エリジウム

　『第９地区』に続く２作目ですが、劇場公開時にはあまり話題にならなかったので、どうなのかなと思いつつ借りてみました。
　良かったです。多分、１作目の異形の主人公が印象が強かったので、本作では主人公が普通の人間なので、イマイチ驚きがなかったのかもしれませんが、そこはマット・デイモンの演技でカヴァーできていたと思います。
　余命があと幾日もないために一縷の望みをかけた非合法な仕事を選んだ男、マット・デイモンが貧困ゆえに理不尽な条件でも工場で働かなければならないという状況は、今の日本では寓話ではなく、もうリアルな事態として私には感じられます。前作では異なる文化の間に横たわる溝を異星人という存在を通して描いてみせたブロムカンプ監督は、今回は富の偏在による差別と抑圧を描きました。
　先年、話題になったトマ・ピケティの解説書にも今後、富の偏在はますます酷くなり、その再分配を図る社会システムの構築が急務であるという主張がありますが、この映画はその行き着く先を描いたものと理解することもできます。しかも救われないのは、富を握る者が悪人だからというのではなく、利己的ではあっても、自分の家族を守りたいという心理から排斥と差別を行うという現実です。権力機構の最上部に位置するジョディ・フォスターは自分の子供を思う母親でもあります。子供が幸せに暮らせるようにと願う心が、一方では地上で貧困にあえぐ多数の人間を切り捨てることを躊躇しない行動に結びついています。
　そうした悪循環を断ち切るのがマット・デイモンが最後に見せる自己犠牲です。一人の女性への想いから自分の命を差し出した行為が数多の人々を救済することにつながるラストは”一粒の麦もし死なずば”という聖書の一節を思い起こします。前作に続いてアクション（というより殺し合いといった方がいいかも）シーンでは、かなり凄惨な描写もありますが、それらの行為もラストのカタルシスで救われたような気になるのは私が甘いせいでしょうか？

　予告編を視聴した限りでは貧富の差をテーマにした作品だと思っていました。しかし、思っていたほど貧困に窮した描写でもなく、寧ろ将来的な社会福祉や医療に対する不安感を根底に、その近未来を描いた格好になっていると思います。マックス（マット・デイモン）もおバカです。致死量の放射線を浴びることを承知で下らないことやってます。後に彼が肉体直下にねじ込まれる簡易型パワードスーツは、今日研究開発がなされているリハビリ向け、あるいは高齢者向けの運動支援機器を連想しますしまた、終盤エリジウムで、末期の白血病で余命幾ばくも無いフレイ（アリシー・ブラガ）の娘、マティルダ（エマ・トレンブレイ）が簡単なスキャンによって治癒した医療装置。これも今日研究開発がなされている再生治療の完成した医療装置を思わせる描写ぶりとなっています。ここにジョディ・フォスターがエリジウムの防衛庁長官デラコート役でシリアスな演技を展開していますが、あまりパッとしません。結局は製作者がいい加減な学習態度で現在の社会福祉機器や医療機器を捉えており、それ故に近未来像がきっちりと描けないというジレンマからくるおバカな描写に終始しています。

2154の未来、富福層は宇宙ステーション(エリジウム)に住み病気や怪我が治る機械があり、貧困層は地球に住み荒んだ生活を送ってる設定で貧困層の主人公(マットデイモン)が事故にあい、裏社会の悪事に加担し、生命の危険にさらされエリジウムに行こうと決断する。

全体的に何も残らない映画で自分でもなんでかわからない。全ての役者が生かし切れていない事？第９地区の貧困層がエイリアンから人間になっただけの内容だから？・人の生活の息吹が感じられない？・プロテクターで人が強くなる？ロボットでもない中途半端な設定？
過去の幼馴染の中途半端なつながり設定？とにかくやりたいことは何となく解るが、すべて浅い内容で一つも心に刺さらない。製作費だけかかっていて、人間関係や感情が見えないお粗末な内容でした。

しかし、アクションやＳＦ・戦闘が好きな人には普通に楽しめます。第９地区の衝撃はすさまじくこの監督は今後も期待したいと思います。

久々のジョディ・フォスター出演作に期待は高かったものの、らしくない役柄にちょっとガッカリ。この役はイメージ的にシャーリーズ・セロンあたりが似合いそう。しかしそこはさすがに一流女優、クールな支配者側のトップをそつなく演じている。でも、さすがに彼女もお年を召されましたね。

これは未来における宇宙空間の人口コロニーと地上を舞台にしているんだけど、実は現在の地上の問題を扱っていて、今の格差社会の行き着く先、その未来の極端な様子をＳＦ化したものだ。
ストーリーは近年のこうした作品と同じような流れで真新しくはない。しかしラストはしっかりしている。
結局すべての人類がエリジウムの市民権を得、あらゆる傷病を治すことのできる装置の恩恵を受けられるようになるわけだけど、格差社会そのものが変革されたわけではなく、階層間の争いはこの後激化することになる。２２世紀のキリストとなったマックス（マット・デイモン）は一身を犠牲にして地上の人々に光を与えたが、これは新たな試練の“はじまり”に過ぎないのである。

この先、恵まれない者が少数の富者に管理され、隷属させられるような社会がほんとうに来るだろうか。
私はそう思わない。賃金のために、自分たちを取り締まるロボットを作り、ロボットに管理されて生きる社会なんて馬鹿げてる。
そんなふざけた社会は革命によってぶち壊さなきゃどうかしてる。
私はむしろ、そうした未来における痛快な革命劇を見たかった。

感想･総評：いろいろ万人受けしそうな要素を詰め込んで、面白くしようと頑張っている作品、という印象。退屈はしないように作られていると思う

対象年齢：子供〜大人（多少残酷な場面は割とありますが。Ｈ場面はほとんどなし）

食事中に見られるか：やめた方がよい