冷たい雨に撃て、約束の銃弾を

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相変わらず、この手の銃撃戦ものでは、主人公たちがタフです。
少々弾が当たっても平気で応戦します。(ザコはあっさり倒れますが…)

それにしても｢男たちの挽歌｣の影響は今もあるのか、どうしてもそれを意識したような作りです。
加えて、主人公が記憶喪失気味(これもどこかの映画で見たような・・)。

香港ノワールファンは観てもいいのでは、でも｢男たちの挽歌｣を期待してはいけません。

冒頭の銃声音ではまりました。ガンショットの音の迫力が違いますね。夜の森の月灯りと闇の中での銃撃戦のシーンは秀逸です。エキゾチックな街マカオでの西洋人と東洋人の絆も良かったなあ。去年の5月に映画館で公開されていたこと全然知りませんでした。映画館で観てたら幸せな時間が過ごせただろうなあ。映画を観た後にビールが美味しく飲めただろうなあ。

いつもどおりのジョニー・トー節。
しかし、海外資本が入っているせいかどこか無難な仕上がりで、
『エグザイル／絆』のような突き抜けた感じがなかったのは残念。

邦題が、北方謙三の小説の題名みたいだなと思いました。
映画の中身も、男の友情や死にざまの描き方など、ハードボイルドでセンチメンタルな北方ワールドに似ていると思いました。

ジョニー・アリディが、昔殺し屋で今シェフというのが面白い。
いつものジョニー・トー映画と一緒で、男たちの食事場面がいい感じで出てきます。
娘の家で殺し屋３人が現場検証している間に、冷蔵庫に残された食材でパスタを作るジョニー扮するコステロ。
ワインを飲み、パスタを食べながら、犯人について検証し、拳銃の扱いを披露する。
台詞は少なく、目線やちょっとした行動から次第に互いを認め合っていく姿がなんともカッコイイです。
犯人はあっという間に見つかり、追い詰めていくと家族とバーベキューが始まってしまい、家族の前では闘いをしかけないという変な仁義を通す殺し屋。
犯人の方も、そこは「すまんね」って感じで、焼いた肉を子供に届けさせたりして、何だこのほのぼの感は・・？と思ったら、コステロが「孫を殺した奴の焼いた肉が食えるか！」と怒り、がっついて口に入れてた肉をあわてて吐き出したラム・シューがおかしかった。
その後の月が見え隠れする下での銃撃戦は、とても美しいと思いました。

後半、コステロの記憶障害の描き方が中途半端なので、あれ、今どういう状態なの？とか、どこまで覚えてるの？といちいち考えてしまいました。

記憶を無くして、最後にどうやってコステロは復讐できるのか・・そこは良かったです。
ニヤけたエロ親父なサイモン・ヤムに仕掛けていくビッグママ。
子供たちを使ってコートにシールをペタペタ・・このコートが重要なアイテムに。

ジョニー・アリディって、昔はロックシンガーだったんですよね。深い皺も素敵な渋いおじいちゃんです。
殺し屋３人はおなじみのメンバーですが、今回はラム・カートンがカッコ良かったです。
出番は少ないけど、悪ボスのサイモン・ヤムのニヤケ顔も、ほんと憎々しくて良かった。

「エグザイル」は私はダメでしたが、この映画はかなり面白かったです。

どうにも良いね、ジョニー・トー。昔の大藪春彦や西村寿行のようなタイトルに照れるが、エグザイルと同様、男にとって大事なものは友との絆、このポリシーで突っ走る。金や仕事も大事だが一番ではない。ボスだろうと人数が多かろうと関係ない。
このあまりにもクサく単純なストーリーを恥ずかしげもなく描く事に、観ているこっちがだんだん感化されていく不思議な感覚。
復讐ものなら「キル・ビル１．２」などもあるが、映画として出来が良すぎる。ラストはジョニー・トーぐらい潔いほうがいいね、タランティーノも大好きだがキル・ビルのラストはデス・プルーフぐらいのほうがキマッタのにね、と、話がそれたが、年に１、２本はこんな感じの映画に出会いたいものです。