らない人にはどのように映るのだろう言う事。キャラ設定は自明として一切のキャラ説明は排されているので、『うる星やつら』の知識がゼロの人は人物の相関がわかりません。そもそも物語の土壌としては『うる星やつら』の世界でなくても十分通用してしまいます。なんとなく原作者の高橋留美子が「これは押井監督の作品であって、うる星やつらでは無い」とご立腹したのも分からないでも無いです。

　アレックス・プロヤス監督の『ダークシティ』は確かにこの作品に良く似ています。影響を受けたのかどうかは定かではありませんが、物語的な深みで言えば『ビューティフルドリーマー』に軍配が上がるように思います。

　「映画＝虚構の世界」という図式を逆手にとって見事にその虚構の中に虚構を構築した作品だと思います。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

今や日本アニメ界の巨匠の一人と言われる押井守監督の作品。

　劇場公開時に高校生だった私は「うる星やつら」ファンとしてこの作品を先行イベントで見たのだが、今でも鮮明に覚えている。

　初めてこの作品を見た時のインパクトはすごかった。映像の美しさにも目を惹かれたが、まずいきなりの廃墟シーンと「あたる」の姿に「こ、これは？」といきなりの『ツカミ』に作品に引きずり込まれた。

　今でこそ陳腐な演出と思われているが、その当時のアニメではよく『夢オチ』が使われていた。しかし、この作品はその『夢オチ』をそれまでにない形に昇華した異色作であったと思う。確かに哲学的・思想的な演出が強く出ているため、その点については当時もアニメ雑誌で話題になったと記憶している。この辺は個人的主観や趣味・嗜好によって意見が分かれるところだが私は好きである。

　『夢』をキーワードに「うる星やつら」という不思議（不条理）なマンガの世界観と（作品ではラムの『夢』としているが）大人が昔を懐かしみながら思う『気の合う仲間や気になる異性らと一緒に頑張った学園祭前日の準備。あの楽しかった日々がもし永遠に続いていたら・・・』といった一つの『夢物語』を上手くミックスさせていると思う。

　また、映像的にも幻想的なシーン（風鈴・ちんどん屋シーン他）やエッシャー的だまし絵のシーン、そしてあの巨大カメのシーンなど、『夢』世界の雰囲気をうまく演出するシーンが随所にちりばめられいる。[それぞれのシーンに使えわれている音楽も非常にあっていると思う]

　もう一つ、私が気に入っている点は主題歌の使い方である。当時劇場アニメでラストに主題歌を持ってくるという方法は、多分この作品が初めてなのではないだろうか。（この点についてはあまり自信がないので間違っていても許して欲しい）

　夢邪鬼が「夢やからこそやり直しが利きまんのや。何べんでも繰り返せますのや」「夢やから現実やからいうて所詮は考え方ひとつや、ならいっそのこと夢の中で面白おかしく暮らした方がええのんとちゃいますか」と言っているのだが、傷つくことや失敗することを恐れる今の時代の「引き籠もり」を連想させるセリフである。でも「あたる」は現実世界への帰還を望む。『夢』はあくまでも『夢』でしかない、やはり好きな人がいる『現実』の方がいいと。

『夢』をテーマとした作品が多くある中、アニメ作品としてこれほど完成度の高い作品はないように個人的には思っている。ただ何せ２０年以上前の作品なので、作画・動画などに古めかしさがあるのは確かだし、また他のレビュアーの方も指摘しているが「うる星やつら」を知らない人にはキャラの性格や人物の相関関係がわからないと思うので、できれば原作のマンガかTVシリーズを事前に見た方が良いかもしれないが、ぜひ見ていただきたい作品である。

確かにイントロでネタバレになってます。もう「ネタバレ」表示も不要です。別にこの作品でこんなにくわしいイントロを書く必要はないのにね。「うる星」のシリーズの中でも傑作で、押井ワールドらしいアニメだといわれており、私もその通りだと思います。なんていうと終わってしまって書くことがないので思い出を。最初に見たのは京都の菊水映画劇場。邦画の二番館で、よく通いました。修学旅行生がたくさんいる新京極の商店街にあり、変な２本立てばっかりやってました。今はもうありません。ここで「の・ようなもの」とか「みゆき」とか「あいつとララバイ」とか見ました。アイドル映画とか、アニメとかバカにしてたんですけど、面白い作品もあるんだなあと目が開かれました。「うる星」もそんな作品の一つ。もう一本が何だったか思い出せません。「すかんぴんウォーク」だった気もするけどはっきりしません。「すかんぴんウォーク」もとっても面白かったです。今はもう自分の好きなジャンルの映画しか見なくなってしまいましたが、当時は映画なら何でも見たものです。ビデオデッキも持っていなかったし、ＤＶＤもなかったから見逃すともう見られないかも知れない、という緊張感がありました。最近は何でもＤＶＤで見られるので幸せな反面、いつでも見られると思うとかえって見なくなってしまいますね。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

文化祭映画（？）の金字塔です。冒頭の霧笛が鳴った瞬間から、一気に作品世界に引き込まれます。押井監督が作り出した閉鎖空間としての友引町は、時代に先駆けて、引きこもりの精神世界を表現したのかもしれません。その世界の幸せに見えることったら！（真相は少ーし違いますが）

とにもかくにも、当時『うる星』原作の概念を崩し、アニメが表現しうる可能性を示したという意味で、革新的な作品でした。
キュートな登場人物が生き生きと動き回り、悩み考え、暴れあがき、ブツブツ愚痴る。大仰なアクションと、庶民的な生活感が同居し、虚実ないまぜの迷宮が胎動して。そこから解き放たれる瞬間のカタルシスは、今でも充分ハイレベルなモノを与えてくれます。

星勝の多彩なスコアが、見事なまでにカーニバルを彩って、ワクワクさせてくれます。ハリアーから友引町を俯瞰するシーンなど、これほど画面とＢＧＭのシンクロが叶う瞬間は、そうは無いことでしょう。

千葉繁（メガネ）と藤岡琢哉（夢邪鬼）が、まあ楽しげに演じています。作品の中心がラムから離れて、悪のりしていった事が、高橋先生には不満だったのでしょうか。（これは認めていいと思うけどなぁ）

アレックス・プロヤスの『ダーク・シティ』と比べ観て、本作の出来の良さを、さらに認識するも良し、です。

他の劇場版のうる星やつらを面白いと思ったことはなかったんですが、この「ビューティフル・ドリーマー」だけは別格でした。不可思議な雰囲気に最初から引き込まれたまま、最後まで観れてしまいました。
かなりシュールな作品ですが、そのシュールさが何より魅力になっていて、夢想と現実の境を面白く描いた傑作となっています。この監督の嗜好が良い方向に出ている数少ない作品ですよ。お勧めです。