オール・ザット・ジャズ

ほかの方々のレビューを読んで覚悟していたことではありますが
うん。この映画、自分はダメでしたー　とほほです。

自分にとって映画とは100パーセント娯楽です。
見終わって、あー楽しかった〜と思える映画が好き。
ハッピーエンド万歳。
ハラハラしたりドキドキするのはいいけれど、
痛いのはダメなのです。
そしてこの映画は非常に痛かった・・・・
ショービジネス界の楽屋裏を描いているのですが、
こちらの神経をえぐりとるかのような、フォッシーらしい
いやらしい演出が痛いのです。おもわず早送り。
スミマセン。

でもミュージカルシーンはすばらしかったです。
演出も振付もさすがフォッシー。
恋人と娘のダンスシーンは一緒に踊りだしたくなる
楽しさだし、ラストのほうの次々とくり広げられる
ショーも大迫力。フォッシースタイルの
えぐさは癖になりますね。
これを見るためだけでも借りてよかった。

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ギデオンを取り巻くキャラクターの配置がフェリーニの『８1/2』（１９６３年）とそっくり、でも自らの体を駆使して表現してきた人の圧倒的な自負は巨匠フェリーニにも負けていないし『８1/2』の演出家のいわば愚痴みたいな内省をなぞらえつつ、エンターテインメントとしては『８1/2』を突き抜けてフォッシースタイルダンスの集大成を遂げたのではないでしょうか。

ミュージカルで性を表現して欲しい・・・と思っていましたがそのおもいは鍛えられた肉体がくりだすダンスのひとつの頂点「エア・ロティカ」で叶えられ、ミュージカルで生の終焉をみてみたい・・・こちらはラストシークエンスで叶いました。
病めるギデオンの傍らに美しいだけで退屈な死神をそわせずに、フェリーニばりに主人公の記憶のイメージを縦横に映し出していたら、ミュージカルの枠におさまらない大傑作に成り得たかもしれません。

少女の肢体がくりだすフォッシースタイルのダンスの粋なこと可愛らしいこと、少女は少女らしくの振付が素晴らしいから、『キス・ミー・ケイト』（１９５３年）で「すべり込みセーフ！」の衝撃的姿で映画界に本格的デビューをしたダンサーで振付師で監督フォッシーはやはり不世出の天才だったのだと感慨を新たにしました。

生と死の境目の妄想の中で、自分の死さえプロデュースする様は鬼気迫るものがあります。死のミュージカルは幻想的で奇妙な世界観。
Ｂ・フォッシー監督の自伝的作品ということですが、彼の頭の中を垣間見たような気がします。

私の偏見かもしれませんが「芸術」は「ウケ」を狙ってはイケナイと思っています。だからショービジネスとは「芸術」では無いと思っています。芸術より価値が低いなどと言うつもりは全くありません。飽くまで「ビジネス」ですから「ウケ」を狙って当然ですし、「芸術」とは価値基準が全く異なると思うのです。
主人公の振付師はショービジネスの大物らしいのですが、私には何か勘違いしてるように思えます。「芸術家」気どりが鼻に付いて非常に不快です。DISCASさんの解説によれば「自伝的作品」だそうですが、そうだとすれば本当に「鼻もちならない」男に思えます。
やたらモテまくるし、カッコいい（ロイ・シャイダーだから当然ですが）から、妬けるということもありますが、このテの男に騙される女が（妻や娘まで）それほど多いとは思えないので、かなり本人の勝手な思い込みだと思われます。「ウケを狙う」「ビジネス」の世界では結局「カネ」が全てですから、彼は自分がモテたと勘違いしてるかもしれませんが、所詮女の方も「カネ」目当てに決まってます（かなり妬けてる）。
さすがに踊りは見事に「ウケる」振り付けで、観ていて素晴らしいと思いましたが、オハナシとしては不快な作品でした。

朝、バロック音楽を流しながら薬を飲んで自分を奮い立たせるブロードウェイの演出家「ジョー・ギデオン」（ロイ・シャイダー）。リハーサルはボロボロ。ああ！
こりゃ駄目だ、と金を出すスポンサーは諸手を挙げる。みんなバラバラ。演出が駄目、いくら目薬をさしても、駄目なもんは駄目。

「オール・ザッツ・ジャズ」（1979年、米国、カラー、123分）。ボブ・フォッシー監督（1927〜1987）は映画「キャバレー」（1972）の監督であり、ブロードウェイの大ヒット作「
シカゴ」の演出で有名だった。余命を宣告された彼のスランプ体験が、奇跡的な傑作を生んだ。

ギデオンは歌手でなく、ダンサー、振付師として、ブロードウェイのスター・ショーマンになったが、酒、煙草、薬に溺れ、凋落は早かった。

「さぁショータイムだ！」と奮い立つが、皆が反応してくれない。演出する彼の動きが劣化して鈍い。昏倒する。夢の中で、一人の女「アンジェリーク」（ジャシカ・ラング）が現れる。

ここからが圧巻だ。サウンド・トラックＣＤは廃版で実物は高価になっているが、このＤＶＤで十分だし、ネットで聴ける。フォッシー・ムジカの名曲。
「オン・ブロードウェイ」（ケヴィン・クラッシュ ／ジョージ・ベンソン）、「テイク・オフ・ウィズ・アス」（サンダール・バーグマン）……「サム・オブ・ジーズ・デイズ」（エルジェーベト・フォルディ【子役】）、最後圧巻の「バイ−バイ・ライフ」（ロイ・シャイダー／ベン・ヴェリーン）まで。

これを「夢落ち」というなら、それでＯＫ。一番最後のシーンで、ロイ・シャイダーが「音声解説」でフォッシーの最後を語っている。