ひまわり

自分でも憶えがないほど昔に、テレビで見たことがあるような気がしていたのだが。
憶えていた気になっていたエンディングとはまったく違っていて、記憶の不確かさを思い知らされました。

ひまわり畑の下には、戦闘で死んでいった無数の兵士や農民が埋まっているなんて、坂口安吾か。
そう思うと、こちらを向いているあのひまわりの花一つ一つが死霊の顔に見えてきてしまい。ボルタンスキーを水戸芸術館で始めて見た時の衝撃がよみがえってきました。
そう考えたら、この作品が、明るい「愛の嵐」のようにも思えて、戦後で苦労したのは、向こうも同じだったのかと納得しましたが、愛の話にしてしまうところがイタリアらしい。
あー、「愛の嵐」も一応、愛の話だ。怖かったけど。

しかし、どうにも飲み込めないのがマルチェロ・マストロヤンニさんの行動。
ロシアで行き倒れになったところをリュドミラ・サベーリエワさんに助けられ、イタリア人ですから子供まで作ってしまうのも、何とか理解するとしても、記憶喪失になったわけでもないのにソフィア・ローレンさんを忘れるかな？いくらリュドミラ・サベーリエワさんが可愛くても祖国においてきた新妻を放っておくのでしょうか？

そこへソフィア・ローレンさんが尋ねてくると、今度は面倒な手続きをしてまで帰ってきて、「一緒にどこかへいこう。」って計画性のかけらもない。
一体、どっちが本命だ。ストーリー的にはソフィア・ローレンさんの方があきらめて、オートバイ男と結婚し、子供まで作ってしまっていたので辻褄は合うが、じゃあ、帰って来ることもない。当時は手紙のやり取りも出来なかったのでしょうか？
あるいは、母親が息子にこっそり教えていたのでしょうか。

ロシアの（この頃はソ連）可愛い奥さんは、もしも戻ってこなかったらどうする気だったのでしょうか。

わからん。謎だらけだ。これじゃ、エンディングの駅のお別れシーンがいくら美しくても泣けない。音楽が切なくても泣けない。

見なくても良かったのかもしれない。
昔の記憶のままで、切ない映画として、思い出の引き出しに入れておけば良かったのかもしれません。

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第二次大戦に皆が喜んで兵隊として出て行ったはずはない。
私の近所のおじいさんは、水を腹いっぱい飲んで病気を装ってなんとかしようとしたらしい。別のおじいさんは、コネで学校の先生になっていかなくて済んだらしい。そんな人はいっぱいいる。それが本音。

この映画の主人公ジョヴァンニの夫のアントニオも気が狂ったふりをして、兵役を逃れようとしている。みんな行きたくなかった。
しかも、新婚だったし。その芝居がばれてロシア戦線へ行かされてしまった新婚の夫。ロシアってどんな国?三国同盟をしていた日独伊とは敵の国で、生活するには厳しく、シベリアへ抑留されると大変。私の遠縁のおじもシベリアで死んでいる。

終戦になって、夫を探しにロシアへ行く妻。絶対に生きているという確信は第五感からくるものなのか、信念なのか。

探すうちに見つかるのだけれど、もう現地妻がいるところ、その妻が命の恩人というところ、既に子供まで授かっているところなど、イタリアの妻にとって引かなくてはならない事だらけで、結局、別れてしまう決心をつける。

ストーリーは何度も観ているので覚えているのだが、あの美しいひまわり畑がどこのシーンだったのかが、定かではない。お墓のシーンだったような。凄く哀しい「あでやかな黄色いひまわり」だったような気がする。

何度もテレビでしたので母とも観たけれど、母曰く「日本でもこんな話沢山あったよ。遅く帰ると弟と結婚していたとか」とつぶやいたっけ。身近な悲劇だろうけれど、私にはプロットを追うことしかできない。幸せなことである。

３０数年ぶりに観ました。
もっぱらマカロニウエスタンを愉しむ子供だった僕が
この「ひまわり」と
それ以外に「ローマの休日」、「草原の輝き」が
心に残って離れませんでした。
だからか、幼友達との再会のような心境で観ました。

３０数年も経ってしまうと、
記憶がかなり断片的になりがちでしたが
懐かしい場所を巡るようにして確かめていきました。

ひとつだけ
ジョヴァンナがアントニオを切なく振り返るシーンが
僕の記憶にあったのですが、
それと付合する場面がどうしても見つかりませんでした。
どうやら、自分の思い入れが
記憶を再構成してしまっていたようです。
いやはやです。

掛け違いでなかったころの、
ふたりへのレクエイムのような余韻が
なぜかしら、ジッドの「狭き門」のラストを想起させてくれました。

マストロヤンニのやさしげな目尻、
きりっとしてきれいで鮮やかで
憂いを押し隠しているようなソフィア・ローレン
やはり、よかったです。せつなかったです。

DISCASさんにレンタル用のDVDが無いということで、TSUTAYAさんのほうを確認したら、販売用がありました。
それで、リクエストすればそちらから・・・と考え、リクエストした次第です。
リクエストの受付からほぼ2ヶ月待ってNEWに入っていたときは嬉しかった。

本題です。

1970年・・・35年前作・・・見たのは数年後、彼女と・・・高校生時代でした。
洋画にはあまり興味がなかったけれど、当時としては結構評判が良かったので見に行きました。

感想・・・すごい・・・の一言。
大人ってこんなにも苦しい思いをしてるんだーとか、
この二人（ソフィア＆マルチェロ）は、どんな気持ちなのだろう？？？とか
ハッキリとは理解出来ないながらも・・・なんとなく？？？

今、この年になってよーく解ります。
・・・結局は、見た当時の感覚と同じ。

細かい事は言いませんが、とにかく涙なしでは見れません。

愛って・・・うれしいんだか？かなしいんだか？

・・・ちなみに一緒に見た彼女・・・今、家の中で孫を追いかけています。

はるか地平線のかなたまで続くひまわり畑。土の中にはたくさんの人々が埋められており、ひまわりの１本１本がその墓標であるという。
第二次世界大戦のドイツ・ソ連戦にはイタリアも参戦した。1941年7月から1943年3月までの間に、1万5千人が戦死、3万人が負傷、7万人が捕虜になった。そして捕虜の3/4は飢えと病で帰らぬ人となったという（NHK鹿児島放送局）。
この作品でいちばん気になるのはアントニオがソ連から戻らなかった理由である。敵の兵隊が攻めてきたら女性たちはレイプや略奪をおそれるはず。傷ついた敵の兵士を家まで引きずって帰って世話をする、てなことがあるのか？アントニオのほかにも、ソ連に残ったイタリアの兵士が登場する。
国と国が戦争をしていても、人間と人間、男と女となると話は別ということか。「シベリアの娘」というveryblueさんの素敵なレビューがヒントにはなりそうだけど。