チャイナタウン

ジャンル分けするとハードボイルドの範疇に入るかの内容だが、いかんせんジャック・ニコルソン演じるジェイクのキャラの立ち位置が2枚目半なので、がっちがちの堅いゆで卵ではなく、切るととろりと濃密な黄身があふれ出す半熟卵の味わいを覚える作品。
それはあえて狙っているのだろう。小奇麗な身なりはしているものの理髪店で仕入れた下世話なたとえ話を嬉々とした表情で話すジェイクの粗野を強調したシーンに、薄っぺらなモラルと理念をプライドと天秤にかけてずる賢く社会の底辺ぎりぎりを這いずり回る探偵家業の実態を、アメリカのチャイナタウンでの司法制度と重ね合わせているように感じられた。そして、ポランスキーはそれをアメリカという国そのものにも重ねようとしたのかもしれない。妻子を惨殺した犯人を育てる土壌を育んだ国の実態を暴こうとしたのかも。幼少の頃不当な扱いを受けたヨーロッパから自由の国に移ったポランスキーは、再度不当な扱いを受けたことを糾弾しようとしたのかと思えてくる。無軌道で行き当たりばったりに見えるジェイクの言動、怪しいと思ったら武器も持たずにしゃにむに突進する行動は自信過剰とも見えるが、負けることを知った上での足掻きとして描いているのかもしれない。
このジェイクの行動はわずかに残った良心や希望を探す行為で、そのためか物語の始まりから諦めの色が濃く滲み出している。全貌の掴めぬ敵に右往左往されるジェイクの姿に漂うのは、きりっと引き締まったハードボイルドの自己抑制ではなく、この結末から改めて思えるように、自分の生い立ちに向かう内省の筋書きとなっている。その煮え切らない生きざまは「ハーフボイルド」と言えばいいのかなぁ。
しかし、それは物語の傷とはならず微妙な味わいとして良い艶をもたらしている。
どうにもならぬことと知ってはいるが抗うことを、決して無駄とは言い切れないように。

この作品は見始めて初めて気づく。以前、観た事がある。
その時は、なんだかかったるいような感じの映画でしたが、今回はじっくりと拝見。

探偵が軸になっていて、水道局の水が謎の元。その水を巡って人が死に、探偵も危ない目に会う。
そしてこの映画は、それだけにとどまらず最後の方で以外な展開に。かなりひねくれた内容となりますが、アメリカ社会では往々にして怒り得る問題も取り上げたってことでしょうか。

最後のシーン、１回観たときも印象に残ったシーンです。こんな終わり方って辛いな〜なんて思える程に悲しい結末です。

ムーディーだ。
とてもムーディーだ。
（若かりし頃のジャストミート福澤口調で）
ハードボイルドはムーディーじゃないと。
観終わったときの感触。
なんか夕方とか夜のお酒のCM（出来れば昔の）を観たときに感じる気持ちと似ている。
全体的に紫煙をくゆらすが如くな印象。
煙が消えても匂いが消えない。
そんな感じです。
これはもう完全なる大人指定の物語。
虚無感を感じながら観ていただきたい。
この世界観を支え、そして強烈なものにしている力。
それはジェリー・ゴールドスミス。
彼のどうしようもないくらいにカッコ良くて切なくて哀愁たっぷりなスコア。
これぞ「ザ・大人」。
全体的には昼のシーンが多いのに、観終わると印象的に「夜」になってしまう。
ラストシーンがそうさせるのか・・・

前半はちょっとだるい感じですが、物語が進むにしたがって引き込まれていきます。

ジャック・ニコルソン。
翻弄されながらも真相を探る私立探偵役。
スリムでカッコイイ。
色気がムンムンです。
わけのわからない自信が漲ってます。
役というよりは、ジャック自身から。
こりゃあモテるでしょうよ。

フェイ・ダナウェイもキレイです。
眉毛が嘘みたいに細いです。
凄く役に合ってたと思います。
が、最初から彼女がこの役を演じるハズではなかったんですね。
当初はアリ・マッグローが演じるハズでした。
しかし、彼女が撮影開始前にプロデューサーを捨てて、スティーブ・マックィーンの元に走ったため、役も降ろされたようです。
これまた私怨？

金の亡者と家族のごたごたを大きく巻き込んだ
内容で、確かに謎は深まっていくけれど、静かに
派手さが無く進んでいくためにどこか気だるい感じ。
私立探偵として有能なのかは分からないが、この事件だけ
見せられている中では、誰かが重要なヒントをくれないと
先に進むことが無い。
推理モノを楽しもうというのであれば、あまり期待しないほうが
良いが、この気だるい雰囲気と郷愁漂うムード音楽にどっぷり
浸かりたいならお腹いっぱいかも。

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私は本が好きで本を読みますが推理小説は読まない。この映画はハードボイルデ・ミステリ作品との事。

ゆるい物語の進み方で気の短い私は早送りにしちゃおうかな…なんて、まるでタイトルの怠け者です。

スリリングで謎だらけの展開に主人公のジェイクも振り回されている。モーレイ夫人がとても個性的で魅力的。強い意志を持ちながらもろい面もあり、その原因を物語が進むにつれて理解できる。

一時は愛し合ったジェイクとモーレイ夫人だが、最後は永遠の別れとなってしまう。観終えてからの何とも言えない後味の悪い余韻は何なのだろうと思う。