ミルク

ガス・ヴァン・サント監督は、「マイプライベートアイダホ」
の時から大好きですが、普遍的なテーマ、大事件、恋愛を描く時も
いつもとことん表現するということを追及してくれている
感じがします。

アカデミー賞を取ったショーン・ペンはよいのはもちろんですが、
個人的にはジェームズ・ブランコ。
スパイダーマンから、容姿がいいなとは思っていましたが、
気負いもなく難しい役どころを演じている気がして、
他の作品も観てみようかなと思いました。

それにしても、アメリカは自由な国です。
でも、やはりマイノリティは生きにくいのだと、
生きるために一度は声を上げねばならないのだと思いました。

なんとも刺激的な映画だ。

私は同性愛者に対し偏見をもっていないが、男同士の肉体的な交歓だけはどうしても理解できない。この映画のそうしたシーンにもまともに目を向けられなかった。
こうした嫌悪感は理屈なしに感じてしまうもので、その意味では米国のキリスト教原理主義者たちの気持ちもわからなくはない。しかし、学内や職場など一般社会でのあからさまな差別は許されるはずはなく、ハーヴィーたちの集団行動は当然だ。
日本でも同性愛者はけっこういるはずだが、そこは「何事も事を荒立てたくない村社会」のこと。彼らは表には出ず、ひっそりと暮らしているのだろう。表向きは結婚して子を持ちながらも、実のところ同性愛者で、家族には内緒で隠れて交歓をしているという人もいるはずだ。「君たちを排除する気はないが、そうしたことはプライベートな空間で楽しんでもらいたい」というサイレント−マジョリティーの願望をきちんと理解しているのだろう。

それにしても、ショーン・ペンの器用さには感心。私は俳優としての彼をあまり評価していなかったが(アカデミー主演男優賞２度にもかかわらず)、考えを改めたね。監督作品としては近年の『イントゥ・ザ・ワイルド』制作に特に感銘を受けた。彼の見た目のイメージとは違う社会派としての活動に、大いに注目しているところだ。

ハーヴィーが市長と共に暗殺された最後にはショック。
「“戦争”というものが、なぜ起こるのか」を改めて学んだ思いになったよ。

ショーンペン、すごく良かった。これならオスカーもとって当然と思いました。政治家役としては、前に「オールザキングズマン」で民衆を前に熱く演説するシーンが印象的だったけど、今回のゲイ役での方が数倍好感が持ててかっこよかった。

そして、脇を固める「恋人」や「サポーター」も、イケメン男優（ジェームズフランコ、エミルハッシュ、ディエゴルナなどなど）ばかりで、彼らの70年代ファッション＆ゲイぶりを発揮する演技が興味深かったです。

注目したいのはほぼ紅一点のAlison Pill 当時のDyke（＝レズビアン）のサバサバした感じ、堂々した演技存在感あって印象に残りました。

この映画の決まり文句（？）
Hello, I'm Harvey Milk, and I'm here to recruit you.

実在したハーヴェイ・ミルクと言う人物を本作を見るまで知らなかった。米でゲイやマイノリティーの為の運動に尽力し、公職にたったはじめての人との事だ。
ガスヴァンサント監督なので期待も高まる。彼はリバーフェニックス主演の「マイプライベートアイダホ」でもゲイの男娼描いてましたけどそっちのケがあるのかな。

ミルクなんてなんともかわいらしい苗字で、彼の陽気で優しい人柄を表してるようでタイトルにもぴったりだ。
予想通りカメレオン俳優としてのショーンペンの面目躍如。
お姉しぐさや、とろーんとした話し方がすごーくゲイっぽい。
不細工で若くもないということで、当然受けは悪いのだが（ゲイの世界は見た目命）果敢に年下のイケメンを次々ゲットしちゃうとこがすごい。
地下鉄構内でジェームズフランコ演じるゲイ（この人もゲイっぽいよね）をナンパして「年寄りは相手にしない」とかひでーこと言われても食いさがること。この積極性見習わなければ。男同士のキスシーンは見てはいけないもののようでなんともいやらしかったなあ。

登場人物はほぼゲイコミュニティーの人たちなのだが、ゲイにもいろんなタイプがいるのねー。ゲイの見本市状態でちょっぴり胸焼けいたしましたが。

ミルクさんは人間として正義感があり魅力的なので、ゲイ以外の人も惹きつけるのだと思う。エンドロールに出てくる実在のミルクは以外にかっこよかった。ショーンペンちょっとブサキモに演じすぎ。
何度落選しても嫌がらせや圧力を受けながらも、（この時代のゲイへの差別って本当すごかったらしい）公職就任に挑戦し続ける彼は志が高く実に立派だ。

すっかり大御所的な演技派俳優の評価が定着したショーンペンだが、あのマドンナの最初の結婚相手で、ヒモ旦那で暴力夫として有名で、よくパパラッチ殴ってた過去をご存知だろうか？
当時から、こんなダメ男だけど演技は抜群にうまいと言われていたらしいが。

ラストはかなり突拍子もない方向で幕がおりるのだが、まさに事実は小説より奇なりと言った感じの幕引きで驚いた。実話ベースならではの衝撃のラストだと思います。やりきれないお話ですね。

前半のゲイコミュニティーの話から、後半では一転して政界進出と、ぐっと社会派な作りです。
一見の価値ありの力作ですよ。

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ゲイであることを隠して生きてきたミルクだったが、年下の若い男と恋に落ち、自らを偽ることなく生きて行く為に、二人で新天地サンフランシスコへ。
ミルクの元には、同性愛者が集うようになり、次第に彼らへの差別や偏見と戦うべく政治の道へと進んでゆく。
しかし、政治活動に忙しくなることで、恋人とは摩擦が起きる・・・。
それでも、ミルクはいつの間にか多くのマイノリティの希望の星となっており、そこから降りることはできなかった。
様々な困難を乗り越え、歴史的な一歩を踏み出した・・・。
だが、その大きな一歩は、大きな反発や嫉妬も買い、命を奪われてゆく。

ミルクを悼むパレード。

小さな光が集まり、大きな光となった。



とても素晴らしい話なのだが・・・
どーしても、ショーン・ペンがダメだった・・・。
ショーン・ペンが熱演すればするほどダメだった・・・。

が、エンドクレジットにハーヴェイ・ミルクご本人の写真が映った時、どっと泣けた。
あー、この人だったら、これだけの人の心を動かせるだけのチャーミングさがあるな。と、思った・・・。

ごめんね、ショーン・ペン・・・。
合わせてレンタルも開始されるらしいドキュメンタリーを観たいと思います・・・。