ヒストリー・オブ・バイオレンス

冒頭。
朝からのうだる様な暑さにテンション下がり気味の男二人。
どこかへ出かけるようだ。
このシーン。
このシーンから発せられる空気。
それを感じると「あ、こういう空気なのね・・・」と身構える。
不穏で不安な定まらない何かが体の中を駆け巡る。
「この空気感だからな」
と、監督に教えられているようだ。
この空気は一度も匂いや纏わりつく感覚を変える事のないまま最後まで進む。
ただひとつ、この空気で変わったものがあるとすれば。
それは濃さだ。
どんどん濃くなっていく。
一見、普通の映画のようでいて。
やっぱりクローネンバーグはクローネンバーグだという結論に達する。
考えようによってはコレが一番タチ悪いかも。

ヴィゴ。
またしても鈍い輝きを発する。
こういう光り方させたら天下一品。
瞳の中に広がっている彼の世界に飲まれそうになる。

アクションシーンが素晴らしかった。
動き方。
倒し方。
そしてスピード。
どれをとっても、とても説得力があり、リアリティーに溢れていたと思う。
速すぎず。
決して遅くもない。
「凄い」と思える絶妙で説得力のある丁度いいスピードだった。
残酷さもピカイチ。
常々「拳よりも掌」だと思っているので、個人的に快心のアクションシーン。
ダメージを与えるなら掌だよ。
急所を容赦なく破壊する躊躇のなさもとても魅力的。
それは有無を言わせない徹底加減。

しかし、どんなに残酷なシーンよりも何よりも、一番ゾワゾワするのはラストです。
このラストは鈍い痛みを残し続ける。
そういう怖さがあります。

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それが真実なのか間違いなのか……でもトムはジョーイです。
染み付いた本能は、永年その世界から離れていても見事に彼に現れます。
人間の本質は変わらない。
只、彼には昔無かったものが、今は有る。
愛する家族と平穏な生活、それはどうしても守りたい。

あり得ない事態に追い込まれる妻。
違う世界の、知らない夫。
さて、自分ならどうするか。
受け入れ難い事実ではあるものの、永い年月の積み重ねは容易に捨て去れるものでは無いでしょう。
愛する気持ちも、容易に消え去るものでは無いでしょう。
狭い階段での夫婦関係には、縋る夫の必死と、拒絶し乍ら受け入れてしまう妻の混乱がその表情に滲み、胸の奥を衝かれます。
彼女を捉えた手を振り解かれ、独り残される彼の姿には、只絶望感のみ。

でもこの事実で家族は変わります。
特に息子の変化は、母親目線では怖い程。
父親の危機を救うのに、暴力に訴える彼の１８０度の変貌振りは鳥肌が立つ衝撃です。
無言で夫（父）を迎える家族の食卓には、割り切れない想いと現実と、でも手放せない幸福と、観る者のあらゆる想像をかき立てるものが有ります。

全く無駄の無いストーリー、バイオレンス・シーン。
余計な台詞も説明も皆無です。
抑制された表情や言葉の裏に見事に彼の過去が浮き上がり、一瞬に爆発する暴力が凄い。

ヴィゴ・モーテンセンがいい。
彼の為の映画です。

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足を洗って普通に暮らしたい元マフィアの苦労話です。
騙していたのは悪いだろうけれど、正直に言えば結婚なんて出来ない、なので隠していたのです。ひょんなことから過去がばれてしまい、「あなたって！！！」ということになってしまうのは当然の成り行きです。
そう、当然そうならなければならないだろう、とか、当然人はそう思うだろうとか、普通の人なら許せないこの男。
始末の仕方も荒っぽい。
でも、結末は家族の結束で終わっています。
その結束も中途半端と言えばそうだし、当然そうだろうと言えばそうだし。
と言う風に、奇をてらうことなく、当たり前のストーリーなんですが、それなりにバイオレンスを楽しんで観られました。

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主人公が犯罪者の不意をついて倒しちゃう。
人間の強さっていったいなんだろう。

武器を持ってるとか肉体的に優れているとかじゃないんだな。

その場の状況を瞬時に把握して、一秒たりとも無駄にすることなく最適な動きができるかどうかなんだ。
どんな展開になっても躊躇なく次の瞬間に相手を倒せること。

そういう哲学について語った映画です。
格闘技の心得みたいだ。
ギャング映画というよりは格闘映画なのかも。

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事件に巻き込まれたために、
捨てた過去と繋がりが出来てしまった男の話です。
が、終わってみれば、
過去を知る者をキッチリ全滅させちゃってます。
これ以上、追われることが無くなったと思えば得ですか？

「お皿を用意してくれる娘さん」
「料理を引き寄せてくれた息子さん」
「見つめあった奥さん」
不器用ながらも、家族が再生してくのであろうな、
と感じさせられましたしね。

「そこまで秘密にしなくてもいいじゃん！奥さんには教えてやれよ！」
「エド・ハリスって何しに来たの？
本人だって確信してるなら、さっさとブチ殺しちゃえばいいのに！」
「それにしても強すぎだろ、ヴィゴ！」
って、疑問は残りましたが。
尺も短いし、観てみる価値はあるのでは。