空母いぶき

クリスマスイブにどこかの国が日本領土である初島に上陸して島を占拠、警備に向かった海上保安庁の巡視艇ならびに乗組員を拿捕するという事件が起こった。
政府は事態収拾のため「空母いぶき」を主力とする海上自衛隊を現場に急行させる。
この設定は誰が見ても尖閣諸島に中国軍が上陸したとの想定だと思うことは間違いないところだが、本作では東亜連邦という仮想敵国になっている、原作では中華人民共和国としているが、これも一つの配慮なんだろう。
自衛隊の偵察機が攻撃を受け撃墜され最初の犠牲者が出る。
そして敵潜水艦や艦艇から魚雷、ミサイル、航空機の攻撃を受けることになる海上自衛隊、ここまでくると反撃しないわけには行かない、いわゆる専守防衛ということになるのだが、政府からは「外交交渉も鑑みて極力戦闘行為は避けられたい」とのメッセージ。
政府もアタフタして防衛出動命令をなかなか出さない。
先制攻撃しないとこの戦には勝てないと超好戦的な意をとなえる大臣もいる。
ここらが戦争放棄を明記した現憲法下で多くの制約を受ける自衛隊のジレンマというべきところであろう。
武力行使なしで平和が維持できればこれに越したことはない、でもどこかの国が理不尽に自国の国民、財産、権利を侵害した時にどう対処すればよいのか。
話し合いで解決なんて言うのは理想論、話し合いの通じない相手だっているし、他国を武力でもって侵略しようという輩に話し合いが通じるはずもない。
本作に登場するいぶきの艦長は言う「自国の国民が殺されたらそれは戦争だ」、副長とは些か意見が違うようだが、根っこの部分は同じ。
戦闘機と空中戦になれば当然相手を撃墜しなければならない、しかしミサイル、魚雷発射を阻止するために相手艦艇を撃沈させれば何百人の命が失われる。
艦長の取った行為は実に冷静で見事ではあるが、緊迫した現場でそれだけの判断を下せる指揮官が本当にいるのだろうか、いやいると信じたい、そうでないと戦闘が直ぐ戦争になってしまう。
日本に空母は必要なのか、現実的には必要ないかもしれないがそれが戦争回避の抑止力になれば必要なんだろう。
本作は映像的にはもうひとつリアリティーや緊迫感に欠ける点は否めないが、日本の防衛の在り方についての問題提起は多い、一度こんな状況になった場合どうすればよいのかそれぞれが考えてみるべきだろう。
コンビニ店長のシーンはなんの影響も無いように思えるが、彼の手書きのメッセージにはそれなりの意味があるのだろう。

自衛隊の仕事って面倒で大変だなあという映画。
本筋はシリアスなんだけど、それ以外のエッジが立ちすぎている。
これはもう愉快な映画として、楽しんだもの勝ちでしょ。

常にニヤニヤしながら、やたらマウントを取ってくる主人公。
本気で何がしたいのか分からない潜水艦長。
首傾げてトイレに行っただけの総理大臣。
謎ポエムを書きながら長靴にお菓子をギュウギュウ詰めるだけの人。
一級フラグ建築士とインビンシブル・ブーメラン・フォトカード。
唐突に浮上するお子様ランチの群れ。

ところどころの台詞は示唆的なんだけど、展開のまずさから
「今、言うことですかそれ？」と更なる笑いを誘う。
原作は未読だけど、たぶんもっとマシなんだろうなあ。
邦画の悪い癖が出てしまった感はあるが、爆笑できたからヨシ！

見ていて架空の話だけど実際に今後の日本を想定しているみたいでドキドキしました。でも実際に起きたらこんなに上手に日本の政府は対応してくれるのかなと見ていて不安になりました。

それにしても主役級の出演者が多くて驚きました。

此の映画で一番印象に残ったシーンは中井貴一さんが
サンタクロースの靴のお菓子にメッセージを忍ばせる
暖かいシーンだけです。

映画でした。原作の意図を全く理解せず、無駄に、無意味に追加してあるシーン(
新聞記者・コンビニ店長・捕虜パイロットetc)にイライラ。最後のオチに至っては"なんじゃそりゃ"しか感想が出ない有り様。時間の無駄でした。監督・脚本家はせめて原作くらい読んでから作りなさいよ。誰にも、何も伝わらないよ。