大魔神怒る

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「大魔神 怒る」はシリーズ第二作目(と言っても大魔神は三作品しか制作されなかったが)。監督は三隅研次にバトンタッチされ、過半までのドラマ部分においては三隅研次らしい耽美的な画面が展開される。物語のスムーズな進行を阻むほど画面が際立つことはないが、物語進行のために堅実かつ実直な画面を繰り広げた安田広義に較べると、その絢爛さは明らかだ。単純にいいな、きれいだな、と思う。もっとも後半以降の大魔神が暴れ回るシーンにおいては前作に続き特撮監督の黒田義之が中心となっているようで、前作同様の見事な特撮が繰り広げられている。ただ、この作品ではセシル・B・デミルの「十戒」(新しい方)を明らかに意識した・・・と言うかはっきりとパクった海が割れるシーンが出てるくのだがこれはいただけない。シーンが壮大なだけに粗が目立ってしまうのだ。

　こりゃもう大魔神が怒って水がバーンと割れるのが、今見るとチャチィ特撮なんですけど、いくらチャチクても、心が入っているといいましょうか、「怒り」があれば興奮します。理不尽は許さんという大魔神に感情移入です。最近、会社員としてのつまらぬ悩みが多くてへこたれている私ですが、大魔神がバーンと湖を割ってくれたので少しはカタルシス。やっぱり大魔神は偉大です。そして大魔神の元になった「巨人ゴーレム」を最近見たのですが、これも面白かった。ゴーレムが買い物カゴ下げて初めてのおつかいに行ったりするのがかわいくて、古典もあなどれません。人間の感情は今も昔もそう変わらないです。私はかなりへこんでおりますがバカ映画に助けられる毎日です。と言ってもこれはバカ映画ではありません。なかなか良い。佳作です。三池崇史の大魔神リメークが実現したら死んでも劇場に駆けつけます。それが私の映画への愛です。

昨年１２月３日、地元太秦の右京ふれあい文化会館で本作『　大魔神怒る　』の４Kデジタルリマスター版の上映会に行って来ました。
上映に先立ち、リマスター監修された宮島正弘氏とジャーナリストの井上理砂子氏( 元・京都新聞文化部長 )の対談がありました。
　お話のポイント、１つは大映京都撮影所の撮影監督・宮川一夫と森田富士郎について、もう１つはデジタルリマスターの重要性と課題についてでした。

　宮島氏は少年時代、『　山椒太夫　』の地元広島ロケなどを見て映画撮影に興味を持ち日本大学芸術学部映画学科に進学、宮川一夫の業績を知り、あこがれて大映京都に入所を志した。
　
念のためあらためて書くと、宮川一夫( １９０８〜９９　)は京都出身、日活京都(　のちに統合されて大映京都でキャメラマンとなる。
　主な作品に『　鴛鴦歌合戦　』『　無法松の一生　』『　雨月物語　』『　山椒太夫　』『　近松物語　』『　炎上　』『　ぼんち　』『　悪名　』『　東京オリンピック　』『　妖婆　』『　はなれ瞽女おりん　』『　影武者　』(体調不良で途中降板 )『　瀬戸内少年野球団　』などがあり『　羅生門　』の森の中の逆光、『　おとうと　』での銀のこしは世界の映画撮影に影響を与えました。
またサントリー・トリスの京都の路地を駆け巡る子犬のCMはカンヌ国際広告映画祭で金賞を受賞。
　３年前にはニューヨークのMOMAで作品２１本の特集上映が行われた、まさしくザ・レジェンドですが、「　果たして今の日本でそんなことをしてくれるでしょうか　」と宮島氏は嘆いていました。

　宮島氏は宮川一夫の下で『　影武者　』などの撮影助手を務めますが、それはのちの話。　当初は雲の上の存在。
　晩年の満面笑みの好々爺ぶりからは想像できないが、宮川一夫はあだ名にカー坊( 命名は稲垣浩　)と名付けられるほど自他ともに認める瞬間湯沸かし器で、叱られる間は竹のパッチ(　をはいているように直立不動　)でないといけない、仕事にきびしい怖いボス。
　ただ宮島氏は叱られたことはないそうです。

　閑話休題。　宮島氏は１９６６年大映京都入所。　初日あいさつもそこそこに撮影所長に試写室に連れて行かれ、近日公開の最新作だと観せられたのが『　大魔神　』第１作。
　宮島氏はいたく感激し意欲に奮い立ったが、同作の撮影監督が森田富士郎。

　念のためあらためて書くと、森田富士郎( １９２７〜２０１４　) も京都出身。
　大映京都に入所、宮川一夫などの下で撮影助手。
　主な作品に『　眠狂四郎　』シリーズ、『　座頭市　』シリーズなど。
　１９７１年大映倒産穂は旧京都撮影所スタッフで作られた映像京都設立に参加。
　「　木枯し紋次郎　」シリーズ、『　金閣寺　』『　本陣殺人事件　』など高林陽一作品
　『　鬼龍院花子の生涯　』『　序の舞　』『　２２６　』などの五社英雄作品などの撮影監督を務めました。

　撮影技術に詳しく研究熱心で、あだ名は「　教授　」
　撮影スタッフだった宮島氏によると指示が細かく綿密で大変だったそうです。
　特撮映画の場合、本編と特撮の撮影が一般的でしたが、『　大魔神　』３作は森田富士郎が両方を担当。

　この日の対談のポイントの２つ目はデジタルリマスターの重要性と課題。

　フィルムは化学製品である以上耐用年数があり、劣化、変質、破損( ホールがつぶれてフィルムを送り込めない、など )は、国立アーカイブセンターのように温度管理など配慮された施設であっても厳しいものがある。
　映画会社、個人などが所有しているフィルムはなおさらで、保存、管理は大変で、場合によっては散逸もある。

　デジタルリマスター化は重要だが、コスト、手間がかかり現存のフィルムのどれだけができるでしょうか。

　( つづく　）

シリーズ的には最終3弾の「・・の逆襲」がベストと思っているが水物のシーンが素晴らしかった事を思い出し懐かしく見た。古い映画だけどその時代の作り手側の熱意が十分に伝わってくる。大魔神の身長設定が4ｍ程度となっているのでセットとしての造形物がリアルでかなりの迫力を出している。一時、リメークの話もあったが立消えとなった事を残念に感じているのは51歳の私だけでは無いはず・・・。

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本郷功次郎氏に直接話を伺う機会があって
本郷功次郎氏入室時に大魔神を映像で流しておいたら「わぁーこれ持ってるの？」破顔一笑。気さくな方でいろいろ伺えました。

監督は非常にリアリティを追求する方で・・・
・装備が重すぎて井戸を泳ぐシーンで本当におぼれそうになった。
しばらく誰も気づかなかったそうです。
・魔神が現れるシーンは大きな扇風機でイモの粉をホコリとして飛ばした。目をつぶると怒鳴られ再撮影で、これが本当の涙目。
・見えないとこでもセットは安い部材は一切使っていない。
演者側にするとやはりこれは全然違うそうです。
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細部にわたり大変だったので何十年経ってもよく覚えているそうです。映画人というのはみんなすごいんだなと思いました。
確かにこのシリーズの「念」みたいなものは今でもすごい伝わって来ますね。とてもイイ映画だと思います。