空気人形

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予告を見て、コメディータッチの映画だと思い借りました。

始めから結構リアルで・・・(泣）


「心を満たす」？？？
と言うより切なく悲しくなります。

空気人形が心を持つ切なさ
都会で孤独に生きる人々

ラブ・ファンタジーとはほど遠く
見終わった後、重い気持ちになる映画でした

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大気中の酸素濃度は２０％
二酸化炭素濃度は０.０３％
人間が吐く息の酸素濃度は１６％
二酸化炭素濃度は４％
手に触れる空気。
顔に触れる空気。
体に入ってくる空気。
生かしてもらっている。
目には見えない糧。
わたしが存在できるありがたい糧。
風鈴を揺らし、わたしのはじまり。
あなたの口から吐かれる空気。
あたたかい空気。
満たされる空気。
手に触れる空気とは違うこの空気。
４％の違いはきっと愛だよね。
二酸化炭素が多いのは愛だよね。
この空気で満たされて。
この空気で満たされ続けたい。
体の隅々まで。
魂の隅々まで。
反り返るほど、わたしを愛して。
足が攣るほど、わたしを愛して。
わたしを満たして。
あなたが教えてくれたこと。
わたしもあなたに還したい。
だけどあなたは満たされない。
どうして？
わたしの４％を感じて欲しい。
どうして？
わたしの４％。
わたしの４％。
わたしは空気人形。
４％の愛情を示せない。
なんでもしてあげられるのに。
なんでもしてあげられるはずなのに。

誰に迷惑かけてるワケでもない。
煩わしい空気も存在しない。
俺の笑顔はお前だけのものだ。
俺の本当の笑顔はお前だけに見せたい。
アイシテル。
渇いてなんかないよ。
俺は満たされてる。
星の話でもしよか。
今度新しい服買うてあげるよ。
今日も帰りを待っっといてな。
俺の「望み」はお前だけや。
お前といれれば後の事は我慢できる。
な、俺を満たしてくれよ。
俺を満たし続けてくれよ。
ほんまに？嬉しいわぁ。
え？言わなあかんの？
俺がお前の事アイシテルの知ってるやん。
もう、しゃぁないなぁ。
一回だけやで。
・・・アイシテル。

キラキラしたもの。
キラキラしたものと低温の肌触り。
交互に押し寄せる。
気付かないような傷を受けて。
あとになって知る。
あ・・・・血が出てる。
その流れる血をぼんやり眺めてるような。
それはいつのまにか自分の血ではなくなっている感覚。
痛みはそのあとにやってくるんだろう。

板尾さん。
理想を映し出してくれる女性しか愛せない秀雄。
社会的に反れていたとしても、彼は満たされていた。
板尾さんにしか出せそうもない空気。
「これが俺や」と言われてもスンナリ受け入れてしまいそうなナチュラル加減。
やはり板尾さんは凄い。

ペちゃん。
こんなにカワイイ女性だったのか。
「グムエル」で一度見かけたけど。
その時は「ちょっと不思議な空気のある女性」ってぐらいの印象だったけど。
この役はもう彼女以外では成立しないと思えるくらいピッタンコでした。
その一挙手一投足がステキ。
動作全てが愛おしい。
そして彼女の声が欲しい。
詩の朗読のようなシーンで感じた感覚を忘れたくないです。

岩松さん。
あんな岩松さんは見たくなかったなぁ。
正直かなりショックです（笑）

ＡＲＡＴＡさん。
話し方、第一声の発し方がいつも大好き。
雰囲気がものすごく好きです。

純一の部屋で空気人形と二人。
「フ〜」と「ハァ〜」でこれほど官能的になるなんて。
しかし。
このシーン以降、僕は迷子です。

こんな大女優さん裸にしていいのか？
なんか見てて罪悪感を感じてしまった。

「僕達だって、死んだら燃えるゴミだから」

本当に燃えるゴミに出しおったーーーっ！

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彼女はある朝突然に心を持つ。それは、夜毎男に語り掛けられベットを共にし、誰かの代わりとして愛を注ぎ込まれてきた、空っぽの、空気人形。

ある日、キレイを綺麗と思えた空気人形は心を持ち町に出る。
初めて触れる見知らぬ物と人、自然と命。
産声をあげたばかりの心は欲するままに愛を受け止めようとする。この世は命に満ち溢れていて、綺麗なものが光り輝き彼女を待ち受ける。空気という虚ろなものではなく、誰かの代わりで受けるのではなく自分のために求め、彼女は空っぽの自分を満たそうとするのでしょう。
空っぽの空気人形が目にするのは、中身は詰まっていても空っぽな人間達。手を伸ばせば触れられるのに、勇気が持てなかったり自ら拒んだり、空気人形が焦がれた愛を、受け取ることを恐れるのでした。

一見柔らかにファンタジーの衣を被ってはいるものの、その薄皮の内にあるどす黒い血と臓物を認識させる作品ではないでしょうか。それはクライマックスの空気人形とビデオ店の青年の交わりで殊更に意識させられました。空気人形であることを知られたあの日、無害そうに見える青年の心は実は無関心ではないのか、穏やかそうに見えはするが普通ではない性癖を持っていたのかと思わされたのでした。
空気人形は自分が受けた愛をそのまま返し、悲劇を生むのでしょう。空っぽの自分が受けた愛を、その吐息を、空っぽの彼に返そうとしたのでしょう。

その吐息は受け取る人達を探しさ迷い、彼女に関わった人達へと向かい、その人達の空っぽを、少しだけ埋めることになるのでした。

ぺ・ドゥナの愛くるしくも丹精な容姿と、女優のプロ意識が、物語の毒性を巧みに緩和していると思いました。女児の好奇心と女性としての成熟を同時に持ち得る存在は、空っぽの虚ろを惜しげもなく肢体をさらけ出し表現できることと合わせ、素晴らしい女優だと思いました。日本の女優では無理でしょうね。たどたどしい日本語も上手く作風にマッチしていました。これは予想外の産物だったのでしょうか。
惜しむらくは対象を広げ過ぎたことでしょうか。空っぽの人達を描き過ぎたことで、人形の空っぽが、向けるべき吐息の熱さが、薄まったかに思えてしまったのでした。★４−