アメリカの夜

F・トリュフォー自身が監督役というのが良くて、とても面白く見ました。細かな演技指導や、小物の選択等、実際にあんな感じで映画を撮っているという感じが伝わってきます。
フェリーニの８・１／２を少し意識しているみたいですね。他の映画監督の資料を取り寄せるシーンがあったりして、トリフォー監督のこだわりが感じられます。
おもしろいシチュエーションの映画ですが、端正であくの少ないトリフォーらしい作品になっており、スランス映画にあまりなじみの無い人にも受け入れやすいのではないでしょうか。

ジャクリーン・ビセットがとてもきれいで、可憐です。

最初、特典映像かと思ってしまいました。
撮影風景がつづくストーリー。
淡々と、俳優さんや女優さんを追っていく。
大きな事件が起こるわけでも、ドキュメンタリーというわけでもなく
撮影現場の人間模様が展開していく。
この映画は、監督、出演者の、その力量が見事に試され、
それが成功していると言えるでしょう。
いつのまにか引きこまれていきました。
映画の中の映画の役を演じている時の演技と、
撮影風景という「素」の演技の使い分けが見事です。
大きく期待を持って観るのではなく、
息抜き感覚で観ると、その良さがより感じられるでしょう。
映画好きの方にお勧めです。

楽屋落ち業界映画になってしまいがちな設定を、一般人の観客でもスッと入り込めるように描いているのはさすがトリュフォー！
古い映画だけど、原題にちゃんと通じる面白さがあって、他のヌーヴェルヴァーグ監督とは、一線を画している。

なんていい映画！　これぞ映画！　セ・ラ・ヴィって
思わず叫びたくなるこれはなんなんだろう！
いろいろ批判はされてるけど
トリュフォー、さすがです。
ジャン・ルノワールの正統なる後継者！
（ほめすぎですがほんと、いい映画なんです）

この映画はトリュフォー中期の作品で”大人は判ってくれない”以降、なかなかヒット作がなかった彼にとって全世界に名を知らしめる事になった作品である。
　
　相変わらずトリュフォーは切り口が面白い。
　監督なら誰でも一度は”映画に関する映画”を作ってみたいと思うだろうが、彼の手にかかると魔法のようである。
　
　まずタイトルに”アメリカ”tもってくる時点で、いかにアメリカ（ハリウッド）を敬愛しているかの象徴でもあるし、、実際ハリウッド映画の監督や作品の名前も随所で出てくる。
　映画製作の現場、舞台裏を通じての群集劇であり、そこにコメディ、ロマンス、サスペンス、女性への憧れ、ひいては同性愛、までを網羅して描かれているから凄い。
　１歩間違えればごちゃごちゃした内容になりそうだが、
　それが見事な化学反応によって昇華してゆく感じで全く飽きない。

　　今回のジャクリーン・ビセットは実に上手いキャスティングだった。同じ英語圏でも　米女優を選ばない所が上手い。美しく、知的で抑え目な女優こそ、何か”内に秘めるもの”を感じさせる。トリュフォー作品に出てくる女優は脇役であれ皆美人　　が多い。彼の女性への関心の高さ、憧れを伺わせるし、”女は魔物か？”という終始繰り返されるアルフォンスのセリフを通じてて自問自答しているのだろう。
　
　そしてこの作品では”フェラー監督”として彼自身が出演しているのも鍵で、”（ヒッチコック同様）予算削減のために自身が出演する”という意味と、トリュフォー自信が”カメラの内と外の存在”になることで現実と虚構世界（作品）の境界を曖昧に　したという２重の意味があると思う。
　従って、私達も、何となくどっちの世界の話なのか混乱しそうになるし、それがまた面白い。（この”曖昧さ”こそヌーヴェルヴァーグなのだが）



　ちなみに”day for night”とは特殊フィルターを通して昼に撮影したものを夜のように見せる撮影技術の事で、これまたハリウッドへの敬愛である。
　他にも車の撮影や、スタント、室内撮影や雪を作って街に敷き詰めるシーンなど、どうやって映画を撮影しているか、画面に映らない部分で皆何をしているかが丸見えで、　　たまらなくワクワクする。

　真の映画好きなら絶対見ておくべき作品だ。