パルス−回路−　アンレイテッド・バージョン

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

リメイク元の『回路』は未見なので単品での評価になりますが、彩度を極端に落とした色彩感覚は悪くないと思うし、あからさまにコケオドシ的な表現も控えめで中々じっくりと見せてくれるサスペンスホラーに仕上がってます。

基本的なネタはオリジナルからの踏襲でしょうが、主人公の周辺から沸き起こった不可解極まりない事象の数々が終末的展開を見せて行くストーリーの流れはそこそこのスケール感を纏って否応無く見てるものの感性に迫って来ます。デジタル時代の産物を媒体にその創造者達を蝕んでいく異形の者達。決して直接的な手段を講じる事無く、魅入った人間の精神に入り込み生きる力を吸い上げて行くオゾマシキ存在は、所謂ゾンビの亜種的な扱いながらも相当異なる質感を醸し出してますね。

昨今の洋物ホラーにしては、ミステリアスなストーリーでゾクゾクさせてくれる逸品、かと言ってビジュアル的な見せ場もそこそこ用意されてます。オリジナルは黒沢清だけに屁理屈満載の不条理ワールドが炸裂してるんでしょうが、やたらと観たくなったのも確かですな。本作『パルス』について微妙な評価が目に付きますが、決してクソミソ言われる様な作品では有りません、一見の価値は十分有ると思いますよ。

　黒沢清の「回路」は個人的にはホラーの名作だと思っています。黒沢監督作品の中でも、「ドッペルゲンガー」と並んでベストでしょう。その米国版リメーク。　
　話はずいぶん分かりやすくなってますが、その分、「回路」にあったワケの分からない怖さはすっかりなくなって、ちゃんとエンターティンメントになっております。しかし、恐怖シーンの描写が平凡。アニメーションみたいな幽霊が迫ってきても、怖くはありません。まあそれなりに出来ているので、最後まで飽きずに見ることは出来ました。
　幽霊は物理の法則を超えているから怖いのに、この映画の幽霊は物理の法則にきっちりとはまっております。幽霊というより、西洋ですからやっぱりモンスターに近いのでしょうか。
　ストーリーの展開としてはそれほど悪くないし、これ単独としたらまあまあ楽しめると思うのですが、どうしても「回路」と比べてしまうのでいけないんでしょうね。
　「回路」にあった終末感は、この映画には希薄でした。希薄なりに、仄かには残っておりますけど。
　つまらないというわけではありません。あの難解な映画をよく分かりやすくリメークしたと思います。その意味ではまずまずよく出来た映画ではないでしょうか。
　赤いテープもただ境界としてあるから怖いのであって、「呪怨」の新聞紙のように、窓にベタベタと張ってしまっては、もはや怖くありません。この映画を見て興味を持たれた方は、是非、オリジナルの黒沢清版「回路」をご覧下さい。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

酷評が多いようですが、私は楽しめました。
日本の「回路」は未見です。

インターネットや電波を通じて「奴ら」は現れ、人間の「命」を吸い取っていく。
インターネットが普及し、生活の一部になっている今、もしもこんなことが起こったらと思うと、恐怖です。
インターネットというブラックボックスにある得体の知れない恐怖！電波のない生活は考えられない故に、逃れられない恐怖！それをくすぐっていました。
ただ、「リング」にあったような恨みのような「理由」が不明なところが、欲求不満なところです。
それが判らないと、本当に救いようがない。

私はそこそこ楽しめました。
妻も怖かったと言っております。
お勧めします。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

　黒沢清でしたか、オリジナルは。私は、どうもこの監督のホラーは合わないんですね。回路は見ましたが、怖いと思わなかった。まあ、主演の俳優のせいもあるかもしれないけれど、印象に残ったのは、ラスト近く大きな飛行機が火を吹いて落ちていくところ。この映画でも同じシーンがありましたが。
　キュアってのもありましたね。あれも主演の俳優が、もうひとつだめなんですね。若い俳優って、日本でこれってのはいないですね。岡田じゅんいち（漢字忘れた）はいいですけどね。
　元の監督が合わないのに何で見たかというと、リングやジュオンがありますから、面白くなってるかもという期待はあったのですが、それほどでもなかったようです。ホラー映画は満足するものを作るのって、ほかのジャンルより難しいですね。結構マニアがおおいですから。

黒沢清監督作品の『回路』を、ハリウッドでリメイクした映画です。
リメイクと言っても、オリジナル作品に忠実ということではなく、幽霊の描き方やパソコンを通じて死が届けられるというシチュエーション（『幽霊に会いたいですか？』のディスプレイの文字や鉄塔からの落下など）を真似て、全く異なる味付けとした異質作品です。

他国に比べて、日本映画のリメイク権は相当安いと聞いたことがありますが、無名の俳優を使い、『とにかく人気のＪホラーのリメイク権をとったんだから、映画にしちゃえ！早い者勝ち！』とばかりに恐くもない場面を、意味もなく、音響と仄暗い演出で、ただただおどろおどろしく、しかも安上がりを前提に演出してしまったのが、まずかったのではないでしょうか。
それ以上に、台本が酷すぎるンですが！！この程度なら、きっと映画好きの素人にでも書けてしまいそうです。同じ脚本家が手がける『スクリーム』の方が、数段良かったと思います。人間、売れてくれば、自己満足に陥り、描く作品の質の低下が懸念されますが、その悪い例の典型かも知れません。

全体的な感想としては、“カットやシーンでの恐怖”ではなくて、“物語としての恐さ”を追求した映画にして欲しかったと思います。正にＣ級映画ですね。
星一つ★でした・・・。