チャイナタウン

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公開当時、映画雑誌に載ったポスターが十代の私の目には衝撃的に素敵で、フェイ・ダナウェイの細い眉と物憂い瞳、下がった口角の怖い程の女の魅力に随分憧れたものです。
俗物故の、ポランスキー監督のプロフィール（「シャロン・テート惨殺事件」）への興味も手伝って気持ちははやったのですが、実際観たのは成人してから。
でも本作の真髄は、大人が観ねば解らないのではと思います。

浮気調査と水利権の争いに端を発するストーリーはひどく地味な印象ですが、先の見えない展開と登場人物の個性がどんどんと観る者を深みに引きずり込みます。
ノスタルジックなファッション・街並み・家具調度、奥行きのある映像にムード溢れるＢＧＭ……それだけでも充分満足なのに、この俳優陣の贅沢な事。
ジャック・ニコルソンにジョン・ヒューストン、バート・ヤングと個性の塊の皆様の、その佇まいだけで映像が深くなる。
そして何と言ってもフェイ・ダナウェイ。
冷静で美貌の令夫人から、どんどんと哀しい女の顔を露わにするクライマックス迄、目が離せない存在感です。
他に誰も演れないだろうモーレイ夫人、正に適役だと思います。

娘（妹？夫人にとってはどちらだったのか？）を乗せて走り去る車。
発砲する刑事。
長いクラクション音と停車する迄の「間」は、絶妙です。

独りの女性を破滅させただけの、理不尽極まり無い結末。
ありていに言えば「何も解決していない」（真実は隠蔽されてしまう）訳ですが、それでも観る者を納得させてしまう「ちから」の有る一本だと思います。

なんだかものすごく高級な映画を観た気がする。
すべてにおいて完璧。
映画の娯楽要素が嫌みなくそこら辺にちりばめられて、これぞ「映画」という作品です。
フェイ・ダナウェイきれい。
ジェーン・フォンダではこうはいかなかったとおもいます。

　関係ない話だが、雰囲気を「フインキ」と読む小中学生が実際に増えていて、驚きます。
　この映画の「フンイキ」はとてもいいです。ニコルソンのスーツ姿もさまになっているし、渋い演技が見られます。しかし、深夜横になってみていると、うかつにも途中でうとうとしました。
　ラストは、悲しい終わり方でしたね。

　１９７４年製作でありながら、いまだ全く色褪せる感のない名作。まだ若きＪ・ニコルソンが私立探偵を演じる（何でも「チャナタウン」は３部作予定だったため、ニコルソンはジェイクを定着させるべく、他の探偵役を断ったらしい）。ストーリーはジェイクが浮気調査を依頼されるところから始まり、正統派のサスペンスとして展開していく。どっしりした作り。そこには今日びの映画につきものの気取りや悪ふざけはない。シブい。とにかくシブい！
　こんなに重厚な作品なのに、特典でのインタビューを見ると、制作側はこれを特に「いい出来」とは思っていないようだ。何と謙虚な！確かに冗漫な部分もあるが、今の意味不明にスッ飛ばすだけの薄っぺらい映画とは月とスッポンでやんすよ！
　そしてラストはあまりにも悲しい。こんな虚無的なラストも今の時代じゃ不可能だろなー。やっぱたまには古い映画を観るもんだね。

ジャック・ニコルソンが探偵役をやっていて、怪しげな事件を探るという話でして、彼が彼らしい探偵を演じていてて好感がもてました。ただ、事件の中身が陰湿だったせいか、彼特有の「ニカッ」とした笑顔のシーンがなかったですね。軽いタッチの軽い探偵役の作品が観たいなぁ。

で、この作品、なにも解決がなされないまま終わりました。結局のところは「一部が犠牲になるけど、大多数が幸せになるんだから、いいじゃないか。」というのに押し切られる、という話でして、あんまり救いがない。でも、こういう話は現実ではありそうだなぁ、とそんなこと思う作品でした。