ロープ

『１９２４年、シカゴで実際に起きたローブ＆レオポルト事件を題材に、ヒッチコックが映画内の時間進行と現実の時間進行を同じに進めながら描いた実験的作品。』だそうです。
『舞台はマンハッタンにある、とあるアパートの一室。完全犯罪を完結させることにより、自分たちの優位を示すために殺人を犯したフィリップとブランドン。彼らは、殺人を犯した部屋に人を呼んでパーティを開く、というスリルを楽しみさえするが……。』（イントロダクション引用）

まるで舞台を観ているような感覚です。犯人を先に見せ、遺体のありかも観る側には教えている。完全犯罪…どうみても臆病なフィリップが居たのでは無理。そして大胆不敵に見えるブランドンも緊張すると噛む癖がある。

最も大きなミスは遺体が被ってきた帽子。そして絞めたロープ。遺体が見つかりそうで見つからない。そんなスリルを満喫できた映画です。ただ、最後のシーンでは、彼らはどうやって殺人の根拠を説明するのだろう…とその後に関心ありです。

ほぼ全編、１つの部屋で過ぎるシーンを撮影する
その息詰まり感が、一体何が起きた？という観客の
緊張を持続させる。
何が起きたのかは徐々に分かるのだが、どうして起きたのか、
どうやって起きたのか、本来なら描かれるべきシーンが一切無い。
故に、私は小劇場の舞台を見ているような感覚になった。
そして出演者がのべつ幕無しに台詞を喋り、一瞬たりとも
目を離す隙を与えない。本当に製作者側の試験的な（前衛的な？）
雰囲気が伝わる。
けれど、本来見られるはずの何かが最後まで見られないので
多少消化不良に陥ってしまう。

愚か者三人のお話です。
ネチオ（ネチネチ男）
オドヲ（オドオド男）
うすらバカ
何してんねんって話です。
バカ三人。
犯罪に向いてない二人。
それぞれの理由で向いてない二人。
一人は自覚アリ。
一人は自覚なし。
自覚なしの勘違い男って、うすらバカだから手に負えない。
なんでオドヲと犯行に及んだのか。
最初から墓穴を掘っていることに気付いてないんですよね。
失笑に次ぐ失笑。
きっとこれは笑えないコントだ。
笑えないし、つまらないし。
でもって腐った古畑みたいにネチネチと犯行の臭いを嗅ぎ付けるネチオ。
どうでもええわい。
お前のネチネチ戦法なんか。
飽きてきます。
ビシっと決まってないので飽きてきます。
計画も稚拙なら。
それを行う人間も稚拙で。
ラストにそれを暴く人間も「できる男」気取ってるけど、それがさむい。
うすらさむい。
うすらバカと大して違いなし。
でも、だけど、最終的にはうすらバカですね。
うすらバカが、どうしたって一番の愚か者です。
気付いてないから。
嘆かわしい。
かわいそう。
キャステキングは見事。
うすらバカは「この人じゃなきゃダメ」って感じで似合ってます。
笑顔の感じとか。

で、やっぱり「おばはんのコソコソ話」って危険度高しってことですよね。

ボクにはヒッチコック作品を観る上で致命的なハンディがある。
それはジェームス・スチュアートが苦手だということ

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電話のコード。デービッドを殺したロープ。そして、透明な紐、それは、犯人二人の結びつきです。
全編80分とは、良く考えられた時間で、人間の集中力が途切れることなく続けられるジャストタイムだと思います。
前の「十二人の怒れる男」は、90分ほどで解決するように出来ていたし、最近のものでは「パッション」は、イエスのむち打ちからラストまでを80分ほどで描いていました。
なので、この映画の永さも計算づくのことだと考えています。

パーティでのダラダラ話、シャンパンを注ぐための時間、その前に、シャンパンをあけるのに手間取っていましたね。

殺しという最大の見せ場をしょっぱなにあんなにあっさりと見せておいて、まるで棺桶のような箱に入れて、蝋燭置いて、葬式のような箱の周りですが、食べ物を置くと何となくテーブルっぽくなります。

パーティが終わってそれを片づけると棺桶に元通り。教授が舞い戻ってきて、あれこれ詮索して、死体を見つけるのですが、こちらに見せないのがいいですね。エリートの部屋に死体は似合いません。

話は特別面白みがなく、実験作として一番楽しかったのはヒッチコックだったのではないでしょうか。多分、面白い映画を作る為に頑張っていないと思いますよ、玄人さんに腕自慢をしたいが為にアレコレカメラワークやら、背広のアップやら、細かいところに気を配り、熱心に頑張ったと思います。

これがもし、「ヒッチコック」でなかったとしたならば、はたしてどれだけの人がこの映画を褒めたでしょうかねぇ。

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・物語内の時間が映画そのものの長さと一緒である点

・なるべく長回しで切らないように撮影してある点

・にもかかわらず構図や演技が不自然でなく、最後まで魅せる映画である点

素晴らしくテクニカルな映画でした。

特典映像で明かされていた「同性愛風味」がもっと強ければ、どうなっていたでしょうね。

単なるトリック映画に落とし込まれずに（それだってここまでするのは大変なことですが）、複雑な人間の心理が読み取れる、面白い話になっていそうです。



思い出されるのは、構図の変化の美しさです。

とてもスマート、飽きさせません。

画面にきれいに入るように、壁や家具を動かしているのでしょうが、全く気になりません。いえ、気が付きませんでした。お見事！

「めまい」や「ダイヤルＭを廻せ！」のような心理の闇と向き合う面白さは薄く、

見ているほうはただ、二人の悪事がいつばれるかハラハラしてしまいます。

初めのハラハラは教授と話すときに、ブランドン（頭の良いほう）がどもってしまうところ。

ここでブランドンの芯の弱さ、彼ですら一目置いているという教授の"すごい人”な感じ、犯罪の暴かれそうな危うさ、が示されます。

次はそんなブランドンの危険へ自ら歩み寄っていく命知らずな行為。

教授に対する複雑な思いが見え隠れするようです。

彼は破滅したいのか、それとも自分だけは助かると思い込んでいるのか。

客の心は気弱なもう一人の殺人者、フィリップとともに「やめろー」となります。

そしてフィリップ。彼は犯罪の露見するかもしれないプレッシャーに耐え切れず、いつ完全犯罪をお釈迦にするかと観客をやきもきさせます。

そのクライマックスの一つは、手伝いのおばあさんがテーブル代わりにしていた死体入りのキャビネットの上を片付け、蓋を空けようとするところですね。

そのかわし方もことさらに煽ったりせず、さっとすんでしまう。



こんな犯罪への挑戦が成就するわけはない、という観客の心は、疑惑を深めていく教授が、帰り際にお手伝いさんから間違えて渡された「Ｄ・Ｋ」のイニシャル入りの帽子に気づくに到って昇華され、視点が犯罪者の二人から離れ、探偵役の教授側に立つ、様な気がします。私だけかな？

そしてラスト、謎解きする謎もない犯人目線の話ですから、焦点はブランドンの殺人理念の崩壊です。

彼は教授に自分の優位性を示したかった、それが愛する人によって完膚なきまでに叩きのめされるわけです。ちゃんと落としてあります。

私はもっと人情どろどろでも良かったかなと思いますが、この作品での第一義は

そこではなかったのでしょう。

面白かったです。