未来世紀ブラジル

前半独特な世界観に圧倒されつつ、次々と映し出される異様な建物や内部の構造にワクワクドキドキ、とても面白かったです。
あの威圧的な建物の高さといい、無機質な建物の数々、室内のインテリア、存在感溢れるパイプ達・・・見るだけでも楽しめました。
管理された社会の見せ方も非常に面白い。笑いながら見てましたが、実は怖い話ですよね・・・。

現実逃避が時々異様なまでに飛躍しますが、それも含めてとても面白い作品でした。
変わった映画ではあるけれど、一見の価値ありますよ。

近未来を描いた映画というのは5年もたてば古びてしまいがち。
けれども19年前のこの映画は、小道具も服装も50年以上前の雰囲気なのに、古い映画という感じがせず、白けることなく不気味な未来に入り込んでいけます。
この怖さはすでに今の時代の現実になりつつある気もするぞ、などと感じさせるけれども、偉そうに「警鐘を鳴らす」というトーンではなく、見ながら考え込んでしまうこともありませんでした。
イギリス風のちょっと斜に構えた風情が生きているのでしょうか。
また、映画の作り込みという点でも完成度が高いと思います。
「げ。これって...」と思いつつ、「このセットと演出はおもしろいな」と頭の隅で呟きつつ、それでも映画の流れに身を任せて最後まで楽しめました。

この雑文を最後に、レビュー投稿を、やめようと思いました。

最後に、もっとも好きな映画を。「未来世紀ブラジル」。

この映画は、自分を映画に引きこんでくれました。

その前に「燃えよドラゴン」という自分にとっての最高傑作がありました。
今も、自分にとっての第１位は、この映画です。
映画は、アクション、武道という思い込みがありました。

今も、「燃えよドラゴン」を越えるものはありません。自分にとって。

「未来世紀ブラジル」を見たのは、その４年後でしたが、「こんな夢魔のような映像があるのか」という驚きでした。
世界観が、悲観的（ペシミスティック）ですが、映像は、「ぶっとんで」います。
映画とは「夢魔」を表現しているものだ、ということを教えてくれた作品です。今も。

男（ジョナサン・プライス）のビルの住居に、男（デニーロ）が突然、窓から入ってくる。
「早く」と言う。「脱出せよ」と言う。
救われたと思う。管理社会から。
男は、一瞬そう思うが、眠ってしまう。
女（キム）の夢を追い、ダークな世界を飛ぶ夢を見る。上から見おろすのが、彼の夢の危ういところだ。
そして、最後の場面で、男（プライス）は、あの男（デニーロ）が巨大な円筒の空から綱で降りてきて、
自分を救ってくれると、まだ思っている。
それは、脳に電極をあてる「ロボトミー」、今で言う「ＶＲ（ヴァーチャル・リアリティ）の状態の幻想だった。

映画とは、幻想だ。
幻想を幻想として、鑑賞し、小屋（映画館）から、現実の道路へ戻っていく。
首を振る。

今、監督のギリアムも、「未来世紀ブラジル」のような、切れ味のよい、しかも資金が潤沢に使え、自分のイメージを
映画にできる作品は、作れなくなったのだろう。僕は、ずっとそう思い、この映画が貴重と感じます。

人間は、いつのまにか、変わっている。
人間は、人を支配しようとする。
変わる人間が、変わる人間を支配しようとすれば、この「未来世紀ブラジル」のような統制と洗脳が一体になった管理社会しかないでしょう。
すでに、始まっています。

僕ら老体は、戦争に行くことはないでしょうが、原発の管理のため、余命の少ない者が、死ぬために行く機会があれば、僕は生きます。

最後に、この「レビュー広場」について、なぜ、興味を失ったかを、書いておきます。

毎月、こつこつと、映画を見て、レビューを書いている人が、相応に評価されていません。
その人は、命をかけて書いていると思う。
多少の独断はあるかもしれませんが、その独断が、かのひとの魅力であり、僕はずっと注目し、そのひとの勧める映画を見てきた。

毎月の映画の投稿数（見た映画の数）が少ない人が、投稿数の多い人の上に立つというのは、よほど、卓見を述べているのだろうと思って読んでみると、
たいしたことは書いていない。

その「上」は、神さまか？　突然の「ゼロ・ダーク」があります。

当月、ゼロ投稿で、当月評価200以上というのは、ちょっと信じがたい。

「レビュー広場」とは、ふしぎな政治の場だと分かれば、私の興味は突然消失しました。
お互いに会話を交わすことのできない「サイレント」（「はい」だけ）の広場に、これ以上、時間をかけられません。

僕の注目する三人のレビュアーさんがいるのですが、かれらのレビューに、これからも反応します。

自分から、映画のレビューを投稿することは、やめようと思っています。

ほかのことをしたいと思っています。もう五年やってきたのですが、書き尽くしました。

さようなら

仮想の未来国家ブラジルを舞台に繰り広げられるSF
という印象をもってたんですが
これは痛烈な風刺映画だったんですねえ・・・・（笑


管理社会への風刺というのも感じるし
戦争の正当化のために「テロリスト」が必要とされてるようなことの風刺
とも取れるし・・・・。

仮想未来国ブラジル＝アメリカ
でしょうね・・・

社会風刺というか、アメリカ風刺ですね。
しかも、かなり痛烈で、辛辣・・・・（笑

ストーリーももちろんのこと、
音楽や映像もかなりのもの・・・というかクセがある。

タイプの誤印刷に端を発した誤認逮捕に象徴されるような
管理しているようでいいかげんな社会。
善良な人間であるとわかっても、テロリストのレッテルをはがさない
テロリストは存在しないのに
なにがなんでも攻撃をしかける理由をつくりたい国家。

そんなことを描いているにもかかわらず
このノーテンキな音楽
そして、カラフルな映像。
近未来のはずなのに、やたらレトロな感じがする映像。

この、シリアスネタにゆるい音楽、奇抜な映像というのは
なんか、気味悪さとブラックさを増幅させますな〜。


本作DVDでは最後のシーンまで入れた完全版っぽいですが、
これ、劇場公開版はハッピーエンドのところで終わっていたのか！？

これは、最後の部分があると無いじゃ全く違う映画になっちゃうんじゃないかな。
私はこの１４３分Verのほうがいいと思う。


ちなみに、ギリアム監督作品のオチはあのオチが多いのね・・・・
でも、そのオチを観てもガッカリしないのは
それでもキョーレツだからでしょうね。

そして、そのオチがバッドエンドに作用しているからでしょうね・・・・

そういう○○オチの使い方、私はけっこう好き♪

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

　ジョージ・オーウェルの「１９８４年」という小説にインスパイアされたという本作、この小説がどのような内容であるかを知るまでもなく、本作で描かれているのは「管理社会からの逃亡」。
　描かれる世界は、「近未来」というよりも、ほぼ現在でしょう。いや、近未来だ現在だと決めつけるのはひょっとしたらあんまり意味のないことかもしれません。
　はっきりしているのは、もう滑稽なくらいデフォルメされた社会。そのくらいの感覚で観る方がいいのではと思います。

　さて、この『未来世紀ブラジル』。
　原題も『BRAZIL』ですが、もちろんブラジルが舞台ではありません。オレも初めて観た時はなんで「ブラジル」なんやろ？と思っていたのですが、これは本編で流れる、多くの人が一度は耳にしたことのあるかもしれない有名な曲（確かウィスキーのＣＭで流れてました）のタイトルが「ブラジルの水彩画」であることからきているのだろうということは容易に推測されます。それ以外に映画の中で「ブラジル」を連想するキーワードはなかったように思うので間違いないでしょう。
　話変わって、最初に「管理社会からの逃亡」と書きましたが、本作で一番話題になるのはやはりラストシーンを巡るテリー・ギリアム監督と映画会社（ユニバーサル）との衝突。初めて観た時は、このラストシーンに凄く驚き、またこのシーンがあったからこそオレはこの映画が好きなんですが、まあ完全なるバッドエンドなわけでハッピーエンド至上主義のハリウッドにおいては許し難いということで、ラストシーンをカットしたバージョンがテレビ放送されるというギリアム監督にしたら屈辱的なこともあったようです。

　あのラストだからこその本作なのに、作品の完成度さえ無視してまでハッピーエンドを要求するその徹底ぶりもある意味凄いとは思いますが・・・。

　そのラストシーンについてなんですが、つい考えてしまうのは、あのシーンのあの状態というのは果たしてどの時点からそういうふうになったのだろう？ということ。
　本作の主人公サム（ジョナサン・プライスだぁ！さすがに若いっ！！）は映画が始まった時から「自分が騎士となって、一人の女を助ける」という夢を見ていて、それは彼の「この社会から逃れたい」という潜在的な欲求を表しているようにも受け取れ、そう考えると、ひょっとしたら“初めから？”とも思ってしまう。

　そんなこんなで、サムの母親たちの「美容整形」絡みの場面は何回観ても“おええぇっ！”ってなったりもするわけですけど、逆にそういう滑稽さと恐ろしさが個人的にはすごく魅力的な一作です。
　とかなんとか言いながら、本作で一番印象に残ってるのはわずか数シーンの出番にもかかわらず、最後は余裕綽々のサムズアップで去っていくテロリスト、ロバート・デ・ニーロだったりするわけで・・・。
　ああ、気の毒なジョナサン・・・。