キング　罪の王

怖い映画でした。
「アメリカの社会問題を背景に」と紹介されていますが、差別や銃やドラッグがでてくるわけではありません。
出てくるのは普通の人々（なのでしょう）。
でもなぜかどの人からも幸福感が感じられません。
渇いた風土感が漂います。

よく大統領選挙で、宗教勢力云々の報道がありますが、映画にでてくるような教会に集う人々がそういう勢力なのでしょうか。
でも学校では、宗教教育のカリキュラムが否定されたり、祈っているとボールをぶつけられたり、「神」はさほど皆から信じられているようでもなさそうです。

神とは何か？罪とは何か？を問うた映画なのでしょう（たぶん）。
私はこの映画の結末のあと、牧師である父がどう神と向かい合うのかがすごく知りたいです。

ガエル・ガルシアの、苦悩や悲しみを一切浮かべない表情こわかったです。演出の冴えを感じます。
美青年だったウイリアム・ハートは、鬘をかぶったりマッチョになったりせず、自然に齢を重ね、奥行きのある役を演じててやっぱりいいなぁ。

もちろん、ガエル目当て観たんですがｗ
なんてことでしょう・・・少年おっさんになっていた。
あどけなさを残しつつも額は後退していっている！？悲しいかなぁ〜。
違う。多分あの短髪がいけないんだ！！！前髪で隠せばまだまだ可愛いはず！
そんな感じで冒頭は彼の変貌ぶりに夢中になっちゃってましたｗ

気が付けば、遥々会いに来た父親から拒絶される可哀想なエルヴィスがいて、
そこから彼の計算か、衝動か、復讐か、愛への渇望か、
タブーを犯し、罪を重ねてゆく姿がスキャンダラスに描かれる。
エルヴィスはいったい何がしたかったのだろうか。愛に飢えてた故なのか？
悪意を微塵も感じさせない無邪気な笑顔と眼差しで、全てを破壊していく。
父の罪は、子の罪となって現れたってことなのかなぁ〜。

太陽が燦々と輝き緑が目に眩しい映像は、その後映し出される現実の悲壮感を増す。
美しい庭の光景から核心へと迫ってゆくカメラワークに、ゾクゾクさせられた。
華々しいアメリカだからこそ、病んでる人間たちが余計にあぶり出されてくるのよね。
神や信仰に触れながら、「罪は赦されるのか」という疑問を投げかけてくる。

妹役のペル・ジェームズが、２７歳にして１６歳を演じていたとはっ。驚きです。
ガエルより年上なのに、十分高校生に見えてましたよっほんと。
ガエルは罪深き人間を、漂々と演じきっている。
彼はこんな役やらせたら、上手いよねぇ。二面性のある役にぴったりだ。

こういうガエルくん作品は以前も観たことがある。
『アマロ神父の罪』だ。この作品も観終わったあと言葉にならないような後味の悪さが残るものだったが、本作も相当にしんどい(苦)

人間の究極のダークサイドを垣間見せられるなんとも怖い物語だ。
ガエルくん演じるエルビスの、美しく愛くるしい表情の裏に秘められたあまりに冷酷な本質と、愛に飢えたがゆえに冒したであろう最悪のタブーの数々！

物語としてはかなりヘヴィーなはずなのに、その展開はあまりにしらじらしく、無慈悲で空虚極まりない。

愛とか情といったものが感じられない無情な作品と思った。
濃厚なラブシーンにも、家族団らんのシーンにも体温が感じられない。
田舎町の風景にも川のせせらぎにも闇が覆っていて、その中でエルビスの存在はどこか不敵でミステリアス。思わず「怖い」と感じてしまう。

彼の行いは果たして、愛を受けられないことへの復讐だったか？

それとも、愛を欲するがゆえの最悪の所業だったか？

いやぁ、期待どおり面白かったです。
ガエル君、短髪はあんまり似合わないと思うし、なんかブサイクになった気がしました。あんなに鼻ブサイクだったっけ？
そんな事はともかく。
お父さんに対する究極の復習劇ですね。本人に直接手を加えるより、大事な家族を破壊していく、この方が効きます。
でもラストが「えっ？これで終わり？」って感じで少し拍子抜け。
こんなに面白いのにどうして所有枚数Cなんですか？
てっきりＳはあるだろうと思ってましたが。
これはレンタルしても損しないとおもいます。

多分、ポールダノ目当てに借りたのだと思うけど、ガエル・ガルシア・ベルナル主演の
見ごたえのあるいい作品に出会えてよかった。掘り出した。

彼はほんとうにセクシーですねぇ。若いときから、この作品でも顔が若い！
この先の展開が知りたいと思う。

わりと早い段階でポールダノが消えてしまう展開にちょっとびっくりした。
マレリー役のペル・ジェームズはこの時27歳だったらしい。（16歳の役だけど）
綺麗だった。