ゆりかごを揺らす手

女ストーカーもの数あれど、私の中の白眉は、本作と
「ルームメイト」ですね。
古い作品ですけれど、すごくシンプルに、ドロドロした
女の情念が描かれているのがよいと思います。
今は時代状況も刻々変化しすぎで、シンプルに人の気持ちを
描くことが難しくなってきていますから。

レベッカデモーネイはこの作品でしか私観た記憶ないのですが、
はまりすぎですね。まさに彼女の代表作でしょう。

冒頭の産婦人科のセクハラシーンはじっとりした緊張感が
漂っていていやでも惹き込まれました。
私も昔医者にいってセクハラというか、嫌な思いしたこと
あるので、不快な気持ち思い出しました。
描き方が上手いなとおもったのが、セクハラとかチカンて
グレーゾーンぎりぎりのところでしかけてくるから
すごく嫌な緊張感なんですよ（笑）

この作品中でも下半身の触診の際に分からないように
手袋を外すのですが、おもいきりやられたらこちらも
反撃できるのですが、これは・・もしや・・？って感じで
仕掛けてくるから。

主演のレベッカデモーネイは医師夫人らしくクールな美貌で
賢そうですごくキレイ！
家政婦としてターゲットの家庭に入り込みますが、奥様より
断然美人なんですね。
世の奥様なら自分より美人の家政婦なんて絶対雇わないよねー。

最初はいろいろつらい事があった彼女に同情的目線で
観てましたけど、どんどん本性があらわれるにつれ、
うわこの女マジキチだわ・・という感じで、どんどんこわれて
ゆくさまが、すごかった。

後半ヒステリックに大暴れするさまはかなりの迫力で、
めっちゃ怖かったです。
クールな美人のこの壊れ具合のド迫力がこの作品の真骨頂です。
ここまで乱れて暴れ回ってくれる女優さんはなかなかいません。

似たような作品（女ストーカーもの）でもいまいちのものが
多いのは、レベッカデモーネイとの女優の力量の差でしょうかね。

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復讐劇には大抵、見入ってしまう。
人をそこまでして突き動かす
エネルギーってものに圧倒されながら・・。

動機や目的に筋が通っていないから直接的に
ペイトンに感情移入できる訳ではないが
医師夫人であったペイトンが（被害）妄想に取り憑かれ
果ては現実との回路を完全に失っていく流れに
ペーソスさえ交えながら迫っていく所が面白い。

ヒステリーを内包した行動は結果、出たとこ勝負の危うさと、
せこさがあるが、その浅薄さが返って憐れみを誘う。
美人って得だね。

だって、それと対比させるファニーフェイスのクレアの
人物造型が、これらの企てに全てハマるに最適なのだ。

正規のルート（紹介所）を通していない素性知らずのペイトンを
安易に雇い入れてしまうようにアカの他人にオープン（寛大）なわりに
ペイトンのささやき戦術によって何年も連れ添った夫を
簡単に疑ってしまうなど著しく思慮に欠け
人なつっこい笑顔がエキセントリックに豹変するクレアって
浅すぎる・・・
と印象づけるに充分だ。

ペイトンの復讐シナリオは最終的に主婦クレアを排除し
この家庭を乗っ取るという荒唐無稽な発想。
クレアの夫がペイトンの魅力になびかなかったのはエライが
「ママがいなくなったあとは、ペイトンが私を守って！」と
子供に言わせてしまう場面は笑える。
そして、あのbaby・・・ペイトンのお乳の方が美味しいって
美人好みとはいえ、おませな演技だ。

単なるスリラーに終わっていない。
ましてや怖がらせる風でもない。

「ＬＡコンフィデンシャル」の５年前の作品だが
カーティス・ハンソン監督作品ならではの wit が覗く一作。

（因みにクレアは医師会に事情を訴えただけで正式に告訴していない。
その勇気に触発された女性達が告訴に踏み切った）

私は思い切りペイトンに入れ込んでしまいました。
かわいそうすぎて最後までずっと応援していました。

だいたい、あのクレアって好きになれません。
簡単に訴えて、被害妄想じゃなかったのですか？
誰かが訴えると、私も！私も！って感じで実際のところ
どうだったのか…。

赤ちゃんを楽しみにしていた、罪もないペイトンを
不幸のどん底に落としたのに、幸せに暮らしていて
住み込みのベビーシッター(家事もやらせてる！)
を雇ってラクしてる。
生まれたばかりの赤ちゃんのお世話ぐらい自分でしないの？
何かあれば、話も聞かずに決め付けて自分勝手もいいところ。

同じ女性なのにペイトンの苦しみを考えた事なんて
１度だってないんだろうな。

私だったら、訴えた一家が崩壊した事実を知ったら
心穏やかに暮らせません。
自分がまいた種だって事分かってない。
旦那もクレアのいいなりで、役立たず。

ペイトンは本当は優しいママになるはずだったのに…。
考えれば考えるほど腹が立つ。
ここまで感情移入させてくれたデモーネイの演技は
完璧です。監督もすばらしい。

女性の情念、執念をさらりとした質感ながら情感深く描いたサスペンススリラーの傑作。簡単に言うと勘違い女の独りよがりの復讐劇ってところですが、レベッカ・デモーネイの表情巧みな演技により、突っ込みどころ満点のストーリーを有無を言わせぬ現実味を感じさせる作品に創り上げています。とにかくこの人、知的で妖艶、正統派の美人女優さんだと思うんですけど、とても巧い！、微笑みの中の狂気みたいなのをさらりと演じてると思えば鬼気迫る形相で振舞ってみたり、この作品の中だけでもさまざまな表情が見られますね。

最初からそれなりに結末は見えてる物語なので、途中のプロセスを楽しむタイプの作品ですが、さまざまなトラップの連鎖で平和な家庭が蝕まれて行く様はゾクゾクする緊張感を見る側に感じさせてくれます。

直訳と言えばそれまでだけど、邦題も作品の雰囲気を壊さず良い感じです。レベッカ姉さん渾身の一作、彼女の一番の代表作と言って良い全編に渡ってサスペンスフルな物語、オススメします。

視覚にくる恐さではなくて、心をジワジワと攻めてくる
恐さのある映画です。
おそらく、途中で心拍数がかなり上がるはず。
サスペンスとして、とてもイイ出来上がりです。

男性・女性にかかわらず、心理的なドキドキ感を
味わえますよ。
公開当時に観たのですが、未だに「恐かったなぁ」と
覚えている作品です。