リチャード・ジュエル

サム・ロックウェル、いい役者だなぁ。ヒーローには絶対になれない男だけど、こういう人は要るんだよ、っていう役には外せないですね。今回も、善なのか悪なのか、有能なのかそうでないのか、よく分からない役をやっておりますが、人としての芯の部分がぶれない役をきっちりと演じております。

警備員が爆破事件の被害を抑えるために奮闘したのに、結果として容疑者に仕立て上げられ、社会から糾弾を受けるという話でして、似たような事件は日本でもあり、ひどい話だなと思う反面、リアルタイムだったら、絶対、自分も疑っただろうなと思ってしまいます。それはマスコミや警察が悪いというよりも、人間はどこかにおもしろおかしく感じたい部分があって、そういう目でなんでも見てしまうんですね。

今回の主人公は見た目がヒーローっぽくなく、容疑者と言われてしまえばそうかも知れないと思ってしまう。そうなると、正義の名のもとに、でっちあげもあるし、また何も知らぬ他人が、人を貶めまくることも発生してしまう。

この物語の面白いところは、主人公もまた「行き過ぎた正義」の実行者だったところ。自らの行き過ぎた正義の行動によって、周りから危険人物と思われ、そして周りの行き過ぎた正義から糾弾を受ける、という図式。人というのは面白いものです。

題材としては地味な部類で、主人公の風貌もあってか共感をえにくい話ではありましたが、イーストウッドらしい、人の本質の部分が出ていて良かったです。お母さんのキャシー・ベイツもらしくて良かったなぁ。主人公はどんぴしゃなんだろうけど、やっぱり共感できなかった。それこそが狙いなんだろうな、うまい作品です。

感想･総評：ここまでやるかと思う程の強引で卑怯な捜査。冤罪が生まれるはずだ

対象年齢：子供〜大人（多少残酷な場面あり。Ｈ場面ほとんどなし）

食事中に見られるか：大丈夫

「英雄」から一転して「容疑者」となったリチャード・ジュエルが関わったアトランタコンサート会場で起こった爆弾事件の実話にフィクションを加えた作品でなかなか面白い。
監督、制作はクリント・イーストウッド、彼の作品にはあまりハズレがない。
警察官のような法執行者に憧れを持つリチャード、かつては副保安官をしていたこともあったようで射撃の経験もある。
生真面目で正義感が強く、気遣いの出来る男、冒頭ではその後彼の弁護人となるワトソンとの出会いが紹介されている。
その後大学の警備員となるがあまりにも職務に熱心過ぎてちょっとやり過ぎて解雇されアトランタ公園の警備員となる。
1996年アトランタオリンピックで沸く地元のこの公園で行われたコンサート、そこでリチャードは置き去りにされた不審なカバンを発見、普通なら単なる忘れ物として扱うところなのだろうが彼は爆発物の危険があると主張して警察に通報、会場内の人々を安全な場所へと誘導している時に爆発、大惨事となる。
この捜査を仕切るのはFBIショウ捜査官、リチャードは第一発見者であり惨事を最小限に防いだ英雄としてマスコミに取り上げられ一躍「英雄」として有名になる。
しかしFBIは彼を第一容疑者として捜査対象に、完全なプロファイリングの暴走、つまり英雄に憧れる孤独な白人男の自作自演として取り扱う。
しかもショウ捜査官は地元の美人記者キャシーにこれをリークし、彼女はこれを特ダネとしてスッパ抜くからさあ大変、リチャードと母親は家をマスコミに包囲され外にも出られない。
一つの流れに便乗して過熱してゆくマスコミの恐ろしさ、どこの国でも同じなのだ。
ワトソンを弁護人として戦うリチャード、でも法執行者に憧れる彼は自身を犯人だと決めつけるFBIのショウ捜査官たちにも妙な仲間意識をもってしまうのでイライラするワトソン。
息子の無罪を信じて流す母親の涙でリチヤードとワトソンは反撃に出る。
プロファイリングによる印象だけに頼る捜査の暴走、過熱するマスコミの取材合戦の恐ろしさ、母親の涙の訴え、そして意を決したリチャードの反撃で構成される本作はなかなか切れ味するどい。
でもズタズタにされたリチャードと母親の心の傷の癒える時は来るのだろうか。

実話だと思うと見ていて苦しくなりました。途中から涙が止まらなくなりました。
それにしてもメディアとFBIの対応のひどさに悲しくなりました。プライバシーも何もなくて主人公が自殺してもおかしくないくらいの扱いでした。あの時代はまだSNSがそれほどなかったからまだ救いだけど今ならもっと世界中に知れ渡るんじゃないかなと思いました。

でも友人の弁護士さんとその彼女の助けで救われて良かったです。二人がいなかったら冤罪で捕まっていたのではないかと思いました。そして素敵な母親がいて主人公は救われたと思います。
リチャードさんが容疑者扱いされても優しくてそしてラストの方で語ってた言葉に感動しました。私ならそんな風に思えないしなんて心の広い人なんだろうなと思いました。
すごく見ていて引き込まれました。

実話を基にした映画です。

爆弾テロ事件から 多くの人々を助けたリチャード・ジュエルは、
一夜にして英雄となります。
ところが、ただプロファイリングの犯人像に近いというだけで
ＦＢＩから事件の捜査対象にされ、
特ダネを報道したいマスコミは 彼をまるで犯人であるかのように報道、
大衆も彼を犯人扱いするようになります。
何一つ証拠が無いのに。

今の日本でも、リチャード・ジュエルと同じように
事件の第一発見者や 被害者の家族が
まるで犯人であるかのように叩かれているのを見かけます。
確たる証拠も無しに、思い込みで犯人扱いしてはなりません。